小林製薬の「紅麹」健康被害問題ーー政府が健康被害の収集体制の見直しを検討へ

消費者庁は、小林製薬製造の「紅麹」の健康被害問題を受け、機能性表示食品の検討会を行う。健康被害報告や品質確保が論点になるとみられる。週1~2回のペースで行い、5月末をめどに結論をとりまとめる。一方、「紅麹」をめぐっては、機能性表示食品だけでなく、一般食品を含め、色素などで広範に利用されてきた。行政には「機能性表示食品固有の問題」として取り上げる意図がみられるが、機能性表示食品に対象を絞り、検討することには疑問が残る。小林製薬の対応の遅れから、「紅麹」だけでなく、広く健康食品市場に風評被害が生じている。

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健康被害問題の影響、「小林製薬固有の問題」が焦点に

消費者庁、情報収集体制見直しへ

 消費者庁は小林製薬製造の「紅麹」による健康被害問題を受け、今年4月、庁内に吉岡秀弥次長をトップとするプロジェクトチームを立ち上げており、その補強や、結論の加速化を目的に検討会を行う。「紅麹」の問題をめぐっては、政府が「情報収集体制」と「国の関与のあり方」の見直しを指示しており、厚生労働省、農林水産省など関係省庁もオブザーバーとして出席する。

 検討メンバーは、座長に中川丈久神戸大学大学院教授が就任。日本医師会や日本薬剤師会など制度に否定的な団体が多く参加する。品質管理に詳しい国立医薬品食品衛生研究所の合田幸広氏も委員として参加。事業者団体の参加はない。

自主回収が公表された小林製薬販売の機能性表示 食品「紅麹コレステヘルプ」

被害報告制度や品質管理が争点に

 論点の一つは、健康被害の報告体制とみられる。食品全般の被害報告は、食品衛生法にひもづく省令の規定され、保健所を通じた報告が求められている。ただ、努力義務にとどまる。所掌は厚労省だ。

 機能性表示食品は、届出ガイドラインで消費者庁や保健所に直接報告を求めている。ただ、義務はなく、「ガイドライン違反は、法令違反ではない」(消費者庁)との見解を示している。かに品質管理、消費者への情報提供なども論点になる可能性がある。製品名の公表を通じて注意喚起する消費者安全法など「あらゆる論点を排除しない」(事務を担う消費者安全課)とする。

制度厳格化に慎重論

 ただ、業界関係者からは、検討の行方を懸念する声が聞かれる。問題の内容から規制を強化する方向で検討され、検討メンバーの布陣もこれを念頭に置いたものとみられるためだ。「幅広に報告を求めるのはいいが、重篤度など因果関係の判断は、医師でも難しい。その段階で社名や製品名の公表は難しく、程度問題もある。評価、情報発信の標準をどこに定めるかは難しい」、「結局、米国のサプリメント法のように独立して定義づけ、管理しなければ難しい。健康食品は、当初、錠剤・カプセルなど形状規制があり、日本では食品と一体で進められてきた」、「食衛法の報告制度と二重なものを一体化するような整理が必要」などの意見がある。

機能性総点検「報告不要と判断」

 消費者庁が届出全製品に医師からの健康被害報告の確認を求めた機能性表示食品の総点検は、11社18食品でのべ117件が、医療関係者(医師、薬剤師、看護師)から健康被害の報告を受けていた(速報値、4月11日時点)。軽症、因果関係が不明などを理由に「報告不要と判断した」(食品表示課)。確認は、1693社の6795食品に依頼。1395社の5551食品から回答を得た。販売されていたのは3914食品。消費者庁は、届出ガイドラインとの整合性の確認、医学等の専門家の分析を経て、結果を公表する。

 一方、厚労省が今年4月をめどに回収命令が出た小林製薬の3製品と同じ原料を使う製品の対応について、原料の卸先・入手先のべ225社に、「1日あたりの紅麹原料摂取量が同製品と同等量以上の製品」、「過去3年間で医師から製品による健康被害が1件以上報告された製品」を対象に総点検を求めた結果は、3製品と同じ紅麹原料配合量(100mg)の製品がなかったことを公表している。

機能性総点検「報告不要と判断」

 機能性表示食品制度に対する懸念をこれまで繰り返し掲げてきた野党も、問題を受け、制度改革に向けた動きを活発化させている。

 立憲民主党は今年4月「機能性表示食品の見直しに関するPT」(消費者問題など内閣部門、厚生労働部門の合同会議)を立ち上げた。座長に同党の大西健介議員、副座長に山井和則議員が就任。衆参両院で7人の議員が参加。PTの第1回会合では、消費者庁の清水正雄食品表示課長、二階堂孝彦商品安全課食品安全調整室長、厚生労働省の野坂佳伸新開発食品保健対策室長も出席した。

立憲民主党は PT を立ち上げ制度見直しの議論を始めた

 報告体制の見直しに、消費者庁は、「現時点で食品表示法改正の検討事実はない」(食品表示企画課)、厚労省は「原因究明をもとに再発防止策として何ができるか検討する」と回答した。PTで大西議員は、「今国会による審議で法改正しないといけない」との決意を示した。

 一方、会合後、厚労省官僚は、「(総点検で)小林製薬の販売している3製品以外問題ないとなれば、これに焦点を絞り原因究明できる」との考えも示しており、「小林製薬固有の問題」として解決を図る可能性もある。

健康被害報告制度は努力義務

 食衛法は、条文に健康被害の報告義務はない。ひもづく省令の中で事業者が保健所に報告するよう求める。ただ、「努力義務」だ。

 食品表示法がベースの機能性表示食品は、届出ガイドラインで保健所や消費者庁に直接、報告するよう求める。重篤度や因果関係、症状等を報告する必要がある。ただ、PTで法律違反かを問われた消費者庁は、「法律事項ではなく、違反ではない」(同)と答えた。

 被害報告の見直しは、食衛法改正があるが、影響は一般食品に広く及ぶ。機能性表示食品制度の届出ガイドラインを改正するアプローチもある。ただ、消費者庁は、厚労省のように保健所など全国に出先機関を少ない。食品安全行政を厚労省が担うほか、保健所の業務の多岐にわたりハードルがある。

 そもそも、「紅麹」は、機能性表示食品だけに含まれていたものではない。これに絞り規制強化を図る意義も問われることになる。

 厚労省は20年、「いわゆる健康食品」では、製品名や成分名を含む健康被害情報の公表を検討していた。ただ、意見聴取で関係団体等から強い抵抗を受け、見送った経緯がある。

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