ライフコーポレーション、アマゾン活用で生鮮品ECを強化――売れ行き好調でエリア拡大を前倒し

 スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションが展開する生鮮品EC事業が好調に推移している。アマゾンジャパンが有料会員
「Amazonプライム会員」向けに展開する即配ECサービス「PrimeNow(プライムナウ)」を活用して昨秋から開始した生鮮品や総菜などのネット販売が「予想を上回る注文を頂き、非常に好調」(同社)で、当初は都内の一部地域のみだった展開エリアを6月末には東京23区全域まで拡大。さらに7月には東京4市のほか、大阪市にも拡大させるなど攻勢をかけている。店舗周辺エリアに限定して展開するネットスーパー事業を含めて、生鮮品ECを強化し、2年後には現状の3倍超となる年間100億円の売上高を見込む。

 なお、アマゾンは「プライムナウ」での直販は7月末で終了する。今後、即配ECはライフ専用サービスとして展開していく考えのようだ。

スポンサードリンク

大阪にも拡大

 ライフコーポレーションは2019年9月12日から、アマゾンの「プライムナウ」に出店する形で同社の生鮮品や総菜など数千点の商品の販売および配送を都内7区(板橋・北・新宿・杉並・豊島・中野・練馬)でスタート。「プライムナウ」での受注後、練馬区内のライフの店舗、新桜台駅前店のスタッフが商品をピッキングして梱包。「アマゾンフレックス」(※アマゾンが直接、契約して配送を委託する個人事業主のドライバー)の配送員が店舗で商品をピックアップ、最短2時間以内に商品を配送する流れ。配送料は1回の受注額が6000円未満の場合、440円。6000円以上、1万円未満では220円、1万円以上では送料は徴収しない。配送時間は正午から午後10時まで(2時間単位で配送時間指定可能)となっている。

 ライフによると同サービスの開始以来、「計画を上回る多くの注文を頂いており、非常に好調に推移している。特に鮮魚や精肉、野菜などの生鮮品や弁当などの総菜が売れ筋。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、自宅で食事をとられる人が増えており、ニーズが高まっている」(同社)とし、具体的な売り上げなどは明らかにしていないが、当初の想定を上回る利用があるようだ。

 好調を受けて、2020年の夏までに東京20区と4市まで配送エリアを拡大することを決めた。まずは江東区内の東砂店を2つ目のプライムナウ対応店舗として4月11日からは配送エリアを新たに江戸川・葛飾・江東・墨田・中央の5区、同23日には足立・荒川・台東・千代田・文京の5区まで拡大(同エリア対応店舗は扇大橋店=足立区)。さらに5月26日には渋谷・世田谷・目黒の3区を追加(同エリア対応店舗は桜新町店=世田谷区)した。これにより、東京23区内で予定していたエリア拡大を終えたものの、「ニーズの高さから当初の計画よりもスピードを上げてエリア拡大を行うことにした」(同社)として当初は計画していなかった大田・品川・港の3区についても6月30日から対応(同エリア対応店舗はマチノマ大森店=大田区)を開始して東京23区全域をカバー。さらに7月14日からは予定通り、東京の狛江市、調布市、三鷹市、武蔵野市の4市にもエリアを広げた(同エリア対応店舗はキテラタウン調布店=調布市)。

 そして7月16日からは初めて東京以外の地域への対応をスタート。大阪・浪速区内の塩草店を対応店舗として、大阪市内の16区(阿倍野、生野、北、城東、住吉、大正、中央、鶴見、天王寺、浪速、西、西成、東住吉、東成、福島、港)に対応した。

 同社では今後もアマゾンと連携しながら対応地域の拡大を進めていきたい考え。「現時点ではどこに広げていくというのは決定していないが、店舗周辺エリアには拡大できる。当該地域の利用率などを勘案しながら配送エリアを広げていきたい」(同社)とし、東京や大阪を軸に広げていく考えのようだが、ライフは関東では東京のほか、埼玉、神奈川、千葉で、関西では大阪のほか、京都、兵庫、奈良でも店舗を展開しており、こうしたエリアでの対応も検討していくとみられる。

ECで売り上げ100億円へ

 同社ではEC事業を成長事業と位置付け、大型店舗を対応店舗として、当該店舗から半径1~2km以内を配送エリアとして各店が店内で注文品をピックアップして配送するネットスーパーサービス「ライフネットスーパー」の強化を進めており、昨年にはセイノーホールディングスとネットスーパーでの配送業務に関して提携してセイノーの食品配送サービスプラットフォームなどを活用するなどで配送力を強化するなどし、前期(2020年3月)のネットスーパー事業の売上高は前年比25%増の30億円まで増加するなど順調な拡大を見せている。自社ネットスーパー事業に加えて、「注文から最短2時間以内で配送できるスピード感があり、ネットスーパーとは異なり、店舗が出店していない地域もカバーでき、新規顧客の獲得にもつながる利点がある」(同社)という「プライムナウ」経由での売上高を上げていくことで、生鮮品ECの売上高の拡大を図っていきたい考え。同社では2022年2月期にEC事業の目標売上高を100億円としているが「(目標の100億円達成に向けて)ここまではよいペースで来ている」(同社)とし、堅調な推移を見せているようだ。

「プライムナウ」でのアマゾンの直販は終了へ

 なお、「プライムナウ」に関しては今後、ライフ専用のEC・配送サービスとなるようだ。7月31日付で「プライムナウ」でのアマゾンの直販が終了するためだ。

 もともとプライムナウはアマゾンの直販商品をスピード配送する有料会員向けサービスとして15年11月からスタート。17年には直販商品に加えて、ココカラファインやマツモトキヨシ、三越伊勢丹の商品を配送するなど外部事業者からの出店も解禁など、拡大に向けての動きを見せていたが、昨秋にサービスを縮小。ライフを除く外部事業者の出店を終了させ、配送エリアもそれまで関東では東京(都内23区および調布市や三鷹市など12市)、神奈川・川崎市の6区、千葉・浦安市と市川市、関西では大阪市内の17区と吹田市など4市、兵庫・尼崎市と伊丹市の一部エリアで展開してきたが、19年11月からは、都内10区(板橋・中野・北・豊島・文京・荒川・足立・新宿・練馬・杉並)でのみの展開と大幅に対象エリアを縮小していた。

 事業縮小の理由についてはアマゾンでは明らかにしていないが、プライムナウを展開していくにはかなりのコスト負担が必要とみられる上に、効率的な運用に苦戦していたとみられる。ただ、スピード配送には一定の需要があることなどから、事業自体の継続は維持したかった模様で、商品力や店舗網を持つライフと組むことでコストを抑制した形での即配サービスの運用が可能になったとみられ、再び、「プライムナウ」の配送エリアを拡大してきたものの、多額のコストをかけてまで「プライムナウ」で直販を継続する必要性は低く、現状ではライフ向けの配送サービスに特化すべきと判断した模様だ。

 アマゾンジャパンでは「プライムナウ」での直販の終了の理由について「昨年9月から10月にかけて、PrimeNowを通じてAmazonが商品を直接販売・配送するエリアを見直し、東京都の10区において継続してきたが、これらのエリアにおいてもライフで取り扱っている商品をAmazonの配送ネットワークを通じて届けられるようになったため、7月末日でPrimeNowにおけるAmazonの直接販売を終了することにした。また、生鮮食品のリテールビジネスは引き続き、Amazonフレッシュにおいて継続し、品揃え・サービスともにさらなる向上を目指していく」(同社)としている。

NO IMAGE

国内唯一の月刊専門誌 月刊ネット販売

「月刊ネット販売」は、インターネットを介した通信販売、いわゆる「ネット販売」を行うすべての事業者に向けた「インターネット時代のダイレクトマーケター」に贈る国内唯一の月刊専門誌です。ネット販売業界・市場の健全発展推進を編集ポリシーとし、ネット販売市場の最新ニュース、ネット販売実施企業の最新動向、キーマンへのインタビュー、ネット販売ビジネスの成功事例などを詳しくお伝え致します。

CTR IMG