中国のネット販売市場が拡大を遂げる一方で、楽天やヤフー、スタートトゥデイといった日本の大手ネット販売企業が撤退や戦略の見直しを行うなど、中国EC市場の攻略が容易ではないことが明らかになってきた。その中国のモバイル事情について、このほど興味深い調査が発表された。中国のモバイルユーザーの利用動向を調べたものだが、日本と同様にスマートフォン利用者の数が急増しており、スマホ経由でモノを買うという動きも広がっているようだ。
モバイル利用者の73%がスマホ
調査資料は「中国市場におけるモバイルユーザ利用動向調査」というもので、2012年5月末にディーツーコミュニケーションズ(D2C)の中国子会社であるディーアールシーが中国の研究機関と共同でスマホとフィーチャーフォンのモバイル利用状況や接触状況を調べた。
それによると、中国のモバイルインターネットユーザーの中でスマホの普及率が高く、モバイル端末利用者の73.1%を占めるという。年代別のスマホユーザーの構成比では、40歳以上はやや低くなるが、40歳未満では7割程度の利用割合となっている(表①)。
エリア別に見ると、北京、上海、広州といった一級都市(特別行政区)以外に、手頃な1000元(約1万2500円)台の端末の普及によって、二級(その他の経済特別区、県庁所在地)や三級(沿岸開発都市)の都市が今後のスマホにおける成長市場と考えられるとしている。
スマホの購入動機は、「パソコンがなくても随時ネットを使いたい」が68.0%と最も多く、次いで「フィーチャフォンよりネットが快適に利用できる」(47.7%)、「フィーチャーフォンより音楽、カメラが使いやすい」(45.5%)の順で、スマホの機能面がフィーチャーフォンよりも高く評価されているようだ。
購入額はフィーチャーフォンの2倍
スマホユーザーのうち約半数は毎日1時間以上、インターネットかアプリを使用。そして平均1日150分間(ブラウザ使用時間85分間、アプリ使用時間65分間)、スマホを使用しているという。利用シーンをフィーチャーフォンユーザーと比較すると、スマホにおいては場所や時間に限定されずに使っているとみられる。
スマホアプリのダウンロード状況を調べたところ、1カ月間にダウンロードするアプリの数は平均9.6個。一方、有料アプリの平均ダウンロード数は1.9個となった。また、アプリ利用者の44.6%が有料アプリをダウンロードしていたとする。
スマホユーザーが最近3カ月にネットショッピンで利用した平均金額は1389元(約1万7300円)で、フィーチャーフォンユーザーの約2倍の金額となった(表②)。ネットショッピングの利用頻度もスマホの場合は高い傾向を示しており、43.4%のユーザーは週に1回以上、ネットショッピングを利用している(表③)。
「EC」が利用サイトの上位に
メディアの接触状況についても調査しており、ユーザーがモバイル端末に接触する時間は1日平均189分間。PCに次いで2番目に長い時間となった。特に19歳以下の年代では、PCを越えて最も接触時間が長い媒体となった。
スマホユーザーでは、情報源として「モバイルサイトかBBS」がPCの次に2番目の情報取得媒体となり、テレビよりも情報取得に用いられているという。
さらにモバイルでより利用するサイトは、スマホとフィーチャーフォンどちらも「検索サイト」がトップで、「ポータルサイト」が2位という順番。そしてスマホでは中国版のツイッター「WEIBO」が3位で「EC」が4位。フィーチャーフォンでは「EC」3位、「WEIBO」4位となっている。スマホとフィーチャーフォンで、利用サイトでは大きな違いはないとみられる(表④)。
また、モバイル広告の接触状況では、「モバイル広告を知らない」を除いたすべての項目で、スマホユーザーのほうがフィーチャーフォンよりも高い数値を示した。そこで調査資料では「今後、スマートフォン広告が増加していくと、よりモバイル広告の認知や活用が進むことが予測される」としている。
以上のように調査結果を見ていくと、中国でもスマホの普及が進んでおり、3カ月で1万7000円の買い物をスマホ経由で行っているとのことで、モバイル通販に対する可能性の一端をうかがわせる。ECで日系企業による成功事例が見えない状況だが、調査からも、そのポテンシャルの高さはうかがい知れる。あとはどう攻略するか。日本のEC各社の奮戦を期待したい。