厚労省、製品・成分名公表は見送りも議論継続へーー健食の「健康被害情報」公表

 厚生労働省は今年10月、「いわゆる健康食品」を対象にした健康被害情報の公表を見送る方針を決めた。特別な管理を必要とする4成分に被害報告義務を課す「指定成分等含有食品制度」の導入を伏線に検討されていたもの。これを「いわゆる健康食品」全般に広げる案が浮上していた。公表範囲の拡大は関係団体の反発を受け、厚労省の空騒ぎはひとまず収束したかにみえる。ただ、今後も議論は継続するとしており、火種はくすぶっている。

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「指定成分」から公表範囲拡大を検討

 「いわゆる健康食品」はこれまで、食品衛生法に基づく「指定成分等含有食品制度」において、同省がとくに指定する4成分(コレウス・フォルスコリー、ドオウレン、プレアリア・ミリフィカ、ブラックコホシュ)のみ、事業者に健康被害情報の報告を義務づけていた。4成分で年間190件ほどの報告が寄せられている。

 健食を対象にした検討は21年、「指定成分等含有食品制度」の報告事案への具体的な対応など制度充実を検討する目的で設置した厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会傘下のワーキンググループ(WG)の設置要綱を変更する形で突如浮上した。検討範囲を健食全般に広げ、厚労省が把握する健食の健康被害情報14例(20年6月~昨年12月分)も審議対象に加えた。性別や年齢、症状に加え、製品名や成分名を含む公表を想定していた。

 ただ、詳細の分析・評価を経ない公表に、関係団体から「成分と症状の因果関係を追記すべき」、「風評被害を起こす可能性があり、消費者に誤解を与える懸念がある」など慎重な検討を求める声が上がっていた。原因が成分や製品の品質ではなく、「製造工程の調査が優先される」などの指摘もあった。

 これを受け、厚労省は、今年10月開催のWGで、公表フォーマットにおいて製品名や成分名を伏せる方針案を発表。当初想定の内容から大きくトーンダウンした。14例については、注意喚起など緊急の対応が必要な状況になく、因果関係の分析にさらなる情報集積が必要とした。

「プレラリア問題」で指定成分制度導入

 健食の健康被害情報の報告は、海外のダイエット食品の健康被害問題を受け、02年に発出した「健康食品・無承認無許可医薬品健康被害防止対応要領について」(以下、対応要領)がベースになっている。

 ただ、これは事業者向けに発出されたものではなく、医師、医療機関や行政(保健所等)の対応を整理したものだ。医師が診察の中で健康被害情報に接した場合、都道府県に報告義務を課すものだが、事業者は任意に報告を含む対応の要否を検討することになる。「いわゆる健康食品」の中でも、機能性表示食品、特定保健用食品(トクホ)は、独自にガイドラインによって国に健康被害情報の報告を求める制度が整備されている。

 また、厚労省は17年、健食素材「プエラリア・ミリフィカ」の健康被害問題を受け、「指定成分含有食品制度」を導入した。審議会等での議論を経て、厚生労働大臣がとくに指定した4成分のみ、GMP(製造管理基準)の順守や、被害情報の報告を義務化するものだ。指定成分は、必要に応じて追加も可能。報告内容の評価を通じ、食衛法に基づき注意喚起や改善指導、販売禁止措置をとる。ただ、これまで対応例はない。報告内容を評価・分析に関する明確なプロセスがなく、評価結果に応じた行政措置の選択肢が定められていないためだ。そのような状況の中、当初、対応要領の変更が議論されていた。そこに突如、WGの目的、検討内容を定める設置要綱を変更して浮上してきたのが、健食全般に被害報告の網を広げる検討だ。

 厚労省は、WGの設置要綱の変更について、「指定成分以外の健食でも報告例を把握しており問題意識があった。一度専門家に評価してもらおうと考えた」(新開発食品保健対策室)とする。対応措置も明文化されておらず、「どのような場合に、販売禁止等の措置を行うか対応プロセスが決まっていなかった」とする。

 今回、「現段階で緊急の対応は必要ない」との結論を得たことで、一旦は健食の被害報告は見送られることになった。だが、内容はトーンダウンしたものの、公表する方針は崩しておらず、「指定成分等含有食品制度」の円滑な運用に向け、対応要領の改正を視野に引き続き議論する。今年11月には、WG上部の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会新開発食品調査部会新開発食品評価調査会において、改めて健食全般の取扱いについて議論する。


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