2023年上半期のネット販売業界を振り返るーー「2024年問題」の影響色濃く

  • 2023年7月25日
  • 2023年8月25日
  • 特集1
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上半期の EC 業界の動きは?

 2023年も半年が経過し、早くも折り返し地点を迎えた。今年は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザなどと同様の「5類」へと引き下げられた。また、通販周辺では生命線でもある物流費の値上げなど「2024年問題」を見据えた動きが急速に広まっている。昨年度とは大きな変化が見られるようになった今上半期において、ネット販売業界で起きた主な出来事を振り返ってみる。

大手宅配各社が値上げを表明

 まず、この上半期を印象付ける最も大きな出来事となったのが物流費の値上げだ。4月には佐川急便が平均8%程度の運賃値上げを行い、同じくヤマト運輸も宅急便などの届出運賃を平均などを改定し、平均で約10%の引き機となっているもの。上限規制によりで約10%引き上げ。日本郵便につい上げを行うことを発表している。すべドライバーが荷物を運べる距離が短くては10月1日から宅配便の基本運賃ては物流業界の「2024年問題」が契なるために賃金減によるドライバーの離職増に伴う人手不足問題の解消や、離職抑制に向けた賃金アップを行うための対応が背景にある。

 これに伴って、6月19日には日本郵政グループとヤマトグループが協業を行っていくことで基本合意。まずはヤマトのポスト投函型商品であるメール便や小型荷物商品について、日本郵便の配送網での配達に取り組んでいくという。

 こうした動き受けて、通販業界でも物流周りの強化に向けた施策がいくつか始まっている。2月にはオルビスが物流センターに自律走行搬送ロボットを導入し、省人化と効率化に着手。アマゾンでは三井不動産のグループ会社と連携して、不在時でも「置き配」を行えるよう配送員がオートロックを一時解除できる取り組みを拡充。さらには、配送会社を起業したい事業主に対して、通常より安価な保険料で加入できる自動車保険の案内や安価に給油できるカードの付与、アマゾンが定期的に一定の荷物の配送委託を行うなど支援を拡大している。

協業を発表した JP とヤマト(左から長尾裕ヤマトホールディングス社長兼ヤマト運輸社長、増田寛也日本郵政社長、 衣川和秀日本郵便社長)

航空会社が仮想モール市場に新規参入

 新サービスという観点ではコロナ禍以降、成長著しい食品通販業界において、イオングループが4月にネットスーパーの新サービスとして「GreenBeans(グリーンビーンズ)」を立ち上げることを発表し、今夏より始動。5月には大丸松坂屋百貨店が、食通のバイヤーが厳選した冷凍グルメ宅配のサブスクサービスを開始している。

 またECの主戦場でもある仮想モールを巡る動きも活発化している。主だったところでは、航空事業会社であるANAとJALの参入がある。まず、ANAグループが1月31日に初の仮想モールとして「ANAMall」を開設し、初年度100億円の流通額を計画。JALグループは5月30日に「JALMall」を開設し、まずは流通総額約120億円を目指す。

ANAグループが開設した「ANA Mall」
JALグループが開設した「JAL Mall」

 その一方で、2月にはヤフー親会社であるZホールディングスが、これまで標榜してきた「国内最大のEC取扱高を目指す」という目標を撤回。EC事業で戦略転換を図る動きを見せたことも話題となった。

 そのほか、近年注目されている地方創生に関しては、楽天グループが2月に兵庫県加西市と包括連携協定を締結。3月にはZOZOが茨城県つくば市と、4月にはテレビ東京ダイレクトが岩手県八幡平市と包括連携を締結するなど、それぞれ地域経済の発展に関わるような内容で相互協力を図っていくという。

2023年上半期のネット販売業界の主な動き( 1〜3月)

-- 1月 --
  • ANAグループ、初の仮想モール「ANA Mall」を開設
  • ヤフー、「ヤフーショッピング」の出店者向けに運転資金を提供する「売上金事前受 け取りサービス」を正式に開始
  • アダストリアが不正アクセスを受け、1月 日時点で約104万件の個人情報流出の 可能性が判明
  • 良品計画、一部商品の価格について平均約 %の値上げを実施。2月からは配送料も 値上げ
  • ジュピターショップチャンネルが通販サイトで第三者による、なりすまし購入が発生 したと発表
  • 冷凍宅配食サービスのナッシュ、不正アクセスで顧客情報の一部が流出している可能性があると発表
-- 2月 --
  • アダストリア子会社、「フォーエバー 」の日本再上陸に先行してECでの販売を開始
  • 三京商会、不正アクセスを受け、約5万件の個人情報などが漏えいした可能性を発表
  • 楽天グループ、兵庫県加西市と包括連携協定を締結
  • オルビス、物流の主要拠点である東日本流通センターに重量計を搭載した自律走行搬送ロボットを導入
  • ソースネクストが不正アクセスを受け、約 万件のカード情報漏えいの可能性を発表
  • Zホールディングス、これまで標榜してきた国内最大EC取扱高を目指す目標を撤回。EC事業の戦略転換を図る
  • 三井不動産と日鉄興和不動産、東京板橋区に都内最大級となる物流拠点の着工を開始。第1号の入居決定事業者であるヤマト運輸はクール便専用のラストマイル施設として 使用する予定。来年9月の竣工を計画
-- 3月 --
  • ネットセキュリティーの重要性を啓蒙する団体「サイバーセキュリティ連盟」が設立
  • アマゾンジャパン、配送事業の起業を支援する取り組みを本格化すると発表
  • 東京都、化粧品通販のエムアンドエムに対し、景表法に基づく措置命令
  • 東京都、健食通販のツインガーデンに対し、景表法に基づく措置命令。アフィリエイト広告の不当表示について、事業者の広告責任を認定した。東京都が同広告を対象に処分を行うのは初めて
  • ZOZO、茨城県つくば市と「地域活性化
  • 次世代支援及びSDGs の推進に係る包括連携協力に関する協定」を締結
  • アマゾンジャパン、三井不動産グループと連携し、不在時の置き配で配送員がオートロックを一時解除できる取り組みを拡大
  • ニトリ、転勤のない新たな勤務制度として「マイエリア制度」を導入
  • ファーストリテイリング、各従業員に付与している報酬水準を最大で約 %アップ
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2023年上半期のネット販売業界の主な動き( 1〜3月)、6月には改正特商法が施行、従業員の働き方改革の整備が進む、は本誌にて→

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