千趣会は9月29日、ファッションアイテムからインテリアまでジャンル横断型の新ブランド「ベルメゾンデイズ」を発表した。創業60周年を機に物作りの原点に返り、素材からこだわった“クオリティファースト”を旗印に企画から製造小売りまで一貫して行うSPA(製造小売)型商品開発に取り組んで収益力強化につなげる。本格始動は16年春シーズンからで、2016年12月期に250億円、5カ年計画最終年の18年12月期には400億円を売り上げる基幹ブランドに育てる。
新ブランドでは従来の問屋や商社が生産工程をコントロールするOEM型だけでなく、素材開発や編立、縫製の工程まで入り込んで自社で生産管理するSPA型に着手する。SPAモデルでは製造原価を下げるためにも在庫を十分に確保し、2~3年は品番を変えずに継続して販売する必要があることから、シンプルで飽きのこないアイテムをメーンに展開する。「従来は、1シーズンで品番をリセットすることも多かった」(田邉道夫社長)が、SPAではシーズンをまたいで在庫を持つことになる。
そのため、同社では媒体の垣根を越えて売れ筋アイテムを「デイズ」に集約し、素材からさらに磨き上げるなどして商品の価値を高める。
プレデビューとなる今冬シーズンにSPA商品はないが、例えば、もともとはインテリア雑貨カタログ「ベルメゾンすむとこ」で寝具などに展開していた、とろけるような質感と暖かさが人気の「とろけるシリーズ」はさらに滑らかな肌触りを追求して従来比3分の2の細さのマイクロファイバーを採用するなど、素材を改良して「デイズ」のラインアップに加えている。
16年春から「デイズ」に投入するSPAモデルの商品は全ジャンルを対象にするが、とくにアウターやインナー、ファブリックなど素材で独自性と継続性を出せるカテゴリーに重点を置いており、その分、これまでより早く商品開発に着手しているという。
新素材の開発に当たっては15年4月、SPAブランド推進室から格上げしたSPAブランド事業本部に、素材開発などに取り組む専門部署のSPA生産品質部を設置。素材メーカーにアプローチしたり、産学連携にも取り組む。
これまで、ベルメゾンブランドではたくさんの種類のカタログを発刊し、カタログごとに商品開発を行ってきたが、生産工程や販促面で重複や無駄が生じていた。そこで、「デイズ」ではネット時代に合わせた“商品起点”の発想に切り替え、新素材開発や生産管理の徹底、製造工程の見直しを図ることで、ここでしか買えない付加価値のある商品を納得してもらえる品質と価格で届けるとしている。
普段使いの商品を提供
新ブランドでは普段使いの商品を展開。「消費者の暮らしの“まんなか”で毎日使ってもらえる、新しい暮らしのスタンダードに育てたい」(同)とする。また、各媒体から売れ筋を集約していることもあり、千趣会が展開する多彩なブランド群の中核(まんなか)と位置付ける。ブランドロゴも、この“まんなか”をイメージした。 「デイズ」の品ぞろえは幅広いが、主に家具やファブリック、キッチン用品、生活雑貨などを集めた「デイズ・ホーム」と、アウターやインナー、服飾雑貨などのアパレル全般を扱う「デイズ・ウエア」の2つのカテゴリーで展開する。
商品点数はプレデビューの15年冬シーズンが400アイテム、本格デビューとなる16年春に800アイテムを計画。15年冬号では新ブランドのコンセプトが伝わりやすいアイテム、象徴的な商品を扱う。
メーンのターゲット層は30代~40代後半の女性で、キッズ向けは今後の検討課題とする。
価格戦略については1980円や2980円など通販で買いやすい価格帯を豊富にそろえるが、それ以下のゾーンには手を出さない。買いやすい価格帯ではあるものの、縫製や試験、検品などの品質管理を徹底し、素材からこだわった“クオリティファースト”を大事にする。
3年後、400億円規模に
「デイズ」で扱う商品の販売は通販サイト「ベルメゾンネット」や基幹カタログの「ベルメゾンファッション」と「ベルメゾンすむとこ」の冬号でスタート。両媒体では巻頭に新ブランドの特集を展開しているが、10月中旬発刊の厳冬号では「デイズ」の専用カタログを80万部発行する計画で、冬号の受注状況によっては増刷も行う。
通販チャネル以外では、全国に20店舗ある実店舗の一部を活用し、成果が出れば「デイズ」の専門店を展開することも視野にあるという。また、15年4月に資本業務提携を結んだJフロントリテイリング傘下の大丸、松坂屋の両百貨店でも、本格デビューとなる来春をメドに展開したい意向だ。
「デイズ」のプロモーションについては、10月末からクロスメディア展開を実施する。具体的には、15年前半には実施しなかったテレビCMを首都圏と大阪、名古屋の3エリアで集中的に放映するのに加え、交通広告ではトレインジャックを計画しているほか、雑誌広告やウェブ広告でも露出する。広告展開の際にはすべての媒体でブランドロゴを打ち出して認知につなげる。
こうした取り組みにより、「デイズ」の初年度(15年12月期)売上高は26億円を、本格デビューする来期は250億円、5カ年計画最終年の18年12月期には400億円を売り上げるコアブランドに育てる。
素材からオリジナリティー求める【杉浦恒一常務が語るSPA型商品開発とは?】
Q:御社が考えるSPAの定義は。
A:SPAの定義は人によって異なりますが、当社の場合は「素材から」ということです。SPAの取り組みでは素材からオリジナリティーを求めますので、商品開発に着手するタイミングを早めています。これまで、商品開発を行うときは問屋や商社に対して「こういう商品を作りたい」という提案をして、彼らが持つネットワークで物作りを行ってきました。SPAでは素材メーカーとの話し合いからスタートして、どこの編立や縫製で生産するかという部分までコントロールしていく必要があり、商品開発の入り口がまったく違います。
Q:これまで素材メーカーとの取り引きは。
A:メーカーとの付き合いは、頒布会で取り引きのあるメーカーもありますが、繊維関係では商社に仁義を通した上で、その先のメーカーに入り込みます。当社の事情や今後の為替の推移などを踏まえて、生産スキームを変える必要があることを理解してもらいました。ただ、「ベルメゾンデイズ」で扱うすべての商品がSPAに置き換わるわけではありません。
Q:付加価値を高めるためには機能性素材の開発も必要になります。
A:素材開発については、メーカーに対して当社から提案するのはもちろん、いち早く新素材の情報が得られる体制を作ったり、産学連携などにも取り組みます。顧客の声を商品に反映させるために理想を追求することが新しいモノを生み出すことにつながります。商品レビューだけでなく対面で顧客の声を聞いたり、ベルメゾン生活スタイル研究所や創造研究開発室などからも情報を吸い上げて取り組みます。
Q:新ブランドで展開する商品の基準は。
A:「ベルメゾン」ブランドで展開している各媒体の売れ筋は決まっていて、これまでは各媒体で販売の責任があったために、媒体の垣根を越えて商品を集約するということができませんでした。今回はその部分にメスを入れ、各媒体から売れ筋を集めています。そういう意味で「デイズ」が“まんなか”になります。「デイズ」でSPAのルートを確立できれば、そのルートにほかのブランドも乗せられるため、「デイズ」が試金石となります。