第21回目となる本誌によるネット販売企業の売上高調査「ネット販売白書」の結果では、ネット販売(BtoCの物販)実施企業上位300社の合計売上額は6兆1443億円となった。前年調査の4兆8042億円に比べて27.9%拡大した。新型コロナウイルスの影響によって、消費環境のEC化が飛躍的に進んだこともあり前年の実績を大きく上回った。また、順位については前回同様に、アマゾンジャパンが2位以下を大きく引き離してトップを獲得している。
商材別EC市場調査 総合・日用品
コロナ禍の追い風で各社とも大幅増収に
様々なジャンルの商材を販売する「総合EC事業者」は各社とも軒並み売り上げを伸ばしている。右の表では前回および今回の調査でも本誌推定値を記載していることなどの事情で千趣会、ジュピターショップチャンネル、QVCジャパンは前年売上高と比較した増減率を掲載していないが、単純比較ではそれぞれ14.2%、8.1%、7.1%のプラスとなっており、上位10社ともに前年実績を上回って推移していることになる。EC市場が全体的にコロナ禍による巣ごもり消費増を受けて成長しているが、特に生活に密着した様々な商材を展開し、日常的に利用されている総合EC事業者が受けた恩恵は大きかったようだ。
順位 | 社名/ サイト名 | 前期実績 | |
EC売上高 (百万円) | 増減率(%) | ||
1 | ◎ アマゾンジャパン / amazon.co.jp | 2,185,200 | 25.2% |
2 | ◎ DINOS CORPORATION / ディノスオンラインショップ | 受 62,296 | 7.1% |
3 | 千趣会 / ベルメゾンネット | ※ 受 56,000 | ー |
4 | ジュピターショップチャンネル / 通販・テレビジョッピングのショップチャンネル | ※ 53,000 | ー |
5 | アスクル/ LOHACO | 52,858 | 8.7% |
6 | ベルーナ/ カタログ通販ベルーナ | 48,588 | 44.4% |
7 | QVC ジャパン / QVC.jp | ※ 36,000 | ー |
8 | 三越伊勢丹ホールディングス / MIストア | 31,500 | 50.0% |
9 | 高島屋 / 高島屋オンライン | 29,700 | 60.0% |
10 | セブンネットショッピング | 23,688 | 18.1% |
コロナの恩恵に加え、対応強化でアマゾンは25%増
そういった意味で最も多くの恩恵を受けたと思われるのが首位のアマゾンジャパンだ。19年も14.1%増と2桁成長を維持しているが、20年度は25.2%増とさらに大幅な伸びを見せた。コロナ禍により、「店でなくECで買い物をしよう」という消費者にとって「『EC』で第一想起する通販サイトと言えばアマゾンか楽天市場だった人が多かったのではないか」と分析する市場関係者の言葉通り、他社以上にコロナ特需が追い風になったとみられる。
アマゾンでも2020年4月から玄関先や車庫など顧客が事前に指定した場所に商品を配達する、いわゆる「置き配」を都内を含む30都道府県で標準の配送方法として採用したほか、スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションと組んで、ライフの商品を受注後最短2時間で配送するサービスの展開エリアを拡充。それまで対象エリアは都内10区限定だったが、20年4月から徐々にエリアを広げ、同12月時点で東京23区4市と大阪21区3市、神奈川県の一部(川崎市2区と横浜市4区)までカバー(※21年9月現在では東京23区4市、神奈川8市、千葉13市、埼玉1市、大阪20市、京都3市、兵庫1市で実施中)、また、20年8~10月にかけて東京と埼玉に4つの大型物流拠点を新設、稼働させたり、同7月には物流拠点からの配送品を集積し、顧客宅まで配送するデリバリーステーションと呼ばれる最終配送拠点の整備を始めるなどコロナ禍で増え続ける受注、配送、ニーズを効率的に処理、対応するための施策に注力している。
一方で同10月からクリエイターがデザインしたイラストなどを注文に応じて、シャツなどにプリントし販売するサービス「MerchbyAmazon」や事業主向けのネット販売サイト「アマゾンビジネス」内で理美容師に限定して理美容関連商品を販売する専門コーナー「プロフェッショナル・ビューティーストア」を開始するなど新たな試みによる売り上げ拡大施策も展開し、さらなる規模拡大に向けた準備もぬかりなく進めている。
前年減収のLOHACO復調、百貨店各社も大幅増
アマゾンのほか、各社も好調に推移している。前年はこれまでの売上規模拡大路線から、利益率の高いPB商品やメーカーと組んで開発した商品などで差別化を図りつつ、利益確保に重きを置いた戦略に転換させたことなどもあり、減収となったアスクルの「LOHACO」もコロナ特需のほか、ソフトバンクが携帯電話利用者向けに行う販促キャンペーン「サイバーサンデー」やヤフーの大型販促セール「超PayPay祭」などグループ企業の販促施策を活用して売り上げを伸ばし、再び増収に。このほか、前年は減収だったベルーナのEC売上高も当期は巣ごもり消費増の恩恵などで4割超の大幅な増収だった。三越伊勢丹HD、高島屋ら百貨店各社のEC事業についてはコロナ禍にあって、緊急事態宣言などの影響で店舗への集客が困難な状況となった中、ECへのシフトを進めた結果、それぞれ5割、6割増と大幅な増収となっている。
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