ファッション通販売上高ランキング ーーコロナ禍の通販利用の状況は?

  • 2021年8月25日
  • 2022年6月24日
  • 特集1

 本誌姉妹紙の通販新聞社では2021年7月にファッション商材の通販売上高調査を実施した。成長を続けるECチャネルだけでなく、テレビやカタログなど無店舗販売チャネル全般を対象とした。2020年はコロナ禍で外出を控えた消費者の通販利用拡大を受け、アパレル企業の多くが通販売り上げを大きく伸ばし、通販専業も会員数を増やして健闘した企業が多い。ただ、ECモール運営企業を除いて売上高ランキング上位10社のうち、有店舗アパレルが6社入るなど、通販市場でもアパレル企業に主役の座を奪われつつある。当該市場の潮流や有力企業の動向などを見ていく。

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事例1 通販専業・ECモール

 テレビやカタログなどの売り場を持つ総合系通販企業は、コロナ禍で消費者の通販利用が大きく増える中、新客開拓や休眠顧客の開拓などに成功した企業が多かった。一方で昨年の“巣ごもり需要”は食品や日用品、リビング商材、家電などに集中したこともあり、衣料品の売り上げ構成比は相対的に下がっているようだ。

 テレビやカタログなどの売り場を持つ総合系通販企業は、コロナ禍で消費者の通販利用が大きく増える中、新客開拓や休眠顧客の開拓などに成功した企業が多かった。一方で昨年の“巣ごもり需要”は食品や日用品、リビング商材、家電などに集中したこともあり、衣料品の売り上げ構成比は相対的に下がっているようだ。

 ベルーナは、コロナ禍で新規顧客の獲得に成功した。アパレル分野では若年層向けブランドの「ジーラ」がカタログからネットへのシフトに成功して好調に推移。同ブランドは2021年の秋冬号をもってカタログを廃止し、ネット専門ブランドに転換するという。加えて、近年はインナーやメンズを成長領域として強化しており、とくにメンズは商品ラインアップを拡充しているほか、年齢層別に3つのカタログを展開して幅広い層を取り込んでいる。千趣会の00年12月期は、一定期間に購入がない顧客へDMなどで積極的なアプローチを実施したことでベルメゾンの継続・復活会員数が前年比約41万人増となったほか、新たな生活様式に対応した商品を迅速に提案して巣ごもり需要を獲得。新規会員数も同約15万人増えた。

 20年9月にはJR東日本と資本業務提携を結び、同社が千趣会の筆頭株主となったことから協業関係を強化。千趣会はJR東日本が運営する通販モール「JREモール」に出店したほか、21年5月にはJR東京駅構内の商業施設グランスタ東京にベルメゾンの実店舗を開設し、靴ブランド「ベネビス」を中心に認知拡大を図っている。

 高島屋は、ファッション商材では通販顧客との相性がいい中価格帯商品のオリジナルブランド「タカシマヤスタイル・プリュ」や、大きいサイズのファッションカタログなど百貨店の信用力が発揮でき、かつ通販ならではの品ぞろえが売り上げ拡大に寄与した。婦人服からスタートした「スタイル・プリュ」はメンズ向けを始めたり、媒体の発刊回数を増やしたこともあって好調で、20年11月にはリアルショップを高島屋大宮店2階に開設している。また、ECチャネルでは自家需要開拓の一環として20年秋から「ロエベ」など高級ブランドを扱う「ラグジュアリーサロン」のページを通販サイト「高島屋オンラインストア」内に開設した。

 テレビ通販については、通販専門放送大手のQVCとショップチャンネルが上位を死守。前者は売上高の約5割を、後者は約3割を衣料品および服飾雑貨、ジュエリーが占めていると見られる。

 ショップチャンネルはコロナ禍における働き方の変化に伴って生放送時間を縮小した。ファッション分野で投入予定だった新ブランドの投入を見送ったことや、ハレの日需要が減ったことで貴金属を含むファッション需要が弱含み、巣ごもりニーズに即したアイテム展開によって単価が下がったため、ファッション分野の売上高を落とした。

 ジュエリー専門のGSTVは21年3月期の売上高が55.3%増となるなど好調だ。コロナ禍で宝飾品に対する消費意欲が停滞する中、放送枠の増枠と外出自粛などの影響がプラスに作用した。また、返品可能商品を大幅に増やしたことも受注増につながったという。

 衣料品が主力の通販企業では、フェリシモは企画構想力を生かした独創的な商品展開がSNSや各種メディアで反響となり、数々のヒット商品が誕生。「ヨガ気分ブラ」をはじめとする「フラフィール」のインナー商材や、毎日の暮らしにゆとりを与えてくれる「フラウグラット」の日常着など、おうち時間を快適に過ごすための商品が
好調だった。

 また、テレビCMやウェブマーケティング、DMなどの複合型マーケティング施策が軌道に乗ったことで、新規顧客数の拡大と過去購入顧客の再購入数の増加、継続会員数の大幅伸長につながった。

 DoCLASSE(ドゥクラッセ)は、拡大してきた実店舗がコロナの影響を大きく受けたものの、通販チャネルでは数年前から強化してきたECが順調で、前期はカタログや新聞広告による売上高を上回った。

 また、楽天市場などの総合ECモールを主戦場としてきたネット専業のアパレルブランドはモール内競争が加熱して浮き沈みが激しい。近年は品ぞろえの強化を進めるファッションECモールの戦略と合致し、「ゾゾタウン」などに出店して成果を上げるブランドも出てきたが、引き続きファッションECモールの低価格化が進む要因にもなっている。

デジタルシフトでモールも伸長

 ファション専業のECモール(※図表を参照)については、20年春の緊急事態宣言中にアパレル実店舗が休業したことを受けてEC利用者が増加。外出機会減による需要の減少をデジタルシフトの加速が上回った形で、2桁成長したモールが8社中5社となった。

 図表は決算会計上の売上高だが、モールの流通額を示す商品取扱高で見ると、ゾゾは21年3月期が前年比21.5%増の4194億円と飛び抜けている。靴が主力のロコンドはワールドからファッションウォーカーを買収したこともあって21年2月の商品取扱高は同12.7%増の206億円まで拡大し、2位グループのクルーズショップリストとマガシークを射程にとらえている。

 ゾゾは、EC利用の拡大という追い風に加え、21年1月の年始セールや3月のコスメ専門売り場「ゾゾコスメ」開始時のテレビCM放映効果などで新規客の開拓に成功した。また、サイト訪問者に対するレコメンド戦略を磨いてきた成果もあり、「ゾゾタウン」の年間購入者数は前年比121万人増の948万人に、アクティブ会員数は同130万人増の813万人に拡大した。

 同社は前期、商材の拡張と売り場の拡張を推進。20年3月にスタートした靴の専門モール「ゾゾシューズ」を皮切りにコスメやラグジュアリー・デザイナーズブランドを扱う売り場を新設したほか、インフルエンサーなどと組んだD2Cブランドの開発も開始した。

 売り場の拡張については19年12月に出店したPayPayモール(PPM)店でPayPay社による販促費の積極投下があったほか、想定以上にユーザーが定着化したことからPPM店の取扱高は前年比3.5倍となり、全体の成長に貢献した。

 利益面も、取扱高拡大に伴う粗利の増加などが奏功して前期の営業利益は前年比58.3%増の441億円と過去最高を更新した。

 ゾゾはPBの失敗などから初の減益となった19年3月期に続き、20年3月期は暖冬の影響もあって取扱高、売上高ともに大幅な計画未達で着地。その間、常時10%割引となる有料会員サービスに端を発した大手アパレルのゾゾ退店問題や前澤前社長の退任とZホールディングス傘下入りなどを受け、ゾゾの成長力を疑問視する声も出たが、前期業績は“ゾゾ完全復活”を印象づけるものだった。

 ロコンドの前期は、外出自粛によって靴の需要が減少したものの、自社モール「ロコンド」の強化やユーチューバーであるヒカルさんの「リザード」などD2Cブランドの販売好調のほか、完全子会社化したファッションウォーカー(FW)の運営で取扱高が初めて200億円を突破した。

 ECモールのアクティブユーザー数は自社モールの78万人強と外部モールの29万人強を合わせて108万人に、出店ブランド数はFWの取得効果やコスメの取り扱い強化で前年と比べて950以上増加し、3426ブランドとなった。

 利益面ではテレビCMを抑制しユーチューブを中心としたSNSにシフトしたのに加え、ウェブ広告の効率化、送料手数料収入の見直しなども奏功。営業利益は過去最高の14億3800万円だった。

ロコンドが完全子会社化して運営している
ファッションウォーカーのサイト

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