ジーユー、初のショールーミング型店舗開設―― 試着体験からアプリでEC 送客

専用サイネージを備えた同社初のショールーミング型実店舗

ジーユーは11月30日、ネット販売と連動した同社初のショールーミング型店舗として、「GU STYLE STUDIO(ジーユー スタイル スタジオ)」を都内・渋谷区に開設した。展示商品のすべてがサンプル品で店内にレジ機能などはなく、購入のためにアプリを通じて通販サイトへ送客する仕組みとなっている。

渋谷区の商業施設「原宿クエスト」内に入居している同店舗は、同社の標準サイズの店舗よりも比較的狭い約600m2の売り場面積となっている。しかしながら、通販サイトと連動することによって季節ごとのウィメンズ・メンズのフルラインアップの商品を取り扱うことができるという。店内に展示している商品はすべてサンプル品で、全型、各サイズの展示となる。バックヤード機能や在庫保管スペースなどは持たず、購入に当たっては来店者がスマホを使って同社の公式アプリから通販サイト上で行う仕組み。

店内にあるのはサンプル品のみで、購入は通販サイトからとなる

ショールーミング型店舗として、通常の店舗よりもマネキンを多く配置しており、様々なスタイリングの着こなし提案を行うほか、同社が定めるスタイリスト接客店員の「おしゃリスタ」によるコーディネート提案接客にも力を入れている。

同社が原宿へ出店するのは今回が初めて。新型店舗の出店先として原宿を選んだ理由は「以前からずっと出店したくて、顧客からは要望というよりもお叱りに近いレベルで『なぜ原宿にジーユーが無いのか』と言われていた。どうせ出すのであれば最先端の店舗を作ろうと思った」(柚木治社長)と語り、テナントの空き状況と新型店舗の構想がマッチした今回のタイミングでの初出店となった。

そのほかにも原宿に拠点を置くメリットとしては、ファッション感度の高い若者が多く訪れ、買い物だけでなく原宿を起点にしたファッション文化が生まれることも珍しくないことから、「顧客のインスピレーションを刺激して新しいスタイリングが生まれる。それを我々も勉強させてもらい、次の商品につなげていく。色々な学びがあると思う」(同)と語った。

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撮影機能付きサイネージで“アバター”を作成

サイネージではアバターをベースにコーディネー ト体験ができる

同店舗の最大の特徴として、店内に撮影機能付きの専用デジタルサイネージ「GU STYLE CREATOR STAND(ジーユー スタイル クリエイタースタンド)」を設置している。来店者がその場で撮影した自身の顔写真をもとに顧客自身のオリジナルアバター(分身のキャラクター)を十数秒でサイネージ上に作ることができ、サイネージ内に登録されたジーユーの商品を自由に組み合わせてアバターをベースにした様々なコーディネート体験ができる。髪形や商品の色を自由に選択でき、現実の着用イメージに近い形で表示されることから、試着の手間をかけずに多様な組み合わせパターンを確認することが可能なようだ。

そのほかにも、店内の商品すべてに付けられているQRコードをスマートフォンなどで読み込むことで、アプリ内にお気に入り商品として登録でき、マネキンのコーディネートアイテムも一括して登録できるほか、来店時以外にもお気に入り商品として確認することが可能となる。そのほか、アプリを使うことで店内では試着室に並ばずに使用できる予約待ち機能も備えている。

開店前日の11月29日には同店舗で記者発表会を開催し、同社のイメージキャラクターであるモデルの中条あやみさんをはじめ、元サッカー選手でタレントの丸山桂里奈さん、お笑いトリオのパンサーが出席。実際にサイネージを使って画面上に現れた各自のアバターで同社の商品を組み合わせてコーディネート対決などを行い、会場を盛り上げた。丸山さんは「普段自分が着るものは全部偏ってしまうが、アバターを使って(新しい)気づきがあった。1人でも多くの人に試してもらえれば」と語った。

店舗スタッフの作業を軽減接客から顧客データを獲得

EC 化率30%を目指すジーユーの柚木治社長

同社では、ショールーミング型店舗を開設するメリットとして、狭いスペースでも全商品を取り扱いできるということだけでなく、店舗スタッフが接客に専念できるということも挙げている。「スタッフの作業が減るので、より接客に力を入れることができる。店舗運営のコストはどちらがよいかは一概に言えない。ただ、入荷した商品を展示したりレジ打ちなどの一連の作業は減るだろう」(柚木社長)と説明。その上で、接客量が増えることで顧客との対話時間も増えることから、試着室に何を持ち込んで、何を購入して何を買わなかったかといった様々な顧客データが収集できると期待している。それらは商品開発やマーケティング、通販サイト構築、アプリの設計などに活用できるとしている。

また、今回の新店舗での成果の見極め方については、アプリなどのダウンロードからどれだけ購入につながったかを見ていく考えだが、単純な売り上げ数値だけでは判断しないという。新店舗の色々な情報が拡散することによって来客していない人でもECへの送客が図れるような拡散効果も見込んでおり、広告塔としての役割も期待している。

EC 化率を6%から30%まで拡大へ

なお、今後のEC化率については現状の約6%から将来的にはユニクロと同様の目標値である30%まで引き上げていく考え。ネット販売の成長については、今回の新店舗展開が新たな起爆剤になると見込んでいる。

また、今後については「画像認識だったり、体型計測など色々なものが自動化されて、顧客と欲しい服のマッチングが究極まで近づくという技術にはとても興味がある」(同)と語り、デジタルでのテコ入れを引き続き強化していくことを示唆した。

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