動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を展開するByteDanceは7月27日、2025年6月から開始したTikTokのEC機能「TikTokShop(ティックトックショップ)」の利用者数が25年7月末時点から26年6月までの1年間で30倍以上に増えたと発表した。利用者数の実数は明らかにしていない。ファッション商材や化粧品、健康食品などの売れ筋となり、利用者を伸ばしているという。TikTokShopを活用して商品を販売する事業者であるセラー数の伸びも順調で、日本のマーケットプレイスや他国で展開するTikTokShop伸び率と比較しても順調だとしている。
欧米より成長率高い水準
邱開洲TikTokShopJapanジェネラルマネージャーは「日本のTikTokShopの成長は日本の他のECマーケットプレイスと比較してもスピードは非常に速い。欧米などと比べても(成長力は)高い水準にある」とした上で、ファッションジャンルではアクセサリーやジュエリー、レディースのスーツ・セットアップなどが目立つとする。化粧品ではメイクアップやフレグランス、また健康食品やスマート・ウェラブルデバイス、玩具やスポーツ・アウトドア用品などが特に売れ筋となっているとした。
また、GMV(流通総額)の7割以上はショート動画やライブ配信などのコンテンツ経由で生まれているとし、内訳はショート動画が4割、ライブ配信が6割であることを明らかにした。ライブ配信の割合が他国に比べて高いことが日本ならではの特徴とし、「ライブ配信は運営負荷の高さから、サービス開始直後に比率が高まった後はいったんは低下するだろうと考えていた」(邱ジェネラルマネージャー)とするが、日本では出店事業者とコンテンツ制作者によるコンテンツ供給が想定以上のスピードで進んだことなどで他国よりもライブ配信経由のGMVが増えているという。また、「売上規模が大きいセラーほど動画経由の売り上げの9割超が、自社で投稿した動画ではなく、インフルエンサーなどのクリエイターが制作したアフィリエイト動画から生まれている。GMVが大きくなるほど自社だけではコンテンツの供給が追い付かない」(同)とし、クリエイターとの協業が成功のカギになっているとした。
GMVが40倍の事業者も
なお、TikTokShopの成功例として日本の事業者の取り組みを紹介。クロックス・ジャパンの取り組みでは、チャームでカスタマイズする店舗体験を朝と夜に時間を固定した自社ライブを毎月30回超、計95時間超行い、GMVを初月比で40倍以上、注文SKU数を18倍に伸ばした。
また、生活雑貨を販売するライズクリエイションの取り組みではキチン用品や収納アイテムなど暮らしの中での使い方を想像しやすい動画と相性の良い商品の紹介を行うショート動画を継続的に投稿しつつ、TikTokが開催した26年6月実施のセール「トクトク大感謝祭」以降はクリエイターとの連携を強化してクリエイター経由の投稿なども奏功し、26年5月と比べて同年6月のGMVが2.8倍まで拡大したことなどを明らかにした。
スタート当初は一部の有店舗小売業や中小規模のEC専業事業者らが先行してTikTokShopを活用している印象だったものの、ここにきて通販大手も続々とTikTokShopの開始に踏み切っている。例えばテレビ通販大手のQVCジャパンでは26年4月からテスト運用を開始し、6月8日からの本格展開にあわせて3日間合計で40時間を超えるライブ配信を行い、美顔器や運動器具、化粧品などを販売し、一定の成果を上げている。
今後、様々な大手通販事業者がTikTokShopへ参戦していくことが予想されるが、ショート動画制作の手間やライブ配信を担う担当者不足など安定的に運用しつつ、成果を上げるためには少なくない労力も発生する。EC事業者は投資対効果に加えて、TikTokShopの顧客の分母となるTikTok自体の利用者数の伸びなどを見ながら、TikTokShopとの付き合い方や運用の方向性を見極めていく必要がありそうだ。
邱開洲ゼネラルマネージャーに聞くTikTokShop1年目の状況は?“ストーリー性”が成果アップのカギに「TikTokShop」を統括する邱開洲ゼネラルマネージャーが現状と今後について語った。(2026年7月27日開催の記者説明会での本紙記者を含む報道陣との一問一答から要約・抜粋)Q:TikTokの国内月間アクティブユーザー数は4950万人とのことですが、その中でTikTokShopを利用者は。A:具体的な人数や割合は公開していません。ただ、商品の発見から購買までアプリ内で完結するシームレスな体験が日本のユーザーに広く受け入れられて、結果として1年たった現在(=2026年6月)の利用者数は2025年(7月)と比較して、30倍になっています。Q:現状、TikTokShopの利用者の6割を35歳以上(※4割は18〜34歳)が占めているとのことですが理由は。A:TikTok自体のコンテンツが拡充していく中でユーザー層が多様化しています。その中でTikTokShopでの取扱商品も多様化しており、利用者層も拡大しています。Q:開始してから1年たった現状の利用数の伸びをどう見ていますか。想定通りに伸びていないとの見方もありますが。A:セラー数の伸びだけを追っているわけではありません。ユーザーなどもバランスよく伸びないとエコシステム自体が拡大していきません。こうしたバランスの中でいえばセラー数は順調に拡大できていると思います。日本の既存のマーケットプレイスと比較しても1年目のセラー数の伸びは著しく早いですし、欧米で展開するTikTokShopと比べてもかなり早い方です。Q:コンテンツ起点のGMVが7割で、そのうち6割がライブ配信とのことですが想定通りですか。A:コンテンツ起点のGMVが7割というのは想定していましたが、その中のライブ配信の比率が開始から1年たった今でも減っておらず、これほど高いままというのは想定していませんでした。ライブ配信は爆発力はありますが、毎日など定期的に行うとなるとコンテンツの供給がなかなか追い付かないわけです。担当者の確保やライブ配信を行うための教育をする必要があるためです。はじめはライブ配信が増えますが一旦、減って、それからまた増えていくのだろうと考えていましたが、日本のセラーやクリエイターの皆様は努力家でライブ配信が減らずにここまできているようです。Q:日本ならではの傾向は。A:日本のユーザーは商品の詳細やレビューを慎重に確認し、納得してから購入する傾向が他の国よりも強いです。そのため、メリットだけでなくデメリットも伝える誠実なレビューやライブ配信で細かな質問に答えているセラーも多いことが特徴です。Q:TikTokShopShopで成功している事業者、クリエイターの共通点は。A:単に商品を紹介するだけではなく、商品を開発した背景や実際の使用感などストーリー性のあるコンテンツを発信していることです。また、ライブ配信では視聴者の質間にリアルタイムで細かな質問に答えています。これが信頼につながり、購買意欲を高めることになります。これらが(成功している事業者、クリエイターに)共通している点です。Q:TikTokShopで成果を上げるためのコツは。A:従来のECプラットフォームと同じ感覚で商品の画像やスペックを並べるだけでは成功しません。クリエイターを活用して様々な視点から商品の特徴や魅力を伝えることが大切です。ライブ配信では定期的に行うことが重要だ。月1回ではあくまでイベントになってしまいます。ユーザーからの質問に対応したり、使用方法を教えるなどのライブ配信を定期的に行うことで商品を理解して納得して頂くことが購入につながると思います。Q:現状の課題は。A:セラーの皆様に魅力的な商品をより多く出品頂けるような環境作りを進めていきたいです。TikTokShopを始めるには(受注・在庫管理の)システムなどを独自に開発するなど個別対応が必要になるケースもあるため、今後はより多くの事業者が円滑に参入できるようシステム連携などを進めていきたいです。また、ユーザーが決済やセキュリティーの強化など安心して購入できる環境整備にも取り組んでいきたいです。