コロナ禍も2年目を迎えた2021年度は、各社でオンラインをベースとした新しい働き方への対応が進み、ある程度の“慣れ”も出てきている。一定のノウハウが蓄積できたことから、新入社員の人材育成においてもその応用が進み、手ごたえを感じている企業も少なくない。また、関連する取り組みとして、一から育てた社員をその後も会社に長く定着させるための福利厚生などについて、従来とはまた違った内容でも展開。社員同士での密なコミュニケーションが難しくなりつつある中、工夫を凝らしている。ネット販売を実施する各社で取り組む、人材育成と福利厚生についてアンケート結果をもとにその内容をまとめた。
コロナ禍で変化が見られる社員教育や職場環境の整備
ジャパネットグループでは、まず、新卒採用の研修として、入社後に2カ月程度の集合研修を行い、一般的なビジネスマナーやPCスキルUP、社会力UP、会社理解系研修、実地研修(仮配属)を経て、各部署へ配属となる。即戦力の人材を育てるためには、OJT制度として、翌3月までマンツーマンでインストラクターが付き、業務面はもちろん社会人としての1人立ちをサポート。以降も、6年目までは若手社員として身に付けてほしいスキルや思考方法を学ぶための集合研修を年に1度実施。就業時間内で自由に参加できる研修や一部資格取得補助制度も導入しているという。
ベルーナでは、導入研修(入社後1週間)を行い、その後は異なる実務研修(半年程度目安で例年異なる)を実施。即戦力育成に向けては、1~3年目の若手研修、ブラザー社員研修を取り入れている。
ユーグレナでは、1.5カ月程度の期間で実施。内容は、ビジネススキル、マナー、マインドセットに関する座学で、それに加えて、企業の課題抽出とその解決策実行などがある。コロナ禍ではテレワークとオフィスどちらでも研修を実施している。即戦力化に向けては、OJTによる成長を加速させるために定期的に1on1を実施。いつでもどこでも閲覧できるe-Learningコンテンツも拡充している。
CROOZSHOPLISTでは、様々な項目に分けて展開。まず、「ビジネスリテラシー」では、ロジカルシンキング、プレゼンテーション、営業ロープレ、管理会計/財務諸表/PL/BS、契約、ビジネス法規などを実施。「ITリテラシー」においては、タイピング、ショートカット操作、Excel/スプレッドシート、/PowerPoint/スライド/GoogleMeet、PCトラブルシューティング、VBA/GoogleAppScript、通信ネットワーク/情報モラル/情報セキュリティ、SQL、PHP、CSSなどを行う。即戦力化に向けては、研修にITスキルを最大化させるためにCTO自ら研修講師を実施している点を挙げた。
DX化に伴う内容でも展開
RIZAPグループでは、コロナ禍になってからオンラインとオフラインを織り交ぜた計2カ月間の研修形式を採用。新人研修の大きなカテゴリーを4つに分けて実施している。「ビジネスマナー」では、オフラインとオンラインを混ぜた外部講師による集合型研修。「会社理解」では、実店舗を持つ企業のため、実際に店舗に行き、店舗のオペレーション業務を学んで、店舗の課題を回収し、解決策までプレゼン。「ビジネススキル」では、「グロービス学び放題」や「UdemyforBusiness」などのe-learningを導入し、新入社員に視聴してもらいながら、アウトプットするための研修を内製化。「キャリア」では、配属先が多職種に分かれるため、隔週に1回人事面談を行い、新入社員のキャリアについて話し合う時間をとっている。そして、即戦力育成で特徴的な研修では、DX推進に伴い社内・新卒のエンジニア育成プログラムを一部の社員に向けて実施している。これは2023年卒に関しても適用予定。事業会社だからこそ、エンジニアプログラムに取り組む中で志向が合わなかった場合にも多様なキャリアとIT知識を活用することで他の部署で成果をあげやすい環境が強みとなっており、「エンジニアに興味がある」という人材も歓迎している。
ゴルフダイジェスト・オンラインでは、研修期間を2カ月間とし、リモート環境となったためe-learningを実施。即戦力化に向けては、きっちりとした研修期間(OJT含む)を設け、スキル、知識、経験を深めていくなかで、3~5年後の将来的な活躍を期待する研修内容・体制としている。
再春館製薬所では、6カ月間(4月~9月)の研修期間で、社内業務理解・学習のための座学と業務実践を実施。来年度については未定となっているが、一昨年度はコロナの感染拡大によって集合研修が困難だったため、研修メニューを動画・ライブ中継にて在宅で行った。そのほか即戦力化に向けては、現在は座学よりもOJTに注力。「お客様プリーザー職」については、入社3年目までの研修カリキュラムを組み、育成している。
DINOS CORPORATIONでは入社後2カ月程度の期間で実施。ビジネスマナー等の基本スキル研修、社会人への導入研修、自社事業を学ぶ座学研修、グループワーク、コールセンターやロジスティクス部門での実地研修などを行い、実際の働き方に近い環境を想定できるようにするため、テレワーク実施日をうまく織り交ぜた研修スケジュールも採用。配属前リアリティギャップ防止目的の研修も行う。即戦力化では、配属先に関わらず、社内の全ての部署にて研修を行い、会社機能や業務連携について理解。オンラインの比率を高めた各種社外セミナーの活用促進などもある。
新日本製薬では、期間としては3カ月~6カ月程度で、ビジネスマナー・商品研修といった同社で活躍するための土台育成のための座学と、顧客の声に直接触れることを目的とした、コールセンター研修・物流研修の2種を実施。即戦力化に向けては、配属後メンターとなる社員を新入社員につけて、OJTを実施。社員の等級に沿った、段階的な研修制度を設けている。
ジュピターショップチャンネルでは、1~2カ月の期間で展開。ビジネスマナーや基礎知識を学んで体現できるようにトレーニング。社内の各部門に関する理解を深めるプログラムの実施や、新しいアイデアで同社のビジネスをより良くするための提案などがあり、e-learningを使ったプログラムも取り入れている。
部門ごとに特色をつける
ZOZOでは、部門ごとに特色を設けて実施している。まず、「ビジネス部門」では年度によって異なるものの、概ね2カ月程度の研修期間となり、これまでに実施した、主な内容の例としては、会社理解を深める研修、社会人としての基本マナー研修、オリジナル研修がある。オリジナル研修では、入社年度によって様々な内容を展開。2021年は、事業の根幹となる部門(EC事業、カスタマーサポート、物流管理)にて、ECビジネスの基礎や仕組みを各部門の社員から直接学ぶ内容を実施。また、過去には同社の“人自部”に1カ月間仮配属し、実際の人事業務を通じて、仕事の基礎を身に付けてもらう研修も行った。そのほか、仕事の進め方、タイムマネジメント、タスク管理、ビジネスマナー、電話対応、ビジネス文章の書き方、議事録作成、プレゼンテーション研修など多岐に渡る。
「開発部門」についても年度によって異なるが、約1カ月程度の研修期間で展開。これまでの研修内容の主な例では、会社理解を深める研修、専門知識を深める研修(主にエンジニア)、社会人としての基本マナー研修、外部講師を招聘しての講演、プレゼンテーション研修、開発実習などがある。
マガシークでは、まず、入社後1カ月、その後1年はOJTを実施。研修中からテレワークを活用し、テレワーク時のコミュニケーションの取り方を学んでもらう。コロナ前より、新入社員同士の親睦を深める研修を多く取り入れていて、一例として、お互いを取材して行う他己紹介プレゼンなどがある。即戦力化に向けては、伊藤忠・ドコモが主催する質の高い研修を受講させているとした。
そのほかにもアスクルでは、入社直後の基礎研修後に、現場の業務を学ぶ研修を展開。また、コロナ禍のため現場がオンラインでの業務を行っていることもあり、オンラインでの現場研修も実施している。即戦力化では、フィールドワーク研修やデータ基礎研修を行う。オルビスでは、約1カ月間で、同社のリテラシーとビジネスリテラシーのインプットを行う。オークローンマーケティングは社会人基礎研修、自社理解のための研修をオンライン・オフラインのミキシングで実施。即戦力化に向けてはOJTやメンター制度がある。スクロールでは、2週間の新入社員研修を行い、OJT制度やメンター制度を導入。即戦力化に向けては、通販検定3級の取得や職種別研修がある。ファンケルでは、4~9月の6カ月間で実施。ビジネスマナー研修、TOEIC・日経テスト受験、理念研修、店舗・物流研修などを実施。コロナ禍においてはリモート研修(座学やグループワーク、工場や事業所はオンライン見学)を導入している。
福利厚生では働き方の多様化に対応
社員を育成する制度と並んで、会社の組織力の向上や、既存社員も含めた人材の定着化に向けた取り組みとして、独自で取り組んでいる福利厚生の充実がある。従来から取り入れて継続してきたものや、コロナ禍で新しく導入した制度など、様々な切り口で各社の整備が進んでいる。
ジャパネットグループでは、全社員の心とからだの健康の実現と、世の中の健康増進に貢献するため、会社と社員が一体となって健康経営に取り組んでいる。また、女性活躍や、お祝いギフトカタログ、スーパーリフレッシュ休暇(16連休)、リフレッシュ休暇(10連休)なども取り入れている。そして、直近では、「天神オフィスの新設」がある。同社ではウィズコロナの新しい働き方としてオフィスの在り方を見直し、自宅から近いオフィスに通勤できるコールセンターの拠点分散や、会社に徒歩で通勤できる社員への手当制度導入など、新たな取り組みを行ってきた。2020年に立ち上がった福岡市を新たに主要な拠点の一つとするプロジェクト「JAPANET@FUKUOKA(ジャパネットアットフクオカ)」では、人事・経理などを含む12部門を福岡市天神のオフィスへ移転するとともに、中途採用も強化。
ベルーナでは、子供が小学校6年生になるまでの時短勤務制度。退社時間を午後3時、午後4時、午後5時までと選択することができる「育児短時間勤務制度」がある。また、社員のモチベーション向上を図り、頑張った社員を審査し、表彰していく部門活性化のための取り組みとして「ガンバレーション制度」があり、表彰された社員には、報奨金の授与などが行われる。
CROOZSHOPLISTでは、「フルリモート勤務制度」で、働く場所を選ばずに就業が可能。「Lリモート手当」として、自宅のリモート環境を整備するための設備費用を会社で負担する。また、「Lバーチャルオフィス『oVice』を導入し、リモート環境でも社員間の仕事における距離をリアルとほぼ変わらないものにできているようだ。
RIZAPグループでは、在宅勤務手当として、在宅率が1カ月の80%以上の場合、在宅勤務手当を支給。時差出勤制度では、午前9時~午後6時の前後1時間ずらして出勤退勤してよい内容で展開。また、社内サービス・商品の割り引きを行うことで、利用しやすくなることにより、社内への帰属度向上だけでなくサービス理解を深めて、その経験・知見を活かしながら仕事ができる仕組みとなっている。
再春館製薬所では、敷地内保育園で、待機児童問題もある中で社員が安心して育児と仕事を両立できる環境を提供。在宅勤務の制度化によって、育児や介護等を理由に出勤が難しい社員に対応する。また、社員食堂では自社内農園でとれた野菜などを使った栄養バランスのある昼食を提供し、社員の活気ある仕事をサポートする。さらに、育児や介護中などの社員を応援するための時短勤務制度もある。
DINOS CORPORATIONでは、ABWオフィスを導入。ワーケーション、ブレジャー制度、リカレント休職などもある。また、時間有給では、年間5日分の有給を1時間単位で取得利用することが可能で、これにより「午前半」「午後半」などの概念がないフレックス制勤務を含めた、柔軟な働き方が可能となる。テレワーク環境の充実としてもサテライトオフィス・モバイルワークの導入がある。
アスクルでは、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入。フルタイムより短い時間の勤務時間を設定できる時短勤務制度もある。働く場所への対応としては、2021年1月より、テレワーク(在宅)をベースとした働き方を全社に取り入れており、コロナ終息後もテレワークを中心とした働き方となるという。休暇・休職については、1時間単位で有給休暇を取得できる制度や介護休暇、永年勤続休暇、エデュケーションサポート休職、ボランティアサポート休職、セカンドライフサポート休職(50歳以上)などがある。
オークローンマーケティングでは、出退勤時間が自由かつ月の勤務時間が120時間を超えていれば定時分の180時間働いたとみなす「スーパーフレックスタイム制」や、時短勤務制度、1時間単位で取得ができる休暇制度、在宅勤務制度、有給休暇とは別に取得ができる「ファミリーサポート休暇」、睡眠ルームの導入などがある。
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