日本郵便がヤマト運輸の小型荷物を配達――日本郵政グループとヤマトグループが協業

 日本郵政グループとヤマトグループが6月16日、協業を行っていくことで基本合意した。第1弾としてヤマトのポスト投函型商品であるメール便「クロネコDM便」と小型荷物商品「ネコポス」を日本郵便の配送網での配達に取り組み、今後、協業分野を拡大していく計画。これまで激しく競争してきた両者だが、2024年問題が迫りドライバー不足への対応、またカーボンニュートラルへの対策もあり、手を組むことになった。

 今回の協業について、日本郵政の増田寛也社長は会見で、「資源価格の高騰などインフレが進行し、物流業者の外部環境が厳しくなっている。両者で顧客の利便性向上のため、そしてリソースを有効活用することで24年問題や環境問題へ対応していくことを目指す。『JPビジョン2025』を展開し2年になるが、そこで掲げる外部企業との協業を進める『共創プラットフォーム』の実現を目指している。今回の協業もプラットフォームの強化につながるもの」と説明した。

 一方、ヤマトホールディングス・ヤマト運輸の長尾裕社長は、「ともに物流インフラを構築する一員であり、相互のリソースを有効活用するためのスタートラインに立てたことは意義深いことだ。24年問題をはじめとした課題がある中、サービス面で最も優れたネットワークを有する日本郵便との協業で、当社のネットワーク構造の刷新とビジネスモデルの進化につなげられ、環境問題にも貢献していくこととなり、よい化学反応へと進むことになろう」と述べた。

 協業の目的は、利便性の向上、24年問題によるドライバー不足への対応、カーボンニュートラルへの対応の3点。それぞれのネットワークの強みを有効活用していくことで、目的を達成していくという。運送事業の労働時間は21年が年間2514時間で、全作業の平均同2112時間と比較し402時間(約20%)の差があるという。この差を縮めるには、「いろいろ壊さないとならない」(鹿妻明弘ヤマト運輸専務)という。

 また、環境問題に関しても、二酸化炭素排出量は19年度に10億2900万tだったが、地球温暖化対策計画で定められた目標が30年度に6億6700万tと約40%の削減を求められている。「この削減は普通に取り組んでいては無理」(同)とし、今回の協業を進めていくことが、両者の24年問題、環境問題への重要な対策になるようだ。

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「ネコポス」は23年10月から順次終了

 協業の第1弾となる投函型商品の日本郵便への委託は、ヤマトのメール便「クロネコDM便」を24年1月31日に終了し、翌2月1日から「クロネコゆうメール便」(仮称)として取り扱っていくことになる。集荷は引き続きヤマトが引き受けていくが、それ以降の過程においては、ヤマトから日本郵便の引受地域区分局に差し出し、日本郵
便の配送網で配達する。

 一方、小型荷物の「ネコポス」は23年10月から順次終了し、日本郵便が取り扱う「ゆうパケット」を活用した新サービス「クロネコゆうパケット」(仮称)への移行を図っていく。ヤマトが顧客から荷物を預かり、日本郵便の引受地域区分局に差し出し、日本郵便の配送網で配達する。最終的には24年度末をめどに、全ての地域で新サービスを提供できるようにする予定。

 ヤマトは現状、通常の宅急便、投函型荷物について別々に仕分けを行うなど負荷が多いとしている。今回の協業を通じて現場での作業が行いやすくなるとの見立てをしている。なお、メール便については、これまで15道県でヤマトのものを日本郵便が配達している。ただし、日本郵便が受け持つのはラストワンマイルの部分のみという。ヤマトの直近の「クロネコDM便」の年間取扱個数は約8億冊で、売り上げは約500億円、「ネコポス」は同4億個超で、売り上げは800億円弱。合計1200億円となるが、そのうちの一部の金額が日本郵便への委託料になる。

 ヤマトはトラック約3万5000台を保有するが、その95%が冷蔵冷凍(クール便)用の設備を搭載。1台当たり、約2000lの容量となる。日本郵便は2輪車約8万2000台、軽4輪車約3万台を保有している。

 今回の投函型商品だけでなく、日本郵便の2輪、軽4輪、ヤマトの2トン車、4トン車、さらにヤマトのクール便を組み合わせた取り組みを模索していく。今後検討するとして掲げたのが、ヤマトが日本郵便のクール便を取り扱うことや、ポストの有効活用、受け取り手段など。オペレーションが可能かを見て実現していく方針とした。

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