イオンのグリーンビーンズ スーパー50店舗分の売上規模へ

 イオンが7月10日に開始した倉庫型ネットスーパーが注目されている。今後のエリア拡大を目指し東京・八王子に2か所目の物流拠点を開設する計画で、スーパー50店舗分の売り上げ規模を目指している。食品宅配を行う事業者からは「配送に力を入れている」(A社)、「3温度帯を扱いながらも送料は安価。投資回収できるのか」(B社)などとみる声が上がっている。

 倉庫型ネットスーパー「グリーンビーンズ」は品ぞろえ5万点まで拡大する。1週間鮮度保障した生鮮野菜や大容量パックのほか、約2000品目の冷凍食品を展開する。重いものやかさばるものなど、店頭にはない品ぞろえで共働きや子育て世帯のまとめ買い需要に対応する。

 店内商品をピッキングする店舗出荷型のネットスーパーは継続し、毎日の買い物を補完する位置づけとなる。店内で調理した惣菜の取り扱いや、店頭受取サービスなどを強みに毎日の買い物需要に対応していく。

 「グリーンビーンズ」は店舗と競合しない考え。5万点の品ぞろえですみ分けを図っていく。大規模な実店舗は都心に少ないことから、「店舗がない空白地をネットで埋めていく」(イオン)考え。
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 倉庫型ネットスーパーの始動にあたっては、英国のテクノロジー企業「OcadoGroupe」と提携した。「日本市場は冷凍やチルドの品ぞろえが多い。賞味期限が短いものをロスなくできるかが課題になりそう」(C社)と指摘する。

 千葉県内の物流拠点「誉田顧客フルフィルメントセンター(誉田CFC)」を開設して配送網を構築した。都内向けには中継地点となるスポークを経由して配達する。配達は自社で直接雇用したドライバーが顧客の自宅に届ける。配達は午前7時から午後11時まで、1時間ごとに指定できる。

 誉田CFCはAIやロボティクスを導入し最適化する。約1000台のロボットが秒速4メートルで移動し、6分間で50個の商品をピッキングする。破損リスクを考慮して、重いものや固いものを先に、常温品、冷蔵品、冷凍品の順番で行うようプログラムした。

 一般的に物流センターは注文1件の作業を数秒で行い、「シビアにやって利益を確保する構造」(C社)だ。「グリーンビーンズ」は4000円以上を購入可能金額とし送料330~550円を徴収するが、「その中で投資コストを回収できるのか注視している」(同)、「物流センターは初期投資が膨大。グリーンビーンズはロボットを導入して、採用を含めた人件費を抑えた。収益を確保しやすい構造にしているようだ」(D社)とする声もある。

 受注から配達までを同一のプラットフォームで行い、全体を最適化する。顧客の注文ごとに配送ルートをAIが計算し、同一エリア内の需要や1人あたりの購入品目などを計算し、効率的な配車を算出する。「トラックを満載にして、1時間で配達が完了できるように配送ルートを組むことができる」(イオン)と説明する。人気の時間帯に配送可能件数を最大にすることで、受注の取りこぼしによる機会損失を防ぐ。

 「生鮮品は受け取ってもらうことがロス削減になる。1時間ごとの配達時間指定で再配達が解消できれば効率化に貢献する」(同)とみる。
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 今夏、東京6区や千葉4市、神奈川・川崎にエリアを拡げる。1年をメドに23区全域へとエリアを拡大する。「コロナ禍で食品宅配に対するハードルが下がった。プレイヤーが増えて市場が拡大することを期待する」(同)という。

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