楽天グループでは、人気家電製品をセールで販売するイベント「楽天サプライズデー（以下、サプライズデー）」を２０２０年７月から開催している。ロボット掃除機「ルンバ」を販売するアイロボットジャパンでは、同イベントを活用することで、楽天市場店の売り上げを大きく伸ばしている。
楽天のマーケットプレイス事業アカウントイノベーションオフィスマーケティングアプライアンス＆スポーツカテゴリーコンサルティング課の浅貝健人ヴァイスシニアマネージャーは「楽天市場の流通額が大きくなる中で、ナショナルメーカーやグローバルメーカーが『楽天市場を使ったビジネスをしていきたい』というニーズが大きくなってきた。これまでは『お買い物マラソン』や『楽天スーパーセール』といった大型セールで盛り上げてきたが、ブランドを軸にしたイベントが必要だと考えた」と最近の楽天市場を巡る状況を説明する。
そこで、まずは衣料品ブランドや化粧品ブランドなどが中心に参加するセールとして楽天ブランドデーをスタート。ただ、ブランドデーは１社にだけを取り上げることが難しいため、「単一ブランドにフォーカスしたイベントを開催してほしいという要望が家電メーカーから出てきた」（アカウントイノベーションオフィス家電＆スポーツマーケティング戦略課家電カテゴリーグループサプライズデー担当の山下茉理絵氏）ほか、競合となるプラットホームが単一の家電メーカーと組んで大きく打ち出すセールを開催していることもあり、サプライズデーの開催を決めた。
直近では、単一ブランドと組んだサプライズデーを年３回開催。それ以外にも、４、５社が参加する「集合サプライズデー」も開催している。開催期間は２日間だ。サプライズデー実施期間は、販売する商品の価格が、競合となる仮想モールも含めて最安値になるよう設定している。かなりお得な価格ということもあり、１～２ＳＫＵの販売にもかかわらず、大型セール時における同一店舗の売り上げと比較すると、数倍の売り上げになるという。テレビＣＭやユーチューブなど活用し、集客している。
アイロボットは１８年１２月、楽天市場に出店。同社ダイレクトビジネス部の飯田貴代マーケットプレイスマネージャーは「自社サイトは『ルンバ』で検索して来訪する人が大半だが、楽天市場はロボット掃除機を探している人に広くリーチできるので、ネットでの顧客に広がりをもたせるために出店した」と語る。
サプライズデーに参画したのは２２年１２月のこと。「それまでもブランドデーには出品していたが、ロボット掃除機を検討する人が増えていることもあり、単独イベントでも垂直売り上げが期待できるのでないかと考えた」（飯田マーケットプレイスマネージャー）からだ。
２２年１２月のサプライズデーでは、７万９８００円の商品を３７％割引の４万９８００円で販売。「これだけ投資したのは初めてだったが、十分以上の見返りがあった」（同）。ブランドデーなどの大型セール数回分の売り上げとなった。今年８月に開催されたサプライズデーではハイエンドモデルも販売、成果を上げている。
同社デジタルマーケティング部の豊泉伶奈シニアマネージャーは「楽天に限らず、大型セールは『購入意欲はあるが、価格などの面で思いとどまっている』という人がページにたくさんやってくる。楽天の場合、大きな経済圏を保有していることもあり、こうした消費者に対して特典を用意して興味を引くなど、購入意欲を喚起するための打ち手がたくさんあるのが大きい」と話す。
例えば、「エントリーをした上で動画を閲覧するとポイント山分け」といったキャンペーンを実施している。サプライズデーの場合、セール開始日の１週間ほど前から商品ページを公開することが多い。
そこで、ページ内に「商品の使い方」を説明した動画を設置、閲覧すればポイントが得られるといったインセンティブを提示する。実際にもらえるポイントは１ポイントほどだが、閲覧者は多い。アイロボットでは実演販売士を起用した動画を作成。動画を閲覧したユーザーのコンバージョン率が高かったこともあり、豊泉シニアマネージャーは「楽天のセールは企画しがいがある」と手応えを口にする。
今後のサプライズデー活用について、飯田マーケットプレイスマネージャーは「インパクトが大きい企画となるので、ユーザーの需要にあわせる形で効果的な時期に開催していきたい」とする。