主要通販・EC各社に聞く今後の市場予測と景況感、課題とはーー「下期の通販市場は横ばい」が5割超で最多

 本誌姉妹紙の「通販新聞」は、主要通販・EC実施企業約600社を対象に、アンケート調査を実施し、2023年の通販市場の予想および消費動向、さらに各社が抱える現状の課題について聞いた。コロナ収束後の通販市場をどのように展望しているのだろうか。主要各社から寄せられた声をみていく。

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〈市場予測〉コロナ5類移行で景況感に変化も

 2023年下期以降の市場予測では、「横ばい」が51%を占め最多となった。「拡大する」は38%、「縮小する」は11%だった。(グラフ1参照)

 「横ばい」の回答で多かったのは、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことに伴う景況感の変化だが、その受け止め方は肯定派と慎重派に分かれた。

 肯定派では、「行動制限がなくなり、当面は『ソト消費』『コト消費』が旺盛で、特に富裕層が牽引して実店舗が売上を伸ばすと見ている」(テレビ東京ダイレクト)、「5類移行後に増加した観光やイベントへの消費動向は今後もしばらくは続くと思われる」(ちゅら花)、「巣ごもり消費が減少し、外出型消費傾向がしばらくは継続すると想定」(アイム)などだった。

 一方、慎重派の意見では「経済活動の正常化が期待される一方、長期化するウクライナ情勢の影響に伴う物価高騰及び円安の影響により、景気の不透明な状況が続くと予測。通販市場でも同様な傾向が考えられる」(ハーバー研究所)、「消費行動は活発化しそうだが、原価値上げによる商品売価アップの影響で買い控えの恐れもある」(フォーレスト)、「巣ごもり需要はなくなり、通販業界も平準化されていく」(インペリアル・エンタープライズ)などだった。

「拡大」は約4割

 「拡大する」と回答した企業の回答では、新規参入組の増加が市場拡大にも寄与するとの声が目立った。

 「多数の企業の参入が見られるため」(てまひま堂)、「新規参入者が多い」(世田谷自然食品)、「国内食品宅配マーケットは、コロナ禍を経た消費者の生活動向の変化や国内外様々なプレイヤーの参入により活性化。20年度~25年度までのCAGR(年平均成長率)が3.3%と年々拡大しており、今後も順調な市場拡大が予想される」(オイシックス・ラ・大地)などだった。

 新型コロナ関連では、「コロナ拡大を機にEC化が加速した」(アスクル)、「コロナ禍より伸びは鈍化するが、高齢者のネット利用などの影響もあり、まだまだ伸びは続く」(ヤマサキ)、「巣ごもり消費の影響によるEC市場バブルは落ち着きを見せる一方、ECは新たな購買手法として確立しており、今後も横ばい~拡大へ向かうと予測」
(北の達人コーポレーション)などだった。

 「縮小する」の回答は「巣ごもり需要の低下、コロナ後の反動による実体験(百貨店での購入、旅行等)への集中、モール業態との競合により縮小と予測」(日本直販)、「リアル店舗へと市場が分散し、通販の競争激化が予測される」(ベルヴィ)などだった。

〈消費動向〉足元の景気は「横ばい」が約5割

 現状の消費動向については、「横ばい」が47%で最多となり、「上向いている」は29%、「下向いている」は24%だった(グラフ2参照)。

 「横ばい」では、消費動向の分散・多様化を挙げる声が目立った。

 「旅行やレジャーの消費意欲は高まっているが、日常的な自己需要品の購入意欲が高まっているとは言えず、全体では横ばい」(全日空商事)、「家計のパイが増えない中で燃料費等の負担を警戒しつつ、コロナ禍で溜まった消費欲求を満たす買い物(少額)は増えるのではないか。結果、消費に回る金額としては横ばいと想定」(アプロス)、「物価高騰による悪化の一方、外出増加に伴う消費の増加もあり、横ばい~微増」(オージオ)、「物価高の影響はあるがウェブの成長が著しく、本当に質のよいものは購入される傾向。結果として上りも下がりもしない」
(テレビショッピング研究所)などだった。

 「上向いている」を選んだ企業では「コロナ禍の規制が緩和・解除され、反動が現れている」(ニッピコラーゲン化粧品)、「行動制限が無くなり、消費動向自体は上向いている」(ベルヴィ)、「外出機会やイベントの増加によるファッション消費の回復」(ユナイテッドアローズ)などコロナ後の好影響を上げる声が多かった。

 この他、「帝国データバンクの景気動向調査によると景気指数は3ヵ月連続で改善。国内景気は幅広い範囲で持ち直しの動きが強まり、今後もインバウド需要や対面型サービスを中心に個人消費が拡大すると考える」(アイム)、「各百貨店の事業収益、旅行指数の上昇等を背景に上向いている」(日本直販)など指標に基づく意見もあった。

 「下向いている」を選んだ企業では「日常生活関連の値上げが続き、節約志向が高まっている」(ヒラキ)、「値上げの頻発や世界情勢の不安等の報道が多く、消費者マインドが上向くのは引き続き難しいと考える」(日本生活協同組合連合会)、「物価高による趣味への費用感の減少」(タキイ種苗)、「物価が高騰しているため」(山田養蜂場)などの意見が目立った。

〈現状の課題〉課題の多様化・複雑化が鮮明に

 「通販事業を展開する中で、現在の課題、今後課題になると捉えている点」を尋ね、複数の選択項目から回答企業にとって重要度が高い順に3つまで選択してもらい、選択項目を本紙が集計して独自にポイント化して順位を付けた(グラフ3参照)。

1・2位は「顧客」関連

 課題の1位は「新規顧客の開拓」(昨年8月に実施した前回調査の順位・1位)。主な回答は「良いお客様をいかに獲得するかが課題。CPAは良化してもF2・F3くらいまで見ないと費用対効果が合わなくなる」(ヤマサキ)、「自社(B2B)サイトの年間稼働会員数の減少が継続しているため」(フォーレスト)、「テレビ通販が主力だが年齢層を考えると先細りのため別世代に目を向けることも大切」(テレビショッピング研究所)、「売上拡大には採算性のある顧客獲得が必要」(富士産業)、「お客様の弊社商品・サービスの継続利用とそれによるLTVの向上」
(ユナイテッドアローズ)などの声があった。

 2位は「既存顧客の満足度」(前回調査2位)。主な回答は「新規顧客の開拓と同様に既存顧客へのサービス・施策による継続率向上が安定的な収益につなげるため重要」(アイム)、「ここ数年で獲得した新規顧客を定着させること、リピート率を上げる必要がある」(田中貴金属ジュエリー)などだった。

3位は「商品の開発・育成」

 3位は「商品の開発・育成」(前回調査3位)。主な回答は「ここ最近業界で画期的な商品は開発されていない。その種を見つけ自社でアレンジできるかが鍵」(オージオ)、「機能性のあるオンリーワン商品の開発が課題」(ヒラキ)、「新たな商品を開発し、活性化および新たな年代の顧客を獲得するため」(八幡物産)、「トレンドの変化も意識し、新たな需要を喚起する新商品を継続的に発売することが必要」(北の達人コーポレーション)などだった。

4位は「ウェブ集客」など4項目

 4位には4項目が同数で並んだ。「ウェブの集客」(前回調査4位)では「オフラインに頼らずウェブで集客拡大することが売上アップのための課題」(アプロス)、「ウェブ顧客は客単価が低い傾向にあるため、集客だけではなく客単価の引き上げも課題」(ハーバー研究所)などだった。

 「人材確保」(同5位)では「時代の変化やスピードに対応し、かつECやデジタルマーケティング領域の専門性を加味した人材の育成、補強によるチームワークが大事」(バロックジャパンリミテッド)、「事業拡大に伴う採用活動に苦戦している。専門スキルを持った人員の確保が難しい」(ロッピングライフ)などだった。

 「原価率の改善」(同7位)では「原価削減が利益率強化のドライバーであるため」(オイシックス・ラ・大地)など。「物流コストの削減」(同11位)では2024年問題を懸念する声が目立った。

8位以下は原材料費、購入頻度など

 8位「原材料費等の高騰」(前回調査7位)では「原材料高や円安を踏まえた原価・販売価格の見直し」(GSTV)、「御取引先との調整、紙面反映」(日本生活協同組合連合会)などだった。

 9位「購入頻度の向上」(前回調査7位)では「獲得顧客(新規・既存)ともにリピートが難しい部分があり重要と考える」(タキイ種苗)、「頻度増によるLTV向上がポイントだから」
(世田谷自然食品)などだった。

 10位「DXの推進」(前回調査6位)では「ネット通販の取扱量増加に伴う、DXによる業務効率の向上や、お客様のユーザビリティを高めるための機能追加が課題のため」(田中貴金属ジュエリー)などだった。

 11位は同数で3項目が並んだ。「休眠顧客の活性化」(前回調査ランク外)では「継続率の低下に加え他社への乗り換えも多くあるので、再び引き戻すことが必要」(ちゅら花)などの声が見られた。


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