先発3社が市場拡大をけん引【フラッシュセールサイト】

高級感が特徴的なギルトのサイト

ファッションブランドなどが抱える余剰在庫を期間限定、数量限定で割引販売するフラッシュセールサイトが日本に上陸して約6年が経過し、一定の市場創出に成功している。大規模なプロモーションを展開して200万人の会員を獲得するサイトも出てくるなど、既存の通販企業にとっても無視できない存在になってきている。先発3社を中心にフラッシュセールサイトの現状や市場の変化を見ていく。

フラッシュセールサイトは元々、欧米で注目された事業モデルだ。販売期間を1週間などに限定し、特定の会員だけに割引価格で販売することで、高級ブランドであってもイメージを傷つけずに余剰在庫を処分できる販売チャネルとして成長してきた。
消費者にとって、従来は憧れのブランドを安く手にできる売り場は郊外のアウトレットモールやリユースショップの中古品などに限られていたが、ウェブ上で手軽に注文できるようになり、しかも期間限定のフラッシュセールという販売手法が消費者同士の競争意識を生むことで、購買までの瞬発力を高めることに成功した。
日本では2009 年3月に米ギルト・グループの日本法人が「ギルト」を開設したのに続き、09 年8月にGLS ジャパンが「グラムールセールス」を、10 年3月にB4F が「ブランズ・フォー・フレンズ」(※14 年11 月にサイト名を「ミレポルテ」に変更)をオープン。以来、3社が中心となって市場を開拓してきた。
ギルトの上陸当初こそ、“フラッシュセール=高級ファッション”の打ち出しが強かったものの、GLS やB4Fの参入もあって、今では衣料品といっても国内の人気ブランドやセレクトショップ、カジュアル衣料まで幅広く、また、各社とも女性会員が多いことからコスメや子供服、ホームグッズなどに領域を拡大している。

ただ、ファッション商材は他のカテゴリーに比べてシーズン性が高くフラッシュセールとの相性が良いため、各社のカテゴリー別売上高構成比は、ギルトがウィメンズ(ファッション)で過半を、GLS はアパレルが40%でバッグ・シューズ・アクセサリーが30%、B4F も女性向けのファッションアイテムが50%以上を占めるなど、引き続き主力分野であることに変わりはないようだ。

3社合計で150 億円以上に
参入当初に比べ、取引先ブランドにフラッシュセールの事業モデルへの理解が深まっていることもあって各社は順調に業績を伸ばしているようで、具体的な数字は公表していないものの、3社合計の売上高は150 ~ 170 億円程度に拡大していると推定される。
足もとの事業環境についても、「取引先ブランドの在庫は減っていないし、十分にポテンシャルがある」(GLS)、「海外の市場規模を考えれば、いまの10 倍は伸びる」(B4F)など前向きだ。
一方、常設のアウトレットサイトに加え、大手アパレルが自社通販サイト内にアウトレット品を販売するコーナーを設けるケースが増えているが、新しいブランドや好みのブランドを発見する“わくわく感”は、ブランドが運営するサイトでは味わえないフラッシュセールならではの特徴と言えそうだ。
また、昨今はブランド側も生産量自体を絞って在庫を極力発生させないように努めているものの、「リアルのアウトレットモールや自社通販サイトで展開するアウトレットコーナー、フラッシュセールサイトといった各売り場に出せるくらいの在庫は残っている」と、ある大手アパレルのEC責任者は明かす。
実際、大手アパレルでは、期初の時点でフラッシュセールに出品する複数回分のセールスケジュールを決めたり、各フラッシュセールサイトによって客層と売れる商品に違いがあることから、サイトごとに投入するブランドを変える企業も多いほか、常設のアウトレットサイトに商品を投入しつつ、瞬発力の高いフラッシュセールを併用する企業もある。
最近では、フラッシュセールを積極的に活用することで生産サイクルを早め、在庫および財務体質の健全化と、店頭の鮮度保持を図る動きも出ている。また、単に在庫を素早く現金化するためだけでなく、知名度がそれほど高くないブランドにとっては、200 万人近い会員を抱えるフラッシュセールサイトに商品を投入することで認知拡大やネットに慣れた消費者にアプローチできることも魅力のようだ。
テレビCMで認知拡大

フラッシュセール各社はサイト開設から5~6年が経ち、これまではウェブ上の施策を中心に顧客を開拓してきたが、ネットでは獲得できない層などにアプローチする目的で14 年11 ~ 12月に相次いでテレビCM を放映した。テレビCM 以外にも、ギルトは交通広告と「LINE」の公式アカウントを開設したほか、GLS は15 年3月にも新しい内容でテレビCM と交通広告を打つなど大規模なプロモーションを展開。マス広告の効果もあって、直近の会員数はギルトとGLSで200 万人を突破したほか、B4F もこれに近い会員を獲得しているとみられる。
取り扱いカテゴリーの拡充や会員数の増加に伴い、各社はセール開催の頻度を高めており、その数は月間300 セール以上になっている。ひとつのブランドで商品数が多い場合などは複数のセールに分けることがある一方、商品数が少ないブランドなどは複数ブランドでひとつのセールを実施。買い回りしたくなる組み合わせで商品を提案するセレクトショップのような取り組みも行う。
また、ギルトでは上位顧客やモバイル会員向けに限定セールを開催したり、通常よりも早く買い物ができる先行入場の特典を付けるなどして顧客ロイヤリティーを高める工夫をしているのに加え、体験型クーポンを販売する「ギルト・シティ」については競合他社との差別化を図るためにも強化している。これまでは都内で利用する体験型クーポンがほとんどだったが、最近では全国展開するスパなどの提案も始めた。
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