第16回となる本誌によるネット販売企業の売上高調査の結果では、ネット販売(BtoCの物販)実施企業上位300社の合計売上額は約3兆2522億円で、前年の2兆9380億円から10.7%拡大した。仮想モールの隆盛をはじめオムニチャネル戦略やウェブマーケティングの推進により、ますますの成長が続いているネット販売市場。昨年は「越境EC」や「即時配送」といった新たなキーワードも出現しており、顧客獲得を巡る競争環境はより一層厳しさを増している。本誌ではEC市場をけん引する売上上位300社について2015年度実績と分野別の市場動向を探った。
アマゾンが首位、出店者支援策と有料会員囲い込み策を推進
【商材別EC市場分析総合・日用品】
今回の調査でも前回と同様、トップはアマゾンジャパン。2015年も引き続き、仮想モール機能「Amazonマーケットプレイス」の強化に注力するため、出店者向けの支援策を矢継ぎ早に進めている。2月からこれまで直販商品に限定していた独自ポイント「Amazonポイント」の付与権限を出店者にも開放し、出店者が自由に自社商品にポイントを付けられるようにしたほか、3月には従来まで最大で“30日先”までだった予約販売を“365日先”まで可能としたり、6月からは出店者が画像などを用いて訴求力の高い商品詳細ページを作成できる「商品紹介コンテンツ」の導入、10月には出店者向けの短期資金融資サービス「Amazonレンディング」で借換型ローンの提供など出店者の販促支援を強化してきた。
一方で直販も強化しており、6月に日用品の特売ページ「ヤスイイね」や工事付きリフォーム商品を販売する「リフォームストア」などの専門ページを新設したほか、7月に大規模タイムセール「プライムデー」、毎日実施中のタイムセールの商品を通常スタートより30分早く購入できる「先行タイムセール」、9月には映画やテレビ番組などの見放題サービス「プライム・ビデオ」、食品や日用品をバラ売りする「Amazonパントリー」、11月には楽曲の聴き放題サービス「プライムミュージック」、受注から1時間以内など即時に配達する「プライムナウ」の開始など有料会員「Amazonプライム会員」向けの特典として新機軸をスタートさせており、売上拡大を進めている。また、5月からはネット販売企業向けにアマゾン顧客の登録情報を使って、当該サイトへのログイン・決済が可能となる「Amazonログイン&ペイメント」をスタートさせ、新たな収益源の育成も始めている。
2016年に入ってからも物流業務代行サービスで大型品や危険物の取り扱いや予約販売対応、ワイン用の定温管理対応なども始めたり、7月からは出店者が自社発送する商品でも「Amazonプライム」の対象商品として販売することができる「マケプレプライム」の提供などもスタートさせており、出店者の販売支援策を進め、さらなる流通総額拡大を図っている。
カタログ通販系では千趣会がトップ
2位にランクインした千趣会は消費増税後の反動減の長期化や、テレビCM削減などによる新規会員数とアクティブ会員数の減少も響き、売上を落とした。スマホ経由の訪問比率は56.6%に高まったものの、スマホの売り上げ構成比はEC全体の40.3%にとどまるなど、スマホシフトへの対応も遅れたようだ。4位のニッセンは全体的な販売不振で売上高を落としたもののスマートフォン経由の売上構成比が33.1%(前期から5ポイント増加)となるなど、ネット移行がさらに進んでいる。なお、今後のキーポイントとなりそうな2015年9月からスタートした、注文した商品のセブン―イレブン受け取りは利用率が17~22%で、当初想定を上回っているようだ。
躍進する日用品EC各社にも注目
日用品ECを展開する6位のアスクルの「LOHACO(ロハコ)」と7位の爽快ドラッグも高い伸長率で売上高を伸ばしており、注目される。「ロハコ」は親会社のヤフーの仮想モールのセールと連動したポイント増量などの販促施策やテレビCMで新客を順調に獲得するなどで6割増超と高い伸びを見せている。爽快ドラッグはベビー用品やペット用品のEC専業社のM&Aや飲料・ペット用品など特定カテゴリーに特化した専門サイトなどを各仮想モールに出店する多店舗展開などで安定的な成長を遂げているようだ。