持続可能な社会に向けてECができることーー商品の廃棄削減、各社の取り組みは?

  • 2022年11月25日
  • 2022年12月25日
  • 特集1

社会的課題に配慮している事業者の商品やサービスを購入して応援するいわゆる「エシカル消費(倫理的消費)」に着目して積極的に当該商品の品ぞろえや販売を強化するネット販売実施企業が増えている。企業としての社会的な責任を果たすという観点のほか、環境や人権などに配慮されている商品やサービスをなるべく購入・利用したいという消費行動は今後、さらに広がっていくと見られ、ビジネス上の観点からも積極的に対応するネット販売事業者も目立ってきており、商品廃棄ロスを極力減らす取り組みなど様々な形で成果を上げている事業者も出てきているようだ。注目すべき各社の取り組みについてみていく。

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Eコマースで製品・食材の廃棄削減に挑む

宅配買い取りの本格運用開始

 総合通販の千趣会は11月1日、オークネットとの共創事業として2021年7月に開始した宅配買い取りサービスのウェブサイトやブランドロゴ、ステートメントを新たに作成し、「Kimawari(キマワリ)」のサービス名で本格始動した。

 千趣会は2025年度が最終年の中期経営計画で実現させる3つの目標のひとつに「商品の使用価値の最大化」を掲げており、新しい商品を販売するだけでなく、使用中・使用後のサービスも組み合わせて顧客に価値を提供していく方針で、宅配買い取りもこの一環だ。

 通販事業ベルメゾンの顧客インタビューの中でも多くのユーザーがサステナビリティへの関心が高いことが分かったほか、これまでの宅配買い取りの利用状況を検証し、98%という高い買い取り成約率と、ベルメゾンでの買い物継続率約80%という結果が出ていることに加え、環境問題がよりフォーカスされる時代の流れから、「買い取りサービスが持つ事業的、社会的価値が明確になった」(岩本公輔経営戦略部部長兼センシュカイメイクコー社長)とし、サービスを本格展開することになった。

宅配買い取りを「キマワリ」のサービス名で本格始動する

 事業の運営自体は、千趣会子会社のセンシュカイメイクコーが担い、得意とするマーケティング戦略の強みを生かしていく。

 「キマワリ」は大切に使って役目を終えた商品を捨ててしまうのではなく、“何かに役立てたい”というユーザーの思いに寄り添った事業だ。当該サービスの第1弾として、まずは衣料品を中心とした宅配買い取りを「kimawarifashion(キマワリファッション)」として展開する。

 ベルメゾン会員に向けたサービスだが、ベルメゾンのファッションアイテムだけでなく、他社ブランド、ファストファッションアイテム、ノーブランドの商品も買い取る。

 初心者でも気軽に利用できるよう、不要になったファッションアイテムを段ボールに詰め、集荷を待つだけという利用者の手間を最小限に抑えた仕組みとし、商品は何点からでも送料無料、査定無料となる。

 査定金額に納得したら、買い取り金額は現金とベルメゾン・ポイントのどちらかで受け取れるが、ベルメゾン・ポイントの方が5%お得になる。

 リユースが難しいアイテムは新たな商品の原料として活用するほか、サービス利用後には買い取ったアイテムをリユース、リサイクルしたことによる二酸化炭素と水の削減量といった環境貢献度合いを利用者にメールでフィードバックすることで、手軽に罪悪感なく商品を手放せるのと同時に、環境への貢献度も実感できる。

 千趣会では、顧客の手間を最小限に抑えることで宅配買い取りサービスを利用するハードルを下げ、オークネットの持つ二次流通のノウハウやリユース・リサイクルの流通ネットワークによって回収したアイテムを“必要な人のもと”や“必要な環境・資源”に再流通させる。

 今後は、買い取り情報に基づく顧客への商品の紹介など、「キマワリ」を起点とした発展的な取り組みにも順次着手する予定だ。

回収が前提の服作りに挑戦

 衣料品・服飾雑貨の製造販売を行うアバハウスインターナショナルは9月22日、基幹のメンズブランド「アバハウス」と、デジタルマーケティングの支援などを手がけるソウルドアウトが協業し、“サーキュラーエコノミー”をコンセプトとしたファッションブランド「RTC(アールティーシー)」を立ち上げ、ブランド公式オンラインストアでの販売を始めた。両社はパートナー企業の協力を得て、リサイクルを前提とした服作りを行う。

 ファッション業界は大量生産・大量廃棄による環境負荷が問題となる中、ソウルドアウトが落ち綿や残反を綿に戻す「反毛」の技術に着目。国内の反毛工場が減少していることもあり、環境配慮型ブランドの立ち上げが反毛技術の継承や地方創生などの貢献につながると考えた。

 アバハウスとソウルドアウトは2019年にIT従事者向けのセットアップをクラウドファンディングサイトで展開した際にタッグを組んでおり、今回、ソウルドアウトの強い思いをサポートする形で、共同事業として衣服を再生する新ブランド「RTC」を立ち上げた。「RTC」は廃棄を前提としないサーキュラーエコノミーの実現を目指すブランドで、購入後に不用になった商品を回収した後、反毛技術で再度、商品の原料に戻して新しい商品を作り出す。

回収を前提としたブランド「RTC」の通販サイト

 回収後に裁断やリサイクルがしやすいよう、商品はすべて綿糸で縫製。ボタンやファスナーをなくすことで、反毛の際に手間となる部品の取り外しや素材別に仕分ける工程を省くことができるデザインで展開する。

 第1弾としてユニセックス対応のTシャツとビッグTシャツ、パーカー、ノーカラージャケットの4型を公式ECで販売開始した。

 TシャツとビッグTシャツについては、月額1980円のサブスクプランを用意。着用済みのTシャツを専用の封筒に入れて返却すると、3カ月ごとに新品が届く。廃棄せずに服から糸に、糸から服へと何度でも甦る〝循環型のサブスクサービス〟を展開する。

 今後は、「RTC」に共感し、サーキュラーエコノミーの実現を目指すファッション・ライフスタイルブランドを厳選したセレクトショップの展開も予定しているという。

店頭戻り品や旧包材品を割り引き販売

 アスクルでは運営する通販サイト「LOHACO(ロハコ)」でメーカーの廃盤品などを通常価格よりも割り引いて販売する専門コーナー「GoEthical(ゴーエシカル)」を展開中だ。店頭での品ぞろえの変更や通常販売時期が終了したことなどで小売店からメーカーに返品され、これまでは破棄処分としていた店頭戻り品や旧包材活用品を通常価格よりも安価に販売し、廃棄ロスを防ぎ、商品を有効活用する取り組みとして2019年11月から開始したものだ。

 一見、アウトレット品の販売とさほど変わらない取り組みに見えるが、実は様々なメーカーが参画して化粧品において廃盤品を販売する売り場は実店舗、通販サイトを含めてもあまりない。化粧品各社はブランド価値の保護やこれまでの商習慣などを理由に廃盤品は廃棄することが基本だからだ。アスクルでは大手メーカーを対象に「ロハコ」で収集した各種データをもとにマーケティング戦略や商品開発などの研究ができる「LOHACOECマーケティングラボ」を組織しており、各メーカーとのつながりが深く、アスクルが目指す方向性などについてもメーカー各社に分かりやすく示していることもあり、「”安さ”ではなく”廃棄削減”に光を当てることで廃盤品を廃棄せずに販売し、世の中から無駄な廃棄をゼロにする」というGoEthicalの目的に共感したメーカーの担当者が社内調整に尽力し、実現できた取り組みだという。

 GoEthicalのスタート時点では日本ロレアルの商品のみを販売していたが、2020年3月からはオルビス、同7月からはロート製薬らが参画するなど徐々に取り扱うメーカーの商品を増やし、現状では32ブランドまで拡大している。なお、廃盤品を販売したことで廃棄せずともよくなった累計廃棄削減数は2022年10月下旬現在で54万個を突破している。環境への配慮はもちろんのこと、廃盤品であっても大手メーカーの品質の高い化粧品を安価に購入できるという利点もあり、ロハコの顧客に定着しつつあるようだ。

[ この記事の続き… ]

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