「LINE」がついに“ネット販売”を開始 「2分で完売」の実力は?

【2012年11月号】

価格以外の付加価値を重視  

セール告知のメッセージ

スマートフォン向け無料通話・メールアプリ「LINE(ライン)」を展開するNHN Japanが“ネット販売”を開始した。同社は9月25日、「LINE」で通販サービスを行う公式アカウントを開設。販売数量や時間限定で、通販事業者やメーカーなど小売事業者の商品を専用サイトで販売していく試みだ。第1弾は、「LINE」のオリジナルキャラクターのぬいぐるみをテスト的に販売。第2弾はイマージュが冬の新作インナーなどを、第3弾はタカラトミーアーツ社が製作したLINEキャラクターのクッションなどを販売した。第4弾はセシルマクビーが限定トートバッグを販売する予定だ。第1弾のオリジナルぬいぐるみは販売開始からわずか2分経たずに完売。第2弾のイマージュも詳細は不明だが好評だったようだ。大幅に在庫を増やして臨んだ第3弾も、開始後1時間で残り4点となるなど、いずれも上々の結果となった。
  「LINE」はスマートフォンで簡単に無料通話やメールができるのが特徴で、2011年の6月から開始。現在、全世界で約6500万人のユーザーを獲得。日本では約3000万人のユーザーを数えるなど急速に規模を拡大しており、今年10月には首相官邸までが公式アカウントを開設。現在、もっとも注目を集めているサービスのひとつと言える。企業や団体もマーケティングや広報の場として注目しており、さまざまな手法が試行錯誤されている状況だ。通販事業者も例外ではなく、膨大なユーザーを抱える「LINE」は魅力的な“売り場”となる可能性が高いため、同社の今回の試みは多くの事業者の注目するところだろう。はたして「LINEで通販」の可能性とは――。

開始2分で完売御礼

  NHN Japanが開始した通販サービスは「LINEシークレットセール」。同社で「LINE」のプラットフォーム構想を進めていく中で、どのようなサービスを付加すればユーザーやビジネスパートナーが喜ぶかを検討。その可能性のひとつとして通販が浮上した。 

 「シークレットセール」は、「LINE」で同名の公式アカウントを登録したユーザーに対し、セール情報をメールの形で発信する。メッセージには専用ページへのURLを添付。誘導先のページで、商品の閲覧や購入手続きが行える仕組みだ。決済手段は、代金回収の信頼性が高いクレジットカードとキャリア決済に対応している。

 想定している出品者は、通販事業者やメーカーなど、自前で商品を持っている小売事業者だ。特に、「LINE」ではアクティブユーザーの比率は女性が大きいため、女性向けのアパレルや雑貨を有望視している。

 出品料は、レベニューシェアの形で販売手数料を数%、徴収するのみ。手
数料率は商品によって異なるようだ。出品には同社の審査を経る必要があり、基準は「LINEの価値を高められるか、ユーザーにメリットがあるか」(NHN Japan・舛田淳執行役員)を重要視する。単に価格が安い商品などは対象とならず、たとえば「先行販売品」や「限定品」、「オリジナル商品」などの「安い以外の付加価値、ストーリーがあるもの」(同)かどうかがひとつの目安になっている。

専用の商品ページで商品を紹介

 第1弾として、9月26日の12時から、「LINE」のスタンプでお馴染みのオリジナルキャラクターのぬいぐるみを販売した。もともとノベルティグッズで非売品だった商品だ、ニーズが多かったため、自社生産で900点限定で売り出した。

 同社のコマースは従来、有料のスタンプなど比較的安価なデジタルコンテンツがコマースの中心だったため、3000円を超えるぬいぐるみは「1時間ぐらいはかかるかな、と」(同)みていたが、販売開始からわずか2分経たずに完売。「完全に読み間違えた」というほど、予想を上回る売れ行きだったという。

 続く第2弾は翌週の10月3日に開催。イマージュが、モデルの平子理沙さんプロデュースのワンピースやインナーなどを24時間限定で販売。具体的な成果は不明だが上々だったようだ。また、このときは前回の反省を踏まえ、受注生産方式を採用。このやり方であれば在庫の問題をクリアできるため、今後、通販事業者やメーカーが参入する際のひとつの指針となるとみている。

 第3弾はタカラトミーアーツ社製で、再び「LINE」キャラクターのぬいぐるみとクッションを販売。前回、2分で完売となってしまった経験から、商品数は前回の約5倍となる4200個を用意するなど大幅に増強して臨んだが、開始から1時間でほとんどの商品が完売、残り4個となるなど再び大きな反響を呼んだ。

 同社では、こうした結果を「LINE」ユーザーと商品の相性が大きいと分析する。「シークレットセール」公式アカウントは現在約30万人のユーザーが登録しており、このユーザー層の嗜好に「適合した商品」だったことが「即完売」の要因というわけだ。 

 今後はタイムライン機能など、「LINE」内の他のサービスとの連携も検討する。ソーシャル性を加味することで、たとえば共同購入サービスなどさまざまなサービスの可能性が広がるため、実現に向けて「仮説を立てながら検証していく」(同)構想だ。

“テレビショッピング”のような使い方も

 同社では、「シークレットセール」をマーケティングツール的な位置づけと捉えている。つまり、ここでテストし、結果を分析して、商材を他のチャネルで展開する、という使われ方だ。たとえばここで販売し、好評であればリアル店舗などで大々的に販売する、というマルチチャネル展開も有力とみている。「最初にイメージしたのはテレビショッピング」(同)というように、一種の広告枠としてみることもできるようだ。

 通販市場に鮮烈なインパクトを与えた「LINE」の通販サービス。まだ開始してから日が浅いため通販における可能性は不透明だが、これまでの結果をみる限り、期待できる部分はありそう。はたしてネット販売事業者にとって福音となるのか、まずは注目しておきたいところだ。

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