楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」でユーザーからの問い合わせた質問に“店長”に扮したAIアバターが音声やチャットで回答したり、おすすめの商品を提案する機能「AI店長」を実装する。8月5日から3日間、横浜市内で開催したイベント「RakutenAIOptimism」での講演で三木谷浩史会長兼社長が発表したもの。「楽天市場」では2025年12月からユーザー向けに楽天市場内の商品を横断してユーザーの商品選びを支援するAIサービス「RakutenAI」を導入しているが、「AI店長」は楽天市場の出店者向けの販売促進機能で、各出店者それぞれの店舗で取り扱う商品やコンテンツに関する情報などを学習したAIが“店長”として接客する。「もちろん、人が接客した方がよいわけだが、人の処理能力には限界がある。各店舗の商品などの専門知識を持ったAI店長が24時間365日、より広範なユーザーからのお問い合わせや質問への対応、商品購入のお手伝いなどを行えるようになる」(三木谷氏)とする。本実装の時期は明らかにしていないが、2026年10~12月中をめどにPoC(概念実証)を開始したい考えだ。

利用には一定量のデータが必要
「AI店長」は楽天市場の出店者向けのAI販促支援ツールで導入を希望する出店者が取り扱う商品に関する情報や各店舗のコンテンツページの内容などを学習したAIが当該店舗の店長としてアバターでユーザーからの質問に応対する。ユーザーとの会話からニーズをくみ取り、買い合わせや目玉商品など店舗側の戦略に合わせて商品を提案して拡販につなげる。ユーザーは音声やチャット(テキスト)で自由に「AI店長」に質問ができ、AI側も音声やテキストで返答する。自由質問のほか、「ハイキングを始めようと思っているけど何を着たらいい?」など、あらかじめ各店舗でよくある質問も記載。当該質問を選んだ場合、そこから用途を絞り込むような質問を繰り返して目的の商品を見つけられるようにする。
「AI店長」へ誘導する導線は「楽天市場」の各店舗のトップページや商品ページ内などに設置する予定でユーザーが当該リンクをタップするとAI店長に質問できるようになる。「AI店長」の導入は各出店者の任意となるが利用料は徴収しない考え。ただ、AIが十分に機能するには商品情報やコンテンツの量が一定程度、必要になるようで、当該データ量に満たない出店者は導入できないよう。現状の試算では楽天市場の出店者の半数ほどが当該基準に達しているという。なお、現状では「AI店長」は「楽天市場」のアプリのみの実装を予定しているが、ブラウザでの導入なども検討していくようだ。現時点では「AI店長」の本実装時期は明らかにしていないが、同社によると今第4四半期(10~12月)中にPoCを開始し、27年中には本格実装する考えのようだ。
様々な新機能を続々実装へ
「AI店長」のほかにも、出店者向けに様々な新機能やサービスを26年から27年にかけて実装していく。
「RakutenAIOptimism」と同時開催した出店者向けイベント「楽天市場EXPO2026」で行われた今後の楽天市場の方針を説明する戦略共有会に登壇した同社副社長執行役員コマース&マーケティングカンパニープレジデントの松村亮氏が明らかにした。
注目すべき施策としてはまず、「楽天市場」で商品を購入したユーザーに付与する独自ポイント「楽天ポイント」について、例えば直近3カ月以内に「楽天市場」での購入金額が10万円以上で購入件数が5件以上の場合、「楽天スーパーセール」や「お買い物マラソン」「ご愛顧感謝デー」「ワンダフルデー」といったキャンペーンやセールの際のポイント付与率を通常の付与率に加え1~2倍に、20万円かつ10件では2~3倍に、30万円かつ15件では3~5倍とするなどユーザーの購買状況に応じてポイント付与率を高めるポイント還元の強化による購入促進および高ロイヤリティ顧客育成施策を27年上期(1~6月)中にも実施する計画。「『楽天市場』内で優良なお客様をより囲い込んで、そのお客様にさらに買い物をしていただきたい。そうしたお客様の数を増やしていきたい。そのためにはただポイント付与を増やすよりも買い続けてもらえばもらうほどよりお得になっていくような仕組みを入れるべき」(松村氏)する。
また、「楽天市場」の優良顧客でもある楽天モバイルの契約者に訴求できる新たな取り組みとして10月から、楽天モバイル専用の無料通話・メッセージアプリ「RakutenLink」で楽天市場の出店者が公式アカウントを開設できるようにする。これにより、任意のタイミングで店舗からフォロワーにメッセージを直接配信できるようにして、「楽天モバイルのユーザーと直接、コミュニケーションが取れ、楽天市場の店舗に誘導できるようなる」(松村氏)という。なお、メッセージによってユーザーが当該店舗の商品を購入した場合、売り上げの2~4%を手数料として徴収するという。
加えて、出店者向けに提供する店舗運営システム「楽天RMS」内の店舗構築・ページ制作機能「R-Storefront」の商品一括編集機能について、現状は利用料金として月額1万円を徴収しているが、27年1月からは無料とする。「無料化でより多くの店舗さんが手軽に利用可能にする」(同)とする。
このほか、「楽天市場」の商品を外部のサイトなどで紹介してもらう成果報酬型広告を強化すべく、10~12月中に成果報酬の料率設定について商品別で最大70%まで設定可能にできるようにする。また、25年に刷新後、流通額が大きく伸びているという「定期購入」について、6月に導入したクーポンの付与機能に加えて、27年以降は定期購入用の買い物カゴの導入などを進めるという。
4月から開始したソーシャルギフトサービスについては26年下期(7~12月)中にはソーシャルギフト専用の商品画像を設定できるようにする。27年上期(1~6月)中には注文者が好きな画像やテキストの入力を可能にしてメッセージを送ることができるようにするほか、商品への名入れや裾上げなどユーザーがオプションサービスを使う際に、それぞれの価格やそれによる配送予定日の追加日数などの項目を買い物カゴ上に表示して一目で分かるように表示する機能などの新機能を追加する。
広告についてはAIを活用して機能強化を進める。6月からターゲティングディスプレイ広告(TDA)で商品ページを入力するだけで自動でバナーとキャッチコピーを生成する機能を導入、8月から検索連動型広告はAIによるキーワード運用の自動化を開始する。またTDAは外部メディアへの展開を強化。ファッションビューティー商品はすでにInstagramやFacebook上で展開中だが、8月17日からはスポーツ・インテリア商品については広告配信サービスを行う「クリテオ」を経由して様々なウェブサイトで、ゴルフ・カー用品は10~12月中にはニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」内での広告を配信を始める。10月には動画広告を出稿できるように広告フォーマットの拡充を行うという。
また、楽天が出店者向けに行う物流アウトソーシングサービス「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」では8月から60~140サイズの冷凍商品の出荷・配送の取り扱いを開始するほか、10月からは180~260サイズの大型商品の出荷・配送を始めるという。
出店料値上げやマーケ費増にも言及
戦略共有会では新たな機能や販促施策の実装計画に言及した一方で「楽天市場という売り場や機能をもっともっとAIを活用して進化をさせていかなければ生き残っていけないという危機感を持っている。そのためにも今後も継続的に大きな投資を行っていく。そうした背景の中で出店料についても一部改訂を検討させて頂きたい」(松村氏)として、27年1~3月をめどに出店料(月額料金)の値上げに踏み切る方針を示した。なお、具体的な値上げ幅については明らかにしていない。
また、「買いまわりイベントの継続的な進化を通じたさらなる流通拡大と顧客基盤の強化に向けてより投資をしていく。その中でイベント期間中における一部マーケティング活動費用について店舗様の経済的な負担について検討させて頂きたい」(松村氏)とし、28年ころをめどに店舗負担を増やす方針であることも言及した。機能強化の効果と店舗の負担増の行方が今後、注視されそうだ。