アマゾンジャパンは7月23日から、処方薬のネット販売を開始した。アマゾンのアプリ上で顧客が指定した薬局の薬剤師がビデオ通話で服薬指導を行った上で処方薬を当該薬局が顧客宅まで配送する。開始時点で対応する薬局は2500店舗。処方薬購入に必要な薬剤師による服薬指導をオンラインで行い、ネット販売を可能にすることで花粉症などが原因のアレルギー性鼻炎等で定期的にお薬の処方を受けている人や高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病やアレルギー性皮膚炎、喘息といった慢性疾患で服用薬の変更が少ない人、小さな子供を持つ人など薬局での処方薬購入までの待ち時間や手間を避けたい人のニーズを見込む。
薬局から直接顧客へ配送
アマゾンが開始した「Amazonファーマシー」は同社自身が販売主となる処方薬販売サービスではなく、同サービスを通じて販売した処方薬分の手数料を薬局から徴収する薬局向け処方薬販売支援サービスとなる。利用者は電子処方せんに対応の医療機関やメドレーのクラウド診療システム「CLINICS(クリニクス)」導入の医療機関でオンライン診療を受け、電子処方せんを取得の上でアマゾンが配信するスマホ用通販アプリ「Amazonショッピングアプリ」上で「ファーマシー」と検索するなどして同サービスの専用ページから電子処方せんの処方内容(控え)または引換番号の写真を撮影してアップロード後、表示される登録住所周辺の薬局を選択して当該薬局所属の薬剤師が行うオンライン服薬指導の日時を予約。当該日時になったらビデオ通話で服薬指導を受けた後に処方薬の注文内容を確認後、決済して薬局がメール便や宅配便などを使って顧客宅など指定の場所に配送する。
商品を発送する薬局と顧客宅までの距離や利用する宅配便によって異なるが、例えば都内の顧客へ周辺の薬局が配送する場合は概ね500~600円程度の配送料を徴収する。顧客は薬局に来店して受け取ることもでき、その場合は配送料は発生しない。
ウエルシアら大手薬局が参加
サービス開始時点で連携する薬局はアインホールディングス、ウエルシアホールディングス、クオールホールディングス、新生堂薬局、中部薬品、トモズ、ファーマみらい、薬樹、ユニスマイルが展開する41都道府県の薬局で約2500店。なお、配送は宅配便を使用するため全国に対応している。
同日行った記者会見に登壇した前田宏消費財事業本部統括事業本部長は「(薬局が)参加しやすい料金体系(手数料のみ)で初期費用や月額利用料は徴収しない」とし、同サービスに参加する薬局の新規獲得を進めていく考え。
米国と日本のサービスに違い
米アマゾンでは2020年11月から処方薬のオンライン販売「Amazonファーマシー」の展開をすでに始めており、日本でも同サービスの開始を検討してきたようだ。とはいえ、日本と米国とでは違いも多い。米国ではアマゾン自身が薬局を運営しており、販売から配送まで他の商品と同様に同社が一貫して担う。一方で日本では薬局こそが販売主であり、アマゾンは仕組みを提供して販売を支援する役割。商品の販売はもちろん、配送も薬局任せだ。そのため、米アマゾンでは有料会員「Amazonプライム会員」は他の商品を購入する際と同様、処方薬に関しても素早く配送し、もちろん送料無料だが日本ではそうではない。
さらに米アマゾンでは利便性に磨きをかけるべく、専用倉庫を設置して最短で受注当日に配送したり、昨年からは一部の地域で「Amazonファーマシー」の配送にドローンを活用して即配する取り組みなども始めているようだ。有料会員向けに月額5ドルで高血圧の人の向けの薬を含む対象の医薬品を購入できるサブスクリプションサービス
「RzPass」の提供なども開始している。
日本の「Amazonファーマシー」が今後、どう展開していくかは不明だが、現行の薬局の販売支援サービスと米社のような自社のよる処方薬販売サービスでは市場や消費者に与える影響度も大きく変わってきそう。その切り替えの有無、またそのタイミングなども注視しておく必要がありそうだ。