顧客の体験価値を向上ーー ネット販売業界のAI活用の現状は?

  • 2022年6月25日
  • 2022年7月25日
  • 特集1

スタートアップを中心にAI活用ツールを自社開発し、EC事業のレコメンドや需要予測の精度向上、業務の効率化などを推進する取り組みが増えている。とくに“言語化”が難しいファッションカテゴリーでのAI活用はさまざまな応用が見込まれていることから、ファッションECをメインターゲットにした支援系ツールも充実し始めている。スタートアップを中心にAI活用に積極的なEC事業者の取り組みと、エンドユーザーの顧客体験価値向上につながる支援系ツールの現状について見ていく。

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アパレルECなどで活用進む支援ツールの提供も相次ぐ

AIがおすすめの服を表示

 月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」を手がけるエアークローゼットは6月8日、パーソナルレコメンドAIを自社開発し、「エアークローゼット」のマイページ内に新設した「ショップ」コーナーで各ユーザーに合わせたおすすめアイテムを最大100着表示して購入しやすくするサービスを始めた。

 同社は、「エアークローゼット」のサービス開始から約7年をかけて蓄積した400万コーディネートにおよぶパーソナルスタイリングに関する独自データを活用し、パーソナルレコメンドAIを開発したという。


エアークローゼットによるパーソナルレコメンド AI のシステムイメージ

 新たに提供を開始したAIパーソナライズショップ機能は、レンタルサービスを3カ月以上利用しているユーザーを対象に、「エアークローゼット」の全アイテムの中から登録サイズなどの顧客情報全般やレンタル実績の中で評価が高かったアイテム情報をもとに、パーソナルレコメンドAIによって選出されたユーザー一人ひとりに合わせたおすすめアイテムを、1位から最大100位まで、ランキング形式でマイページ内のショップ画面に表示する。当該ショップ内のアイテムはシーズンや顧客の利用データに合わせて毎週更新する。

 「エアークローゼット」では、ユーザーがレンタルして気に入った商品を割引価格で買い取ることができるサービスは実施していたが、AIパーソナライズショップ機能の実装により、まだ借りたことのないレンタル商材も割引価格で買えるようになる。

 ショップ画面に表示されるアイテムはサイズやカラーも判断してレコメンドしており、上位100アイテムの中には同一アイテムの色違いがレコメンドされるケースもあるようだ。

マイページ内の「ショップ」コーナー におすすめアイテムが表示される

 これまでも同社のデータサイエンスチームは、スタイリストが担う洋服のスタイリング領域において、“スタイリスト×AI”の協働で洋服を提案する「スタイリングサポートAI」の研究開発に力を注ぎ、高精度化を推進してきた。

 2021年6月からは計算型人工知能で世界トップクラスの研究者である明治大学の高木友博教授を迎え、産学連携での実用化に向けた共同研究に取り組んできた。

 同研究ではエアークローゼットが積み上げてきたパーソナルスタイリングに関する独自データと、高木研究室の最先端AIの知見をかけ合わせ、最新の推薦手法を開発することで「スタイリングサポートAI」の高精度化を目指した結果、アイテムと顧客のマッチングの高精度化に成功。中程度レベルのスタイリストと同程度のアイテム推薦を実現するとしている。

 なお、エアークローゼットのインターネット調査によると、働く女性は買い物に行く前の情報収集にもっとも時間をかけており、洋服を「探す時間」は「買う時間」より約3倍の時間を費やしていることが明らかになった。ユーザーに合わせておすすめアイテム100着が数秒でセレクトされる自分専用ショップでの買い物は、洋服を探す時間を大幅に短縮できるという。

AIで独自商品を開発へ

 オンライン完結のパーソナルスタイリングサービスを手がけるDROBE(ドローブ)は4月7日、AIを活用したオリジナルアイテムの開発に着手した。

 「ドローブ」は、プロのスタイリストと独自のスタイリングAIが顧客の嗜好や体型、予算などに応じたファッションアイテムを提案し、定期的に届けるパーソナルスタイリングサービスだ。利用者は届いた商品を試着して気に入ったアイテムだけを購入する仕組みで、不要な商品は無料で返品できる。初回は購入した商品の代金だけで利用可能で、2回目以降は商品代金に加えて1回当たり税込3190円のスタイリング料がかかる。


商品開発に AI を活用し始めた「ドローブ」のサイト

 現状の取り扱いブランド数は200以上で、ミドルプライスのトレンド市場のアイテムを中心に約15万点をそろえる。スタイリングAIで顧客のプロファイルに合った商品を絞り込んだ上でプロのスタイリストがスタイリングを組むが、発送前に提案商品の画像や価格などを確認してもらうことでミスマッチを防いでいるという。

 今回、新たな取り組みとして、独自開発のAIを活用し、アパレルブランドと連携してオリジナル商品の開発をスタート。5月以降、「ドローブ」の別注商品として販売する計画だ。

 ドローブでは、「Vネック」や「長袖」など生産前に分かっている商品のディテール情報を独自開発したAIに組み込み、ユーザーごとの商品スコアを算出。当該スコアが高いほどそのユーザーに好まれる確率が高いことが分かり、継続ユーザーの過去の購入データによって3カ月後にどんな商品が求められるのかを一定程度予測できるという。

 そのシミュレーターを活用し、第1弾としてレギュラーサイズのアパレルはノーリーズ、イレギュラーサイズのアパレルはヒロタ、シューズはダニュウと協業。それぞれ「ドローブ」用の別注商品を製作する。

 AIが判定した“売れる商品”の要素を用いて、メーカー側が商品の土台となるサンプルを作成。細かいディテールや着心地、トレンドなどの情報は人が持つ感覚的な意見を取り入れて多くのユーザーに気に入ってもらえる商品を生産して販売していく。

 ドローブでは21年の秋冬シーズンからAIを活用した商品開発のトライアルを開始しているが、プロパー消化率が90%以上となる見込みで、成果が得られたことから、22年春夏シーズンは3社の協力を得て20~30型の別注商品を開発する考えだ。

 「ドローブ」は来訪者の8割以上が継続顧客で、1カ月以上前から商品の発送が予定されている状態だ。高い精度での予測が可能なサービスモデルの素地があるため、本当に希望する商品だけを生産することができるとしている。

 同社では「AIを活用した商品開発がメインにはならない」(山敷守CEO)とするものの、「将来的には20~30%くらいの商品がAI活用による別注商品になり得るし、“売れるものを売れるだけ作る”という仕組みがファッション業界の余剰生産問題に貢献できる」(同)とする。

需要予測とレコメンドに活用

 エイチームグループで自転車のネット販売を手がけるエイチームコマーステックは3月18日、自転車の通販サイト「cyma(サイマ)」で、在庫問題を解消する需要予測AIと、最適な商品を提案する商品レコメンドAIを開発したと発表した。

 エイチームグループはこれまでもAIを研究開発する全社横断プロジェクト「AIワーキンググループ」を立ち上げるなど積極的にAI活用を推進し、社員向けのリカレント教育や、AIを応用した利便性の高いサービスをユーザーに提供してきた。新たに開発した需要予測AIと商品レコメンドAIは、事業のより最適な運営を可能にするとともに、利用者の買い物体験の向上につなげる狙い。

需要予測 AI などを活用している自転車通販サイト「サイマ」のトップページ
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