各社のこだわり社員食堂、工夫をこらし「食」で従業員支える

昼休みや休憩時間、あるいは残業時などに利用される社員食堂。「食」は社員の仕事へのモチベーションや会社への満足度にも影響してくるとあって、企業によっては無料での提供や、朝食を出すというところもある。一方で、食堂を単に胃袋を満たして仕事への活力を養う場というだけでなく、内部の空間デザインや料金設定、あるいはメニュー、営業時間などの面から社員を支える工夫をこらしている企業もある。そこでEC・通販関連企業によるこだわりの「社食」について見ていく。

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“課題解決”の場所に

ヤフーが本社を構える東京・六本木の「ミッドタウン」から徒歩数分。ビルの地下に隠れ家のような空間がある。同社の社員食堂「BASE6(ベース・シックス)」だ。

オープンは今年1月31日。社内の有志6人のプロジェクトチームによって作られた。有志によって食堂を立ち上げるというのは宮坂学社長の発案だが、社内で募集をすると40人程度から応募があった。メンバーは各自がプレゼンし、社員の投票によって決定した。プロジェクトは1年かけて進められた。その過程で、方針などを巡り意見が飛び交ったが、最終的にヤフーとしてのミッションに行きついたという。

それは「課題解決エンジン」。つまり「BASE6」という空間を世の中や個人の課題解決の場所にしようということでメンバーの意見が1つにまとまった。

また、宮坂社長の趣味が登山で、いろいろな事業を山登りに例えていることから、食堂も登山になぞらえることにした。“BASE”は登山の「ベースキャンプ」のイメージであり、ヤフーが本社を構える六本木が課題解決に向け山を登る基地にしたいという意味から「6」という数字を使い、「BASE 6」という名称になった。

そうして作られた社員食堂。内部はスペースごとに様々なコンセプトによって設計されており、それぞれにこだわりが見られる。

例えば「山小屋」と呼ばれる場所。天井が低く、壁紙にも丸太のイラストがあり、外から遮断された空間設計になっている。

「山小屋」の上は「屋根裏」というスペース。こちらは“視点を変える”というコンセプトで、階段をのぼってわざと高いところから下を見下ろせる作りになっており、他の空間とは「目線」の位置が異なる。環境を変えるために卓袱台を設置。床も少し柔らかい素材を使い、独特の世界観を演出している。

あるいは“和”をテーマにした「離れ」には畳敷きの床に大きな円卓が置かれ、各自が輪になって座る。日本家屋の離れを意識し、上がり口には玉砂利を敷き、周囲は竹を使ってドーム状にデザインされている。

「原っぱ」という空間には、緑のカーペットを敷き、壁に草を植栽。木の下に机とイスが置かれ、照明が“木漏れ日”のように当たる。

メーンの空間は「縁側」。テーブルは折り畳みが可能なものをオリジナルで製作。畳んだテーブルを収納スペースにしまうとセミナースペースや立食形式のパーティー会場として利用できる。プロジェクトメンバーの1人である社長室の箕輪憲良氏が「こだわらなかった場所が1つもないぐらいの場所になった」と述べるように、食堂のあちこちに工夫がこらされている。

予約や注文にスマホを活用

「BASE 6」のランチタイムは午前11時半から午後3時半。専用アプリを使った事前予約制で、社員のみ利用が可能。午後3時半から午後6時まではミーティングタイムで、この時間も社員専用。煮詰まったプロジェクトがあった際などに、「BASE 6」に場所を移して打ち合わせをするといった利用シーンを想定している。午後6時から午後11時のディナー営業については、社員と一緒であれば社外の人間も
使うことができる。

メニューについては、ランチは定食風の「セットメニュー」と丼ものの「ボウルメニュー」の2種類から選択する。メニューは管理栄養士が指導して健康面に気を配っている。ヤフーには若い男性エンジニアが多いことから、野菜不足という“課題を解決する”ために、サラダは盛り放題になっている。

ディナータイムのメニューは客単価で3000円台におさまるような価格帯を設定。こだわりとしては東日本大震災で被災した企業や漁師から直接購入した食材を使った特別メニューを用意している。例えば宮城・石巻産のワカメや、岩手・陸前高田で作られている生パスタ、岩手・釜石の塩辛などで、ほかにも東北3県(岩手・宮城・福島)の日本酒を取り扱う。

ディナータイムには、社員に貸与しているiPhoneを使って注文ができる仕組みを導入。各テーブルのQRコードを読み込み、各自が個別に注文できる。会計の合計金額も分かるため、懐具合と相談しながら自由に頼める仕組みだ。

こ の よ う に 設 備 に こ だ わ っ た「BASE 6」だが、利用者の反応として一番多いのは「味がおいしい」というものだという。

食事は西洋フードが手がけているが、手作りにこだわっているのが特徴。例えば魚のフライの場合、柵の状態になったものが届くのではなく、魚を切り分けるところから食堂のキッチンで行う。結果、鮮度の良い料理が提供できる。実際、社員にヒアリングすると「魚がおいしい」という意見が多いようだ。

そのほか、「サラダが盛り放題というのがうれしい」という声も。サラダも葉っぱやコーンだけというのではなく、豆や海藻なども足すように工夫されている。

夜のメニューでは「復興支援ができるのがうれしい」という反応もあるとのことで、石巻産のワカメはリピーターが多く、売れ行きも良いようだ。

業績連動型の価格帯

料金も独特だ。ランチメニューに関しては、業績連動型になっている。4半期ごとの業績で全社の営業利益が目標を達成していれば、その次の4半期は無料になる。未達であれば料金が発生する。ランチ代は1食540円で、そのうち会社が負担する130円を引いた410円が社員負担となる。

実際には決算発表を待ってから反映されるため、例えば1~3月の業績を受けて、5~7月の期間のランチタイムの料金が変動され、4~6月の数字が発表されてから、8~ 10月の料金に反映されるという仕組みだ。

こうした仕組みを導入することで、単に食事をするだけではなく、全社的な数値目標に向けて“課題を解決する”という点にこだわった。

会社の課題で、最も大きいものとしては2019年までに利益を2倍にするという目標がある。しかし、各社員はどうしても自身のプロジェクトやセクションの数値に目がいきがちで、全社的な数値には意識が向きにくい。そこで出たのが業績連動型の料金設定だ。「全社の数字を意識できれば、利益2倍に近づくのではと考えました」と箕輪氏は説明する。

ヤフーでは、食堂を単に「食事をして終わり」ということではなく、現場の社員の間で全社の利益について話題が生まれるためのきっかけづくりの場となることに期待を寄せている。

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