楽天、「楽天市場」向けに続々新施策 ―― 低評価聞き取りに反響

講演する三木谷浩史社長

楽天は1月26日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で「楽天新春カンファレンス2016」を開催した。当日は三木谷浩史社長が講演を実施。その中で今年の楽天市場におけるさまざまな施策が明かされたが、「レビューで低い評価をしたユーザーに対し、投稿から2分以内に同社のカスタマーサービスが電話をかけて、不満点や苦情などを聞き取る」サービスに対し、ユーザー間で反響が広がっている。

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「クオリティー向上」にこだわる

三木谷社長は、16年の楽天市場のテーマについて「クオリティー」とした。「クオリティーを上げることに対して、病的なまでのこだわりが必要。『一人くらいいいじゃないか』ということではなく、一人でも不満を持つ客がいれば対応するべきだ」と説明した。

「レビューで低い評価をしたユーザーへの聞き取り」はその一環という。カスタマーサービスが聞き取るだけではなく、同社のECコンサルタント(ECC)も即座に苦情への対応を行う。ユーザーに対してはお詫びとして、「楽天スーパーポイント」を500から2000ポイントプレゼントする。

三木谷社長は「顧客満足度の向上は、どんなプロモーションよりも売り上げ増が図れるのではないか。100分の1、100分の2のデトラクター(批判者)を放置すると、少数派でもマイナスの声の方が大きくなってしまう。4万店舗の集合体である楽天市場のクオリティーを上げるには、1店舗ごとの意識が必要だ」とした。あまりにも悪い評価が付いた店舗についてはいったん閉店させたり、悪質な場合は退店させたりすることで、モールのクオリティーをキープするという。

この取り組み対し、ネット上ではユーザーからさまざまな反響があった。「(電話がかかってくるのが嫌で)誰もレビュー書かなくなって逆効果になる」「当たり障りのない評価しかしなくなる」など、「ユーザーが萎縮してしまう」というものや、「わざと低評価をつけてお詫びポイントをもらおうとするユーザーがいるのでは」など、懸念の声が多かった。

すでに取り組みは始めているようで、電話帳検索サイトには、「楽天市場でレビューを書いた直後に電話がかかってきた」という声が見られる。以前、同社の城戸幸一郎執行役員は、本誌の取材に対し、配車サービス「Uber」における、業者にミスがあった際の即時の顧客対応を例に挙げ、「最先端インターネットサービスの対応を見習いたい。ユーザーに『楽天で買って本当に良かった』と思ってもらうことが大切」などと話していた。ただ、現状はこうした考えがユーザーに伝わっていない感がある。

低評価は、店舗にミスがある場合だけではなく、いわゆる「クレーマー」がつけているケースもありうる。書き込みから数分で電話するのでは店舗の“言い分”も聞けないだけに、店舗にしてみれば、「正当な低評価とクレーマーをどう切り分けているのか」といった疑問もあろう。楽天がこの画期的なサービスをどのように運用し、軌道に乗せるのかが注目される。

「仮想試着」はアパレル全店舗に導入

また、楽天市場では26日、バーチャル試着サービスを試験的に開始した。子会社のFits.me社の技術を利用したもので、ウェブ上での試着と最適な衣服サイズ提案を行う。楽天が運営する「スタイライフ」のほか、はるやま商事が運営する「紳士服はるやま」でテストを実施。購入前にネットからバーチャル試着できるようにすることで、購入率の増加と返品率の低下を見込んでいる。

「バーチャル・フィッティングルーム」は、ユーザーが衣服の購入前に、いろいろなサイズを試着した際のイメージを、商品ページ上でバーチャルに確認できるようにするサービス。自分の身長や体重など体型に関する情報や、好みのフィット感(ゆったりめ、ぴったりめ)を入力することで、どの衣服やサイズが体型に合うのかを確認できる。「フィット・アドバイザー」は、ユーザーが身長や体重など体型に関する情報を入力すると、おすすめのサイズ(S、M、Lなど)を表示する。

今回の試験運用では、楽天市場に出店する「紳士服はるやま」のメンズ用ワイシャツ約60点において「バーチャル・フィッティングルーム」が利用できる。また、「フィット・アドバイザー」は、スタイライフにおける約8000点の商品を対象とする。

三木谷社長は楽天新春カンファレンスにおいて、両サービスを「いずれは衣料品を扱う全店舗に導入したい」と述べた。

さらに三木谷社長は、最短で翌日配達が可能なサービス「あす楽」を推進していくと説明。モール内検索において、同サービス導入店舗の商品を上位に表示させる考えを示した。「翌日配達ができる店舗を優先させる必要がある。自前での展開が難しければ、当社の物流サービス『楽天スーパーロジ』を使ってほしい。昨年11月は月間事故ゼロという驚異的なクオリティーで値段についても競争力がある」とした。

このほか、このほか、学生など若年層を対象とした特別会員サービス「楽天ヤング」を刷新し、15歳から25歳の学生向けに「楽天学割」とすることも分かった。

ポイントアップをアピール

ポイント増でユーザー育成

16年に入ってからさまざまな新施策を打ち出している楽天。三木谷社長が「スーパーポイントアッププログラム」と呼んで力を込めるのが、楽天市場における付与率をアップする施策だ。楽天カード利用時に付与するポイントは通常1%だが、楽天市場で購入した際には特典として2%増やす。また、楽天市場アプリを利用して購入した際も1%プラスする。これまでもキャンペーンとして実施してきたが、恒久的な施策とするほか、月に1回アプリ経由で買い物をすれば、当月の買い物はアプリ以外からでもポイントアップ対象とする。

また、年会費1万800円の楽天プレミアムカードで購入した際はポイントを通常の楽天カードよりいつでも1%増やす。通信サービス「楽天モバイル」利用者もポイントを1%増やし、付与ポイント制限をなくした。基本となるポイントの1%を含めてこれらの施策を合算すると、7%のポイントが付与される。

河野執行役員は「長期的なユーザー育成を視野に入れた施策だ」と説明する。楽天カード加入1年後の楽天市場における購入金額が96.2%伸びていることや、楽天市場アプリに初めてログインした1年後の購入金額が20.1%増えていることなどを踏まえ、クレジットカードとアプリを中心としたポイント増の施策を打ち出す。今後はユーザーの動向をみながら、ポイントアップとなるグループ内サービスの対象を広げる考えだ。

ポイント増の原資については、「将来的なところは分からないが、今回は当社が負担する。ポイント増で店舗の売り上げが増えるのはもちろん、当社にとってもメディアとしてのバリューが上がり、出店料増や広告収入増が期待できるため、現状では店舗の負担増は考えていない」(同)とする。

「(積極的にポイントアップ施策を実施する)ヤフーを意識したものではない」(同)という今回の施策だが、仮想モール間でのポイント付与競争がさらに激化するのは必至といえよう。楽天の場合、外部でポイント利用ができるのがユーザーのメリットとなるだけに、楽天スーパーポイントに対応した実店舗がどれだけ増えるかがカギになりそうだ。

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