EC事業者はどう使うと効果的? 成果あげるSNSのネット販売活用術とは

Facebook、Line、Twitterなどなど、今や誰もが当たり前のように日々、日常的に使うようになったSNS。ネット販売事業者にとっても、大勢の人々が集まる“場所”であるSNS上で上手に喧伝し、自社サイトに誘導、商品を購入してもらうという試みはもはや当たり前の営業活動と言える。ただ、SNSが人々の生活に深く浸透し、企業発信の情報に対しての受け取り方に変化が見られることや企業のSNS活用の増加などにより、SNS黎明期のように単純に公式ページを開設して、継続的に記事をアップしていけばユーザーが関心を持ってくれる時期は過ぎ、何かしらの“仕掛け”なくしては成果をあげることができなくなってきている現実も。では、EC事業者はどのようにSNSを活用すれば成果をあげられるのだろうか。一定の成果をあげている各社の取り組みを見ていく。

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看板商品であるくず餅などを取り扱う通販サイト

Facebookの活用

事例① 船橋屋の場合

通勤時間帯の投稿で反響男性客の新規開拓につなげる

老舗和菓子屋の船橋屋では、フェイスブック(FB)を活用した通販サイトへの送客に力を入れている。従来から得意としてきた年配女性客だけでなく、FBの利用比率が高い30~40代男性といったビジネスパーソンに向けての情報発信も積極的に行い、男性顧客の新規獲得につなげている。

様々な投稿パターンを検証

同社がネット販売を本格的に開始したのは2006年頃で、まずは大手仮想モールに出店し、2011年には自社通販サイトを開設した。以前はフリーダイヤルや取り寄せグルメサイトでの展開しかなかったが、TVなどメディアで取り上げられるたびに通販の注文がパンク状態となっていたため、その窓口としてネットによる直販を強化するようにしていったという。

通販での商品ラインナップは実店舗(全国22カ所)と同様で、くず餅やカップのあんみつなどギフト商品も含めて約20商品。新商品を次々と企画して売り出すという手法ではなく、あくまでも昔からのブランド商品を軸とした内容にしている。 通販でのブランド方針としても仮想モールでのタイムセールや送料無料企画、オークション企画などには一切参加せず、ページ構成もセールス色が強くならないように配慮。「ブランドのイメージがマイナスになってはいけない。実店舗の顧客と通販が区別した売り方になってはならないと常に気にかけている」(企画本部営業企画部経営戦略企画室の佐藤恭子室長)とした。

当初、SNSに注目したのはブランドや商品の情報を正しく消費者に伝えることがきっかけだった。同社の商品はその特性上、消費期限が商品到着の翌日までとなっているため注文当日に作って梱包・出荷する体制をとっている。「テレビで見て初めて来た人の中には商品の日持ちを見て購入ページの途中で離脱するケースもある。そのため、まずブランド価値を理解してから納得して購入に至るというスキームを作るためにSNSでの情報発信に取り組むようになった」(同)とその経緯を振り返る。やがて商品情報の発信だけではなく、通販サイトへの送客にも効果があるツールとして徐々にSNSの活用の幅を広げていくようになった。

現在、SNSの中でも特に注力しているFBについては2011年から2012年にかけて本格展開を開始。FBではすべての投稿文の末尾に通販サイトのURLを記載して送客を促すようにしている。「拡散力という面で力のあるツールだと思ったので、『いいね!』を集める施策を優先的に取り組んだ」(同)と説明。まず着手したのは、個人のSNSでの影響力を数値化した「Kloutスコア」を参考にして、その数値が高く人気のあるFBユーザーたちと交流すること。交流はウェブ上だけにとどまらず、実際に人気のFBユーザーが開催するイベントやセミナーに参加し、くず餅を土産物として持参するなど商品の売り込みも行い、情報拡散の足がかりとしていった。

交流ではビジネス向けのFBの有効的な活用術を学ぶこともできた。実践している内容としては、まず、通勤時間帯に合わせて午前7時前後に投稿すること。その際は必ず短文で明瞭な内容にするようにして、読ませたい長文の投稿は夜の8時以降に実施。スイーツ関連の話題はおやつを意識した3時前後を選ぶなど生活時間を読んだ投稿を徹底している。

投稿時間の設定については会社の業態や商材の内容をもとに様々なパターンを検証する必要があるようで、同社も当初は正午12時前後で始めたが想定よりも伸び悩み、その後も帰宅時間に合わせて午後5時頃に行うなどしたが、最終的には午前7時の投稿への反応が一番良かったという。「業界や商品に応じて、ピンポイントでマッチする時間帯は必ずあると思う。また、長文の投稿の場合は最初の2行がすべてを決めると思うので、そこに(伝えたい要件を)すべて込めるくらいの構成が大事になる」(佐藤室長)とした。

さらにFBで獲得を狙っている顧客層だけでなく、既存の顧客層にも配慮する必要がある。同社の場合は若年層の開拓を目的としていたが、既存の年配顧客の閲覧機会も非常に多いため、キャッチーな流行言葉などをタイトルで使うことは控えている。洒落た表現よりも「催事情報」や「夏の季節限定商品」のように簡潔で分かりやすい告知フレーズの方が遠回りせずに内容が伝わるようだ。これも様々なフレーズや表現を試した上で、投稿後の反応を見ながら取捨選択する作業が必要だと言える。

地元のイベントである「藤まつり」に関する投稿は大きく注目された

通販売上高が前年比20%増

これまでの投稿の中では、リアルイベントに関連したものが一番反応がよかったようで、特に毎年4月下旬から5月にかけて本店近所の亀戸天神で開催される「藤まつり」を話題にした投稿は10万件近い「いいね!」を獲得。現地で撮影した藤の花の写真とともにくず餅の購入を促す一文と通販サイトのURLを記載したことで、ネットでの販売を大きく伸ばしたという。「元々、観光客が多く訪れる祭りなので、そこで買い忘れた人たちもネットで集客できた。同様に(本店のある)亀戸の街を紹介した内容もたびたび投稿して共感を得ている」(佐藤室長)とした。また、欠かせないのがTV取材後の投稿で、取材後には必ず放映予定日を見越して通販サイトを紹介する内容の投稿を行い短期間に集中する顧客の購入窓口としても機能させている。

そのほか、主要顧客層の子供世代でもある30代を意識して行った企画では「船橋屋にまつわるエピソード」をテーマに投稿を募集。子ども時代に食べた想い出話の投稿が多数があったという。「想い出話の投稿はリアルで飾らないものが多く、共感の輪が広がりやすいため結果的に通販の売り上げにかなりつながった。昔両親と食べていたという記憶はなんとなくあったがその記憶だけではたどり着けなかった人が、FBの情報を見て通販サイトまでたどり着けるようになった面もあるのでは」(同)とした。

以前までの同社の通販顧客層はフリーダイヤルも含めて50歳以上で、そのほとんどが女性客だった。しかし、FBを開始してからは30~40代のビジネスマンからの新規の注文数が徐々に増えていき、今では通販サイト顧客の男女比率が半々になったという。

通販の売上高についても、FBを開始した2011年は前年比20%増と大きく伸長。翌年、翌々年はシステム改修などの影響を受けて横ばいだったものの、2015年の上半期については前年同期比で5%近い伸びを示している。「いいね!」数の伸びも引き続き堅調に推移しているようだ。

現在、同社ではFBだけではなく「ツイッター」や「グーグルプラス」なども公式アカウントで運営している。SNSごとに利用者の属性に合わせて発信する情報の内容を出し分けるということはせず、あくまでも統一した情報を配信してあとは利用者の判断で好きなSNSから読み取ってもらうように使い方を委ねている。

今後については、10代~20代の若年層開拓に向けて「LINE」や「インスタグラム」による情報発信にも力を入れていく考え。「これからもずっとFBが影響力を維持するかは分からないので、いつ流行が切り替わってもいいように新しいSNSが出るたびにアカウントを取っておきその時に備えている」(同)とした。

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