第20回目となる本誌によるネット販売企業の売上高調査「ネット販売白書」の結果では、ネット販売(BtoCの物販)実施企業上位300社の合計売上額は4兆8102億円となった。前年調査の4兆4612億円に比べて7.8%拡大した。今回も前回同様に、アマゾンジャパンがトップを独走しており、2位以下を大きく引き離した。新型コロナウイルスに伴う巣籠り需要を受けて、ネット販売市場全体で利用が急増。決算月や商材によっては大きな恩恵を受けたところもあり、好調要因となった。
商材別EC市場調査 総合・日用品
アマゾンの拡大続く、ロハコは戦略変更で減収に
首位のアマゾンの動きを中心に総合・日用品のEC市場を見ていく。アマゾンジャパンは2019年度も二桁増収と前年度とほぼ同様の増収率を維持した。国内の有力メーカーと組んで開発する日用品のプライベートブランド(PB)の展開強化などを含めた直販品の拡充に加えて、外部の出品者の誘致強化によるアマゾン全体の品ぞろえの強化などが寄与。また、昨年には07年6月に日本で有料会員制度「Amazonプライム」を開始して以来、3900円に据え置いてきた年会費を初めて値上げ(年払いは4900円に、月払いは500円)するなど動きがあったものの、様々な会員特典の強化やNTTドコモと連携して携帯電話利用者で特定料金プランの契約者を対象に「Amazonプライム」に無料加入できる特典を付与する試みを開始したことなどもあり、一般顧客に比べて、購入の回数や頻度が高い有料会員の増加などに寄与した模様。また、伸び悩んでいるとみられる食品販売をてこ入れのため、スーパーマーケットチェーンを展開するライフコーポレーションと組んで、生鮮品や総菜などの販売強化に着手した。有料会員向けに展開するスピード配送サービス「プライムナウ」でライフの食品を配送・販売する仕組みで、昨年9月からまずは都内7区に限定して開始。その後も、配送エリアを順次拡大しており、2020年6月には都内23区をカバー、同7月には東京4市のほか、大阪市にも配送地域を拡大している。ライフによれば「計画を上回る多くの注文を頂いており、非常に好調」という。また、7月に実施した毎年恒例の大型セール「プライムデー」についても過去最高の売り上げを更新した。
◇◇ 1位〜25位 ◇◇
(26位以降の順位については、本誌に掲載しています)
さらなる成長に向けた新たな試みも実施している。配送関連コストの圧縮のため、昨年2月から玄関先や車庫など顧客が事前に指定した場所に商品を配達する、いわゆる置き配に着手。大都市圏を徐々に対象エリアを拡大し始めた。なお、2020年3月からは30都道府県で顧客から指定がない場合は留守、在宅問わず、玄関先に商品を届ける置き配を標準配送としている。また昨年10月からAmazonHubと呼ばれるパートナー企業の店舗や設置ロッカーで商品を引き渡す取り組みを開始した。
ただ、出品者からのポイント原資の強制徴収を試み、公正取引委員会が問題視し調査に乗り出したり、17年に虚偽の参考価格を掲載するなどで景品表示法違反で同社に措置命令を下した消費者庁に対し、昨年1月に処分取り消しを求めて提訴。1審は請求が棄却されるも、その後も控訴するなど行政との対決姿勢を強めている。なお、値引き販売時に一部を納入業者らに負担させるなどの行為があると、18年に公取委から優越的地位の乱用にあたる可能性があると立ち入り調査を受けた件でも今年9月にアマゾンが非を認め、納入業者らに合計20億円を返金するとした確約手続きを行っている。好調な業績の一方で、取引先企業や行政との軋轢なども露呈し始めており、今後にどう影響してくるのか注目される。
利益を重視しはじめたLOHACO
これまでアマゾンの対抗馬として、売上を拡大させてきたアスクルが運営する「LOHACO(ロハコ)」。ただ、宅配クライシスなどを受け、これまでの売上規模拡大路線から、消耗戦をさけ、商品力などで差別化を図る利益確保に重きを置いた戦略に転換させたこともあり、前期は減収となっている。昨年7月に実施した配送コストのかさむ飲料のケース販売を抑止して配送効率のよい飲料のばら売りを促す「ひと箱eco」の導入などで飲料の売れ行きが落ち込むなどで売り上げ面では苦戦。加えてこれまで一定の売り上げがあった中国人による転売が目的とみられる大量注文がなくなったことなども響いたようだ。今後、利益率の高いPB商品やメーカーと組んで開発したロハコ限定商品の拡販強化や、グループのヤフーと組んで同社が通販事業者向けに展開する予定の自社サイト向け構築サービスを導入したり、出店するヤフーの仮想モール「PayPayモール」での効率的な新規客獲得を進めるなどして関連コストを圧縮、2020年5月期時点では60億円程度ある営業損失を2023年5月期までに黒字化させたい考えとしている。
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