ライブコマースも定着かーー注目各社の動画コマース活用術

  • 2024年7月25日
  • 2024年11月25日
  • 特集1

 デバイスの高度化や通信環境の向上などで以前よりも身近になりつつある動画コマース。静止画とテキストを用いた訴求よりも、格段に使用シーンや特徴がつかみやすい動画での訴求はうまく活用できれば購買につながりやすいことは自明だ。さらにライブ配信での訴求ともなれば双方向性も相まって爆発的な売れ行きにつながるケースもあるようで中国など海外ではライブコマースによる訴求は有効な手法として定着している。いまだ国内においては目立った成功例は多くないがうまく動画を活用して拡販に活かす取り組みも進み始めている。注目のEC各社の動画コマース、ライブコマースの活用事例をみていく。

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リアルイベントの目玉企画でライブコマースを開催

 仮想モールの「Qoo10」を運営しているイーベイジャパンは、インフルエンサーやタレント、モデルなどを起用したライブコマースを展開している。直近では7月13日~同14日、都内の「東京ビックサイト」でコスメに特化したリアルイベントの「MEGACOSMELAND2024」において、目玉企画として実施。イベント自体も若年女性を中心に、2日間で2万人を集客するなど、同モールの会員と出店ブランドがリアルで交流できる機会として展開していった。

 同イベントは同社が主催として行い、同モールに出店する30ブランドを集めて実施。主には韓国コスメなど、同社の大型セール企画でも人気となっているブランドが集まった。それぞれECを主戦場としているブランドが多いことから、リアルでも露出することで新しい出会いにつなげ、モール会員とのエンゲージメントを高めていくことを狙っている。

イーベイジャパン運営の「Qoo10」はコスメブランドに特化したイベントを開催した

 当日は事前のチケット制で、午前・午後の部に分けて各5000人ずつ、2日間合計で約2万人が来場。特に、30歳以下の若い女性が多くを占めたという。「オフラインでQoo10を体験してもらうことが狙い」(米川由満ビューティ営業部長)と語るように、通常は毎日アプリ上で行っているルーレットによるクーポン付与企画も、会場内に実物の大型ルーレットを設営して行うなど、リアルな体験ができる演出を取り入れた。

 「スキンケアエリア」と「メイクエリア」に分かれた会場内の各出展ブースでは、新商品のお試しや、ゲーム企画、プレゼントなどを展開。中には美容関連で著名なインフルエンサーが登場し、来場者の肌悩みなどを直接聞いて、おすすめのケア商品を提案するといったリアルならではの体験企画も行われた。初日の午前中から会場の外にも行列ができるなど、どの出展者からも予想以上の人出になったとの声があったとする。

 今回は、目玉企画の一つとして、会場内に設けられた専用スタジオを使って、生配信するライブコマース企画「LiveShopping」を実施。

 同社では今年2月に出店者が利用できるライブコマース専用のスタジオを都内・渋谷に開設しており、普段から週に2~3回のペースで配信しているが、今回はその仕組みをそのままイベント内に落とし込んで展開。当日は若年女性からの人気が高いモデルやタレントが出演して、1時間の配信時間の中でライブ限定商品や日本未上陸の商品など、それぞれの特性・使用感などを伝えていった。イベントに来場できなかった顧客などがリアルタイムで視聴するケースが見られており、配信中に購入されることも少なくなかったという。

 同社によるとコスメという商品の特性上、画像だけではその良さが伝わりにくいこともあり、動画を使った動きのある訴求は相性が高いと見ている。「例えばシートマスクなど、化粧水がどれだけ含まれているか、実際に絞って見せることができる」(同)と説明。ライブコマース担当者と各ブランドが話し合って使いたいワードなども決めながら事前にシナリオを作成していったとする。

会場内の専用スタジオからライブコマースを配信(「Qoo10」のイベントより)

 同社が今回のイベントを通じて改めて感じたのは「若年層の割合が思っていた以上に多く、また、チケットが完売するくらい美容への関心が高いことも分かった。日本国内のメーカーからの反響も良かったので、もっと面白く、お得に楽しめるイベントにつなげたい」(同)とした。

 引き続き、ライブコマースも組み合わせた大型イベントの開催を今後も検討。今回は韓国コスメブランドの参加が多かったが、それ以外の海外や日本ブランドの出展も強化する考え。出展できなくても、商品のサンプル提供をしたいというニーズもあるため、そこに応えた仕組みも設けていく。「どこのブランドも若年層と新規顧客の獲得は共通の悩みとして持っている。そこに対して貢献していきたい」と(同)した。

ANAのCAがインスタライブに登場、新ブランドをPR

 全日空商事では、2024年2月に立ち上げた新ブランドの「ANAFINDS(エイエヌエーファインズ)」について、ウェブやリアルの両面で大規模なプロモーション展開を図っている。とりわけ、SNSにおいては、ANAグループの公式アカウントも活用したライブコマースを実施。キャビンアテンダント(CA)が登場して商品詳細をレポートするなど、ブランドPRに力を入れている。新規商品の開発も順次進んでおり、主力ブランドとして育成を図り、拡大を進めていく考え。

 同事業は子会社で空港売店事業などを手がけるANAFESTAや、ギフト事業などを行うANAフーズとの3社連携による取り組みとして展開。「グルメ」、「バッグ&トラベル」、「ライフスタイル(雑貨)」の3カテゴリー合計67SKUでスタートした。商品の開拓・開発については、グルメ商品をANAフーズ、バッグや雑貨を全日空商事が行い、売り場としては全日空商事のECと、ANAFESTAの空港買店を通じて拡販を図っている。

ANA の CA が出演しているインスタライブ

 立ち上がりの状況としては、旅行需要の回復のタイミングも相まってトラベル関連の商品が好調に推移。中でも、旅先で使いやすい折り畳み式の
「パッカブルショルダーバッグ」(税込価格6000円)が、リアルとネットの両販路で売り上げを伸ばしている。男女兼用で、普段使いがしやすいカジュアルデザインであることも背景にあるようだ。グルメについては、ECで「福岡・名産ごはんのお供3本セット(うめのり佃煮&ゆずすこなめ茸)」(同3240円)が売れ筋となっており、全体的に目標数値を上回る滑り出しとなっている。

 なお、全日空商事では従来からあった「リテール戦略推進室」を、同社グループ全体のBtoCにおけるマーケティング、MD、DX化などを横断的にけん引する組織として、4月1日付で「マーケティング&プロモーション室」に改組。新ブランドの販促に向けては同室が中心となって、ANAグループが有するアセットやノウハウを広く活用する形で行っている。

 一例としては、ANAのアカウントでの「インスタライブ」がある。3月21日には同ブランドだけを露出する内容で1時間のライブコマース番組を配信。ANAのCAが登場して、ご飯のお供であるグルメ商品を食べながらリポートしたほか、ソフトタイプの軽量2WAYキャリーバッグについて、リュックとしても使える仕様を実演を交えながら詳しく解説していった。

 元々、ANAが運営していてフォロワー数の多いアカウントであったことに加え、事前にティザーサイトからも予告して集客をかけたこともあり、配信中には最大で600件以上のコメントが書き込まれるなど、大きな反響があった。高額商品ながらも配信中にいくつか購入があったとしている。

 普段、同アカウントはANAグループのサービスや旅関連の情報などを配信しており、全日空商事では昨年からここでのインスタライブを開始。同ブランドだけでなく、お節やブランドとのコラボ商品など、注目品を紹介している。「(生配信は)一方的に投げかけるだけではなく、顧客からの反応がすぐに帰ってくる。ANA広報室とも連携しながら月に1回ほどのペースで配信している」(同社)とした。

 また、リアルでの訴求としては、羽田空港内のエスカレーター横のスペースを使ったパネル広告への出稿もあり、搭乗客の導線に合わせたプロモーションをかけている。

 さらにウェブにおいてはメディアプラットフォームの「note」上で「FINDSメディア」を立ち上げており、関係するスタッフをはじめ、俳優の竹中直人さんや作家の椎名誠さんといった著名人へのインタビュー記事などを通じたブランドメッセージの発信も行っている。

 なお、今後の展開として、グルメにおいてブランドや産地の枠組みを超えて、複数の売れ筋商品を集めたギフトセッを発売するほか、バッグについても新商品を検討。順次、商品数を増やしていく考え。

 販促面に関しても、グループで手掛けるリアルイベント内で露出することを予定。全社を挙げて基幹ブランドとしての確立を目指していく。

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