規制進む「デジタル広告」ステルスマーケティング規制の行方は?

「ステルスマーケティング」の規制が行われようとしている。消費者庁は今年9月、「ステルスマーケティングに関する検討会(ステマ検討会)」を発足した。規制の必要性について大半の委員が「必要」との認識で一致しており、OECD加盟9カ国で規制が先行していることから、海外諸国に足並みを揃え規制は不可避とみられる。一方、ステルスマーケティング(ステマ)行為の解釈は幅広く、明確な定義もない。また、広告であることが消費者に隠されているために〝被害実態〟が見えにくい点も特徴だ。ステマ規制の行方は?

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消費者庁、ステマ規制に本腰、「被害実態」の把握、「問題事例」明確化がカギ

自民党「消費者問題調査会」が要請

 ステマ検討会は、今年9月、景品表示法改正を念頭に議論する「景品表示法検討会」の専門ワーキンググループ(WG)の位置づけで発足した。ITに知見を持つ委員を新たに選任。検討会では、ステマの定義など規制対象の範囲と考慮要素、実効的な規制手法を検討していく。景表法検討会と合わせ、年内の取りまとめを目指している。

 ステマ規制をめぐっては、これを前に政権与党を担う自民党の強い要請があった。

 自民党「消費者問題調査会」は、今年に入り、ステマ規制をテーマに消費者庁から複数回に渡るヒアリングを行っていた。これを受けて、消費者庁は今年5月、同調査会で消費者庁が示した消費者基本計画工程表の改定案について説明。そこでステマ規制が追記されている。6月に公表した工程表には、「デジタル広告における不当表示への厳正な対応」の中で、「ステルスマーケティングの対応検討」と書かれている。政府の要請もあり、消費者庁としても、年内に取りまとめを行う検討会で、何らかの成果をみせることが必要だ。

アフィリエイト規制と同じ構図

 現状はまだ、関係事業者・団体からヒアリングを行っている段階。検討会は、10月初旬にかけて行われる第2回~第4回会合(非公開)で行い、議論を踏まえて年内をめどに報告書を取りまとめる。第1回会合冒頭では、河野太郎消費者担当大臣が「ステマを依頼されたインフルエンサーがどう認識しているかかなり幅がある。必要があればなんらかの規制をすることも考えていかなければならない」とあいさつした。

 ステマには、事業者が自ら表示しているにもかかわらず、第三者が表示しているかのように誤認させる「なりすまし型」と、第三者に金銭等の利益を提供して表示させ、その事実を表示しない「利益提供秘匿型」があるとされる。手法も、広告と明示しない有名人による商品・サービス等の画像投稿、SNSへの感想の投稿、ECサイトのレビュー、比較ランキングなどがある。消費者庁がインフルエンサー300人を対象に行った調査では、月収が「20~100万円未満」は7%、「20万円未満」が93%を占めた。フォロワー数は「1万人以上~5万人未満」のマイクロインフルエンサーと呼ばれる層が66%を占めるなど中心。アフィリエイト広告規制でみられた構図と同じであり、少額の収入が大半を占めるとなると、これら個人を規制するのは難しく、アフィリエイト広告規制と同様、広告主を責任主体として想定していくことが合理的といえる。

 活用するSNSは「インスタグラム」が86%。TikTok、ツイッター、ユーチューブは1~数%。取扱い商品の上位(複数回答)は、「ビューティー・化粧品関連」(72%)、「ファッション・雑貨」(61%)、「グルメ・飲食店関連」(42%)、「食品・飲料関連」(38%)、「エステ・美容サロン関連」(35%)、「ウェルネス・健康(サプリ、健康食品等)関連」(24%)などと続いている。

ステマ、7割が「悪いもの」

 ステマに対する認識は、95%がその存在を認知している。依頼された経験があると回答したのは41%(123人)このうち、依頼を「全て受けた」「一部、受けたことがある」と回答したのは45%(55人)だった。

 受けた理由として「ステマへの理解が低かった」(64%)、「広告を隠すことを条件に報酬が得られるから」(31%)、「広告であると記載するとフォロワーの信頼を失うから」(18%)となった。

 反対に依頼を受けなかった層(61人)の理由は、「フォロワーの信頼を失うから」(77%)、「ステマが悪いものだと思っているから」(69%)、「ステマを行うとインフルエンサーとしての自分のブランドを傷つけるから」(61%)、「フォロワーを騙しているようで申し訳ないから」(57%)などと別れる。

 ステマをどう思うかについては、「悪いことだと思う」が56%、「分からない」が29%、「悪いこととは思わない」が9%。「悪い」と思う理由は、「消費者の信頼を損なう」、「消費者に広告であることを伝えないから」が7割を占める。「法律違反だから」も4割あった。

 「悪いと思わない」理由は、「広告であっても嘘の投稿をしているわけではないから」が7割超、「商品、サービスを紹介しており、書かなくても広告であるのは当然だから」が4割を占めるなど、その是非や認識には幅がある。「広告と示さないことも営業の自由の一つであるから」も3割あった。

消費者庁、インスタ投稿対象に措置命令

 ただ、現行の景表法で規制は難しい。ステマはあくまで広告手法の位置類型。そこに「優良・有利誤認」があり、内容の決定に「商品供給者=広告主」が関与していた場合は規制できる
(内容の決定を委ねている場合も含む)。

 21年11月には、インスタグラムの投稿を対象に、消費者庁が初めて措置命令を行った事件もある。

 美容関連商品の通販を行うアクガレージとアシストは、販売する「ジュエルアップ」というサプリメントについてインスタグラム投稿で、「貧乳が悩みなので2カップアップが目標!」などと表示。「LiSALIFE」というアフィリエイトサイトでも「『バスト育ちすぎてヤバい!?』バストアップ&美容ケアのW効果で簡単に巨乳メリハリボディになる裏技解禁!」などと表示していた。

 両社はインスタグラマーへの〝指示書〟を作成。写真投稿時に商品のパッケージを写したり、顔や胸部近くに持つこと、CMだと分からないようにすることなどを指示していた。また、必須の「♯(ハッシュタグ)」も指示していた。こうした状況から、消費者庁は、両社が詳細の指示を行い共同して自ら表示内容を決定したと判断。その内容に優良誤認があることから、「あたかも豊胸効果が得られるかのような示す表示を行っていた」として景表法で処分した。

 両社は、アシストが商品の製造・販売を、アクガレージがアシストの販売業務の大半を受託しており、アクガレージ従業員がアシストの代表取締役を務めるなど、実質的に一体だった。

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