大阪府警、ステラ漢方従業員ら逮捕 ―― 代理店含め「大量摘発」の衝撃

 大阪府警(生活環境課)は7月20日、健康食品通販を行うステラ漢方の従業員、取引先の広告代理店社長ら6人を薬機法違反の疑いで逮捕した。第三者の体験談を装った記事風の広告で、「肝臓疾患に対する予防効果がある」などと医薬品的効果を表示していた疑い。広告の責任を一義的に負う「広告主」だけでなく、代理店を含む大量摘発が業界に衝撃を与えている。

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「ズタボロな肝臓が半年で復活」と広告

 逮捕されたのは、ステラ漢方の従業員、佐野宏樹容疑者(29)と、取引先の広告代理店であるKMウェブコンサルティング社長の町田幸平容疑者(30)ら2人、同じく広告代理店のソウルドアウト福岡営業所の従業員、竹内聖士容疑者(28)ら3人(委託先制作会社1人を含む)の計6人。

 容疑は、薬機法第68条違反(未承認医薬品の広告の禁止)。ステラ漢方が販売する健食「肝パワーE+(プラス)」について、医薬品の承認を得ていないにも関わらず、ウェブ広告で「脂肪肝がお酒も食事も我慢せず正常値に」、「ズタボロだった肝臓が半年で復活」などと広告した疑い。

 大阪府警によると、6人とも容疑を認めているという。今後の取り調べで、販売の裏付けができれば薬機法第55条違反容疑(未承認医薬品の販売・授与)も加わる可能性がでてくる。

 民間信用調査機関の調べによると、ステラ漢方の2019年10月期の売上高は、前年比50%増の18億円だった。

 ステラ漢方は2014年、販売する健食「カロリストンPRO」の広告をめぐり、商品を摂取するだけで容易に痩身効果が得られるかのような表示を行っていたとして、消費者庁が景品表示法に基づく措置命令を下している。成分に関する学術誌掲載の論文や学会資料、愛用者の声を提出したが、合理的根拠とは認められなかった。

複雑化するアド運用

 「逮捕は衝撃」――。今回の逮捕を受け、健食業界の関係者に衝撃が広がっている。これまで、薬機法違反で広告主が逮捕されることはあっても、取引先の代理店を含め摘発されることはほとんどなかったためだ。背景には、ウェブ広告の複雑な運用が関係しているとみられる。

 摘発対象となった広告は、いわゆるアフィリエイト広告。広告主はこれら広告を含むアド運用を、代理店に委託。代理店がさらに運用に精通した二次請け、三次請けの代理店に委託するケースが少なくない。アフィリエイト広告は、「成果報酬型」。このため、最終的に委託を受けた代理店やアフィリエイターは、成果をあげるため、過激な広告表現に走りがちだ。

 一方、広告主は直接取引のある代理店は把握できても、その先でどのような運用が行われているか「把握できないケースが少なくない」(アド運用を代理店に委託する販売企業)という。

 まして、ウェブ広告は、日々、細かなブラッシュアップが行われ、獲得効率の向上が図られる。「広告内容をいちいちチェックすることは現実的に不可能。代理店による管理に一任せざるを得ない面がある」(同)とする。

3社とも広告引用に深く関与か

 今回、ステラ漢方とソウルドアウト、KMウェブコンサルティングの3社がどのような取引関係にあったかは、現時点で不明だ。ただ、薬機法違反を指摘された広告への関与について、ステラ漢方は、「はっきり分からないが指示をしたということはないと思う」、ソウルドアウトは「捜査中で答えられない」、KMウェブコンサルティングは本誌掲載までにコメントが得られていない。

 ただ、関係者によると、逮捕された町田社長は、「元アフィリエイターで、自らライティングをしていた」、「法人化してアフィリエイト広告の運用を行っていた」とする。実際、あるASPもKMウェブコンサルティングについて、「(アフィリエイターとして)法人登録はあった」とする。また、広告運用について、過去に取引関係にあった販売企業は、「取引先に示したクリーンな広告とは異なる獲得重視のクリエイティブで顧客獲得を行っていたようだ」と指摘する。

 ソウルドアウトについても「担当者によってどの二次請けに手を出すかなどレベル感は異なる。ただ、会社としてどういった二次請け、三次請けの管理を行っているか、統制が効いていないのでは」との声もある。ステラ漢方に対しても「行政の指摘を受けた場合の対応など、違反の可能性を認識していた」と話す関係者がいる。

 府警は今後、広告への関与の度合いについて解明していくとみられるが、こうした関係者の話を総合すると、3社が今回、違反を指摘された広告に深く関与していた可能性がある。

「アフィリエイト広告、稼働半分に」

 逮捕の衝撃は、「アフィリエイトの案件は稼働が半分くらいになっている。それだけのインパクト」(アド運用を行う広告代理店)と話す関係者がいることからも想像に難くない。

 本来、広告の責任は、一義的に広告主である販売者にある。最近でも、ASP経由のアフィリエイト広告で、広告主が景表法上の責任を問われた例がある。アフィリエイト広告の制作に深く関与していたとして、消費者庁がブレインハーツの責任を認め、景表法で処分した例もある。

 ただ、代理店の逮捕は異例だ。背景には、景品表示法と薬機法の違いもある。景表法は、その規制対象が「自己の供給する商品の広告」。表示を主導した「表示主体者」の判断も一義的に広告主が負うケースがほとんどだ。代理店が規制対象になることは皆無といっていい。一方、薬機法は、医薬品的効果を標ぼうした者すべてが規制対象になる〝何人規制〟。広告主だけでなく、代理店も等しく規制対象になりうる。

 これまで代理店が摘発された例は、ほとんどないとみられるが、ウェブ広告の運用が複雑化する中で、広告内容に深く関与するケースも増え、リスクが高まっているとみられる。


上場するソウルドアウトは、ホームページに謝罪文を掲載

大阪府警の薬機法摘発が増加

 府警はステラ漢方について19年11月、情報提供を受けて捜査に着手した。厚生労働省や大阪府薬務課など行政機関に照会。広告の薬機法違反を確認した上で逮捕した。

 逮捕に至るプロセスでは、ステラ漢方に対する過去の行政指導も把握していたもよう。「行政指導を受けていたようだ」(同)と話し、「いきなり逮捕はない」とする。

 ただ、これが事実なら、端緒を得た取締り当局でその結果は大きく変わることになる。過去には、「ガンが治る」と表示した健食を消費者庁が景表法違反で取り締まった例がある。薬機法にも抵触するとみられるが、一方は表示違反による「改善命令」、一方は「逮捕」と落差は大きい。

 警察当局による薬機法違反の摘発も、以前は「ガンが治る」など、藁をもすがる患者の気持ちに付け込む悪質性を判断した事件が多かった。最近では、「高血圧に効く」「身長が伸びる」「脂肪を分解する」など、医薬品的効果の標ぼうを積極的に取り締まる。機能性表示食品の社会的認知が「いわゆる健康食品」の取締りに陰影を落とす。

 従業員の逮捕を受け、ステラ漢方は、「対応を弁護士に一任しており、詳細を確認できていないが申し訳ない」とコメント。今後の事業継続は、「結果を受けて改めて判断する」とする。ソウルドアウトは、「株主、取引先、関係者に深くお詫びする。厳粛に受け止め、法令遵守に向けた社員教育に努める」とのコメントを発表。「結論を受け、処分を含め検討する」としている。

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