2025年を振り返ると、生成AI(人工知能)のECサービスへの活用、TikTokのEC機能「TikTokShop」の開始などEC業界にプラスの効果を与えた出来事もあった一方で、アスクルを襲ったランサムウェアによるサイバー攻撃や円安、物価高による消費の冷え込み、米国の関税施策変更による越境ECの不振などEC各社にマイナスの影響を与えた出来事もあった。2025年におけるEC業界の10大(重大)ニュースを振り返る。(※ニュースおよび順位は本誌編集部が独断と偏見で選びました)
1 進む生成AIの活用
2 猛威振るうランサムウェア
3 TikTokがEC機能を搭載
4 アマゾンの「相乗り出品」訴訟
5 ふるさと納税「ポイント付与」禁止で駆け込み
6 日本郵便、運送事業取り消し
7 中堅ECの倒産が相次ぐ
8 越境ECに逆風
9 「置き配」が定着へ
10 円安、物価高がEC市場に直撃
1位 進む生成AIの活用
生成AIの進化は日進月歩。特に注目を集めているのは、人間の介入なしにAIが自律的にタスクを遂行する「AIエージェント」。例えば楽天が運営する「楽天市場」においては、エージェント型AIツール「RakutenAI」を、楽天モバイル向け無料通話アプリ「RakutenLink」に搭載している。「楽天市場」や「楽天トラベル」など、同社が提供するサービス内で、自分が欲しい商品などに関して、テキストや音声、画像を使った横断的な検索を可能にしたものだ。
同社の三木谷浩史社長は、8月の店舗向けイベントで「エージェントというコンセプトが、今までのインターネットの使い方の概念を根本的に変えるだけではなく、デジタルの世界に『スーパー秘書』が登場し、どんどんどんどん賢くなっていく。賢くなるだけではなく、皆さんのことを良く理解している」と熱弁。例えば検索についても、これまでは言葉に紐づいた結果を示していたが、今後はユーザー個々の購入履歴やプロファイルに基づいた結果を表示する。さらには、常用しているサプリメントが切れそうな時期には、「スーパー秘書」が「そろそろ買っておきましょうか」と問いかけてくれるわけだ。今後楽天市場においては、統合された専門家エージェントを活用し、同社が提供するECサービスの利用状況から得られるユーザー属性や好み、購買傾向といった多様なデータを分析することで、一人ひとりに最適化された商品を提案していくという。
EC事業者のAI活用も進んでいる。オリジナル家電を販売する「シバデン」では、独自の「カスタムGPT」をもとに、基本的な商品情報を項目別にChatGPTへ渡すだけで、商品ページの構成が生成されるだけではなく、その内容をもとにキャッチコピー、サブコピーを生成できるようにしている。これまで商品ページ作成に1週間かかっていたものが、数時間に短縮することができたという。
今後重要になってきそうなのが「生成AI向けSEO」。「シバデン」を運営する三ツ谷電機の三ツ谷大氏は「何かを買いたい場合に、生成AIへ相談するユーザーが増えている。そういった際、生成AIにピックアップしてもらえるような商品ページの作り方、さらには『情報のばらまき方』が重要になってくるだろう。今までのSEO対策では間に合わない」と指摘する。
寸評 人口に膾炙(かいしゃ)しつつある生成AI。「チャッピー」におすすめを聞くユーザーも少なくない?
2位 猛威振るうランサムウェア
身代金要求型コンピューターウイルス「ランサムウェア」が猛威を振るった。アサヒグループホールディングスが9月29日に攻撃を受けたほか、EC実施企業ではオフィス用品通販大手のアスクルも10月19日にランサムウェアによるサイバー攻撃を受けて物流システム(WMS)に障害が発生、受注・出荷業務を停止した。自社通販だけでなく、子会社が請け負う外部事業者の物流業務にも影響、良品計画やロフト、そごう・西武、ネスレ日本の通販サイトも受注・出荷を停止した(※ネスレ日本、そごう・西武は11月から、良品計画は12月から通販サイトを再開した)。
同29日から一部商品に限定して受注を再開、手作業で出荷作業を行ったが、同社の高度に自走化・機械化された物流拠点の設備をコントロールする物流システムが停止したことで、出荷体制は大幅な制限を余儀なくされ、11月の月次売上高は前年同月比95.1%減の16億9800万円まで減少したことで、上期(6~11月)の売上高も前年同期比15.1%減の1667億6100万円まで落ち込むなど業績面にも大きな影響が出ている。
アスクルは12月17日にWMSを再構築して通常出荷を再開、本格復旧に向けて動き出したものの、停止期間に失った顧客や売り上げ、また、物流業務の受託事業の今後にも今回のサイバー攻撃に伴う事業停止の影響は影を落とすことになろう。
サイバー攻撃を受けた企業は被害者であり、非難されるべきは攻撃を仕掛けた犯罪者だが、事業が止まってしまえば当該企業の顧客、取引先へと被害の余波が広がり、その責めは被害企業が受けることに否が応でもなってしまう。そうならないためにしっかりとバックアップを準備しておき、有事の際にはそこからシステムを復旧できるよう平時からリカバリができる仕組みを整えておくことや攻撃者の偵察を検知し、侵入経路を調査でき、再攻撃を防ぐことができる仕組みや体制の構築、顧客情報などの重要データを直接アクセスできる形で持たず強固に管理すること、万が一侵害に遭ったとしてもシステム全体が停止しないような被害範囲を限定するような設計とすることなどランサムウェア対策の対策は万全にしておくべきだ。
通販・EC各社も犯罪者のターゲットになっていることを強く認識すべきだろう。
寸評 サイバー攻撃の標的は大手企業だけでなく、EC事業者もターゲットとなっている。備えは万全に。