購入前の不安を払拭するなどの目的で、通販企業やEC事業者がAR(拡張現実)技術を活用した新サービスを相次いで打ち出している。コロナ禍において、有店舗小売り企業では実際の店舗やショールームをバーチャル化して見せる取り組みも増えている中、AR技術によって、“商品を試すことができない”という通販最大の弱点を解消して購入率の改善につなげるほか、デジタル上における新しい買い物体験を提供しようとしている。
ZOZO(ゾゾ)は4月5日、バーチャルにメイクアップアイテムを試せる新機能「ARメイク」を、ファッション通販サイト「ゾゾタウン」内で展開するコスメ専門モール「ゾゾコスメ」でサービスを開始した。当該サービスは、AIおよびAR技術を活用したソリューションを提供し美容業界とファッション業界のDXをけん引するパーフェクト社の技術を利用した。
「ARメイク」に対応するのは、パーフェクト社がサービスを提供する国内通販サイトの中で最多の21ブランドのコスメアイテムという。
「ARメイク」は、高度なARとAI技術により、鏡を見ながら商品を試すような感覚で「ゾゾコスメ」のさまざまなコスメアイテムを「ゾゾタウン」アプリ上で試すことができる機能だ。
商品詳細ページからワンタップで「ARメイク」を起動でき、簡単な操作で自分の顔にバーチャルメイクを施すことができる。また、メイクの濃淡調整やメイクのオン・オフ切り替え機能により、実際にコスメアイテムを使用した際の色感やテクスチャーをイメージしやすく、アイテム選びに役立てるのはもちろん、「ARメイク」画面下部の「カートに入れる」ボタンからそのまま商品購入に進める。
「ゾゾコスメ」で販売しているコスメアイテムのうち、スタート時点で「ディオール」や「エスティローダー」「オルビス」「マキアージュ」「ボビイブラウン」など21ブランド、677SKUのアイシャドウとリップが「ARメイク」に対応。今後も対象アイテムを拡充する予定だ。
ゾゾでは「ARメイク」の導入により、商品を直接手に取ることのできないECにおいても、気になるコスメアイテムを自宅で気軽に試してもらうことで、より安心で楽しい買い物体験を提供するとしている。
一方、衣食住の幅広いブランドを展開するサザビーリーグは6月7日、ECチャネルが主体のジュエリーブランド「アルティーダウード」の通販サイト上で、ジュエリーのAR試着ができる新サービス「バーチャル・トライ・オン」をスタートした。
新サービスの開始に当たっては、ビジュアルソリューション「タンジブリー」を国内ジュエリーブランドとして初めて導入。個々のサイズ比較や単一のバーチャル試着だけでなく、「アルティーダウード」の得意とするリングの重ね付け提案もアプリをダウンロードせずにパソコンやスマホ画面で自在にシミュレーションできる。
また、同ソリューションでは肌のトーンのコントロールができるスライダーも付随し、より「アルティーダウード」の掲げる“ありのままの美しさ”や一人ひとりの個性に寄り添う思いを視覚的に表現するという。
AR試着は、商品詳細画面の「TRYITON」ボタンをクリックすると、リングであればモデル画像上で好きな指に商品をドラッグできる。リングを追加してコーディネートすることも可能だ。また、スマホのカメラで自身の手を撮影すれば、自分の手でバーチャル試着ができる。AR試着はリングだけでなく、ピアスやバングル、チャームなどのアイテムにも対応している。
ニッセンも5月26日、運営する通販サイト「ニッセンオンライン」で販売する一部の家具・インテリア商品についてAR技術を使って、実際に設置したい部屋の場所にスマートフォンの画面上を通じて疑似的に原寸大の商品を配置できる機能「ニッセンAR体験」の提供を始めた。
通販で家具を購入する際に利用者が感じる「部屋に置けるサイズなのか」「どの色が部屋に合うか」といった不安を解消する目的でARを活用した新サービスを始めた。
新機能では商品を自由に回転させて360度チェックできるほか、メジャーを使わなくても設置したい空間に入るかを確認できるという。開始時点でのAR対応商品は大型家具15商品だが、今後は対象商品を増やしていく。
なお、同サービスの利用に専用アプリのインストールは不要だが、iPhone6s以降やAndroidArcore対応機種など対応機種でないと使用できない。