ネット販売実施企業のリアルでの展開が目立っている。インターネット上で行える施策は一巡、さらに新規顧客の獲得や拡販を図るためには、既存のネット上の施策ではリーチが難しい層に訴求していく必要があることから一環としてイベントや店舗での取り組みを行い、新規顧客獲得につなげたり、さまざまな体験・コンテンツを通じて商品やサービスの理解を深めてもらい、納得感の高い買い物やロイヤリティの醸成につなげたり、よりパーソナルな提案を可能にしたりと各社とも工夫を凝らしている。注目すべき各社の取り組みを見ていく。
事例① アマゾンのAudible
聴く読書”のお試し会を開催利用のきっかけ作りで成果
アマゾンジャパンが展開するナレーターや俳優・声優らが小説などを朗読した音声コンテンツ「オーディオブック」を配信するサービス「Audible(オーディブル)」が新規顧客獲得や利用促進策の一環として「オーディオブック」の試聴体験会を積極化させている。
「『オーディオブック』というのはなんとなく知っているが〝本を聴く〞ということがどんなことなのか。実際に試して頂ける体験会はたびたび実施している」と逢阪志麻Audibleカントリーマネージャーは話す。
直近では11月7~9日の3日間、東京・渋谷の地下鉄に続く地下路の一角にタブレット端末とヘッドフォンを十数台ほど設置して行き交う人々に「オーディオブック」の試聴を促す「エキナカAudible体験」を実施した。
11月11日から配信を開始した人気作家の湊かなえ氏が初めて手掛ける、書籍として出版する前にオーディオブックとして配信を行うオーディオファースト作品である「暁星(あけぼし)」の先行試聴をメインに訴求しつつ、配信中の他のオーディオブックをすべて視聴できるもの。
参加者には特典として「暁星」を試聴した人には著者の湊かなえ氏が監修したコーヒー(ドリップパッグ)を、また、「オーディオブックを試聴した人全員に2025年秋に放映した「オーディブル」のテレビCMにも登場したブルドッグ「ブル」をプリントしたオリジナル付箋を贈与。なお、当該付箋の1枚目のみ「嗚咽する」など感情をあらわす表現を記載しており、異なる表現が記載された8つの付箋の中から試聴体験者が自由に選ぶことができる。そしてその1枚目の付箋などを使ってオーディオブックを試聴した後の「今の気持ち」を会場内に設けた掲示板に貼ってもらうことで、視覚的に試聴体験者の感想を道行く人々にもアピールできる仕掛けも行うなど工夫。さらなる体験会の参加者の呼び込みやSNSでの拡散にも一役買ったよう。なお、「エキナカAudible体験」は11月14~16日まで大阪・梅田の阪急大阪梅田駅近くでも行った。
2024年も7月24~28日まで開催したイベント「Audible真夏のミステリーライブラリー」や、12月6~8日まで開催した「東京コミコン」にブース出展し、その中でリスニング体験コーナーを用意するなどこれまでも〝試聴体験〞を展開してきた。「エキナカAudible体験」もその一環だが、「調査したところ、他国は移動中や外出時に利用することが多い傾向にあるが、日本のお客様は自宅で楽しむ方が多い。通勤・通学時など自宅外でも楽しんで頂きたく、そのきっかけになれば」(逢阪氏)とし、初のオープンスペースで実施することにした。
「22年に開始した聴き放題プランの導入以降、特に利用者が増え、今年5月時点の利用者数(の伸長率)は22年から166%となった。さらなる拡大のために『オーディブル』を利用したことのない方々へリーチするべく、認知の拡大にフォーカスしている。テレビCMの放映もその一環だが、認知頂いた方々に利用を促すために体験頂くことが重要で体験会は大切な取り組みだ。我々としてもお客様の生の声を聞かせてもらい、何をすべきかが見えてくる」(同)とし、今後も様々な形で試聴体験会を行っていく考え。