【遺伝子検査サービス】ネットインフラ活用で市場広がる、情報提供に課題も

送られてきたDNAを解析装置で自動解析する(DeNA)

口腔内から採取した細胞などから遺伝子タイプを分類し、生活習慣病などの将来リスクを検査することができるという「遺伝子検査」が注目され始めている。

あらかじめ自分が抱えている疾病のリスクを知ることができれば、その予防につながるような食生活や運動療法の実施など生活習慣の改善にも取り組める。高齢社会が到来して国民の健康志向が高まる中、遺伝子検査を使った商品・サービスの提供は健康産業の成長を後押しする新技術として注目され、活用する企業も増えている。比較的、手頃な価格や簡易なキットで検査を行えるものが出てきたことも魅力。最近では、ヤフーやDeNAなどネット大手も参入している。今後、ネットインフラを活用して、さらに遺伝子検査を介した商品・サービスの提供は広がってくるのは間違いない。

だが、その一方で、検査結果の信憑性や情報提供のあり方に課題を残す面もある。遺伝子検査の活用で先行する企業の取り組みを見ていく。

DeNAはカウンセリングなど充実

ディー・エヌ・エー(DeNA)は8月12日から、消費者向け遺伝子検査サービス「マイコード」を開始した。唾液から遺伝子情報を読み取り、がんや糖尿病、高血圧、心臓疾患といった生活習慣病などを発症するリスクを検査するというもの。検査キットは「マイコード」専用サイトのほか、アマゾンでも販売する。サービス開始に先立ち、7月30日から予約を受け付けている。

遺伝子解析に関する1400報以上の研究論文から選んだ、400報以上の論文をベースとして、検査を受けた人の遺伝子情報が、統計学的にどのような特徴を持つのかを割り出す仕組み。胃がん・肺がん・食道がんなど40種類のがん、糖尿病・高血圧・心臓疾患など25種類の生活習慣病、その他疾病リスクのほか、肥満や肌質といった体質関連も含めて、最大283項目に関する情報を提供する。

検査には、全ての検査項目を網羅した「オールインワン280+」(価格は税別2万9800円)、がん・生活習慣病・体質から100項目を選んだ「ヘルスケア100+」(同1万9800円)、体質に関する35項目を選んだ「カラダ30+」(同9800円)の3コース。

専用ウェブサイトから検査を申し込むと、検査キットが申込者の自宅へ送られる。申込者は同意書にサインし、唾液を入れて返送。唾液は検査ラボで分析され、検査結果は個人の専用ページから確認できる。検査内容の追加・更新や健康情報の提供を行うほか、オプションで認定遺伝カウンセラーや臨床心理士、医師による健康支援プログラム・カウンセリングも用意。こうした支援体制の充実を図るためにサー
ビス開始は当初予定からやや遅れたという。

検査結果については、「あなたの遺伝子型の肝臓がんの発症のしやすさは、日本人平均の1.46倍」といった形式で、疾患別にリスクをレポート。解析した遺伝子の科学的根拠を説明するほか、疾患を予防するためのアドバイスやレシピなども提供する。

ハンチントン病や筋ジストロフィーといった「遺伝性疾患」や大腸がんや乳がんなどの「家族性腫瘍」に関する情報は、遺伝的な要因で病気になる可能性が高いことから、医療行為への該当を避けるために情報を提供しない。 「薬剤体質」や「能力」、「祖先ルーツ」については、サービススタート時には対象外とする。

南場氏「サービスの質に自信」

7月9日に開催された記者会見で、DeNAの南場智子取締役ファウンダーは「科学的根拠や信頼度、疾患別情報の充実、カウンセリング体制の充実など、現時点で可能なものとしてはもっともクオリティーの高いサービス実現にメドがついた」と自信を見せた。4月に設立したDeNAライフサイエンス(LS)の深澤優壽社長は「年齢や性別などでターゲットは絞っておらず、幅広い層に使ってもらいたい」と説明。利用人数の目標などは特に設けていないという。

会見後には、共同研究のパートナーとなる、東京大学医科学研究所内に設けた検査ラボを報道陣に公開。送られてきたDNAを解析装置で自動化して解析する仕組みや、結果を画像で示したデモ画面などを紹介した。

検査結果による食品や健康食品の販売といったレコメンドや、個人にあわせた健康食品や医薬品の開発などは、現段階では考えていないというが、同社では今後もヘルスケア関連のサービスを提供したい考えを明らかにしており、物販につながる展開も考えられそう。東大
医科研とのコラボや自社でラボを構えていることが優位に働く可能性もある。「マイコード」利用者がどこまで広がるかによって、今後の展開も変わりそうだ。

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