フィギュア商品や玩具などを取り扱う大網では、国内通販が堅調に推移しており、前期に関してはそれ以上に海外向けの越境ECが大きな伸びを見せた。
昨年末から水際対策が緩和されて訪日客数が増加してきたことで、同社が秋葉原に構える実店舗への外国人観光客も増加。直近3カ月間ではコロナ前の水準を超える規模で来店者数が推移しており、売り上げも大きく拡大した。
それに伴い、海外でのアニメ、フィギュア、ゲームイベントについては、今後も積極的に参加する考えで、今年は中国、台湾、韓国、アメリカで出展、または出展する予定があり、「イベント内の物販で売り上げを確保するというよりも、認知度を高めて通販に呼び込むことを目的としている」(同社)と説明。
現在、同社では国内以上に海外でのブランド認知が高まっており、前期(2023年5月期)は通販事業全体の売上高350億円の内、海外向けが初めて50%超になったという。地域の内訳としては、北米、メキシコ、オーストラリアが大きく、次いで、アジア圏といったシェアの順になっている。
越境ECの販売チャネルとしては、自社通販サイトの外国語版がメインとなるが、中古品に関しては「eBay」など外部のプラットフォームにも出店。集客に当たっては前述のリアルイベントのほか、ウェブ広告も活用している。
海外向け商品も日本と同じ販売価格となっているが、昨年からは為替が円安に大きく振れたことや物価の違いなどもあって、高額商品やまとめ買いの需要を上手く獲得できている。
また、アニメ・フィギュアについては、その商品特性上、コアファンが非常に多く、ファンコミュニティの中で著名なインフルエンサーとなっている存在も少なくない。
中には購入商品を開封する様子を動画で公開して、多くの反響を得ているインフルエンサーもおり、最近では同社からアプローチしてサンプル品を贈呈することもある。
通常、日本では有名人をイメージキャラクターに起用して全国的に統一された内容で宣伝する場合が少なくない。しかし、米国のフィギュア関連市場は、限られたコミュニティを中心に小規模の市場がいくつか点在しているような形となるため、大規模なマスマーケティングを行うよりも、それぞれのコミュニティにいるインフルエンサーに呼びかける方がマッチするケースもある。
過去には国内在住の外国人インフルエンサーが同社の秋葉原店舗に来店している様子を動画で公開したところ、短時間で100万回再生を記録。「単純に海外のインフルエンサーは再生数が多い。その時は当社のリンクも貼ってもらえたので、その内、例え数%でもECに送客できると大きな影響がある」(同)とした。
インフルエンサーマーケティングのポイントは、企業案件として依頼するのではなく、自発的に行ってくれているファンを見つけること。サンプル提供などは行うが、あくまでも金銭のやり取りは行わず、動画の内容なども一切指定しない。「インフルエンサーはファンの中から見つけるのが一番良いと思う。台本もないため、こちらで配信内容をコントロールすることはできないが、やはり、企業案件にすると敬遠される傾向もある」(同社)と分析。10月から始まるステマ規制にも抵触しないよう、ファンによる自発的な盛り上がりを誘引するような内容を意識していく。
個別マーケの精緻化も図る
今後に関しては、まず前年の下期から取り組みはじめているパーソナライズドマーケティングの精緻化がある。注文データや顧客コードの細かな分析を進めた上で、適切な商品をレコメンドする流れを構築していくという。
一定のクリック率があるメルマガなども、今後、パーソナライズドマーケティングを高めていくことで、より高い成果を得ていく狙い。
なお、2024年5月期の通販事業売上高については、今上期での受注状況を踏まえ、前年比10%前後の伸びを予想。380億円前後で着地することを見込んでいる。