Tue, January 17, 2017

利用広がる”越境EC”の今

爽快ドラッグが「ティーモールグローバル」にオープンした「爽快官方海外旗艦店」

ネット販売によって海外の需要を掘り起こす動きが盛んになってきている。中国人による日本での“爆買い”が話題になっているが、その中国の仮想モールに出店し旺盛な購買意欲に商機を見い出すケースや、来店した訪日外国人をリピートにつなげようという動き、あるいはもはや日本が誇るカルチャーともいえる「オタク」で海外に勝負を掛ける事例など、様々な戦略で海の向こうの消費者にリーチを図る企業が増えている。日本にいながらリスクを抑えて海外に向けてネット販売を行う“越境 EC”の現状について見ていく。

事例① 爽快ドラッグ

「ティーモールグローバル」に出店し中国向けの日用品越境EC開始

爽快ドラッグはこの4月に、中国の越境仮想モール「天猫国際(ティーモールグローバル)」に「爽快官方海外旗艦店」を出店し、日用品や健康食品、化粧品などの中国消費者向けの越境ECを開始した。現地の法整備が進み、越境ECを行う環境が整ってきたことを受けたもので、親会社の住友商事が2011年に上海市に設立した現地のネット販売事業会社・住商電子商務をパートナーに事業を推進。今後、複数の越境仮想モールに出店し、中国向け越境ECの展開を拡大する考えだ。

グループの現地EC事業者と連携

「爽快官方海外旗艦店」の取扱商品数約500品目でスタート。品ぞろえを順次広げ、2年以内に約2000品目とする計画だ。受注商品の発送は、事前に一括輸出し、中国の保税区倉庫に在庫したものを発送するほか、爽快ドラッグがEMSを使い日本から発送する仕組みで、日本から発送した場合、1週間程度で顧客に届けられるという。

また、今回の中国向け越境ECでは、住友電子商務が現地顧客の対応や商品情報の中国語翻訳、返品対応、サイト運営などを担当する。住商電子商務との連携は、「ティーモールグローバル」の出店条件に中国のパートナー企業の選定に関する事項があることを踏まえたもの。住商電子商務では、「品店(ピンディエン)」のブランド名で自社通販サイトを運営するほか、「天猫(ティーモール)」などに出店し、日用品のネット販売を行っており、爽快ドラッグとしては、現地仮想モールでの集客方法や商品の見せ方、顧客対応など住商電子商務が持つノウハウを活用できるのが強みだ。

「爽快官方海外旗艦店」の本格的な展開はこれからだが、住商電子商務が行う日用品ネット販売では、日本と同様にベビー関連商品や健康食品、化粧品などが売れ筋となっており、30~40代女性が主要客層になると予測する。

メーカーとのアライアンスを重視

また、中国向け越境ECの展開に当たり、爽快ドラッグが重視しているのは日本の取引先メーカーとのアライアンス。この一例と言えるのが越境ECで販売する商品を事前にメーカー側に確認ことを掲げている点だ。

越境ECで扱う商品はネット販売事業者の判断で決めればいいと思われがちだが、実は、中国に進出しているメーカーの場合、現地の正規販売代理店などとの調整が必要で、事前確認をしないままネット販売事業者が越境ECで商品を販売し、トラブルとなるケースがあるという。爽快ドラッグでは、こうしたトラブルの回避、また、現地の正規販売店との調整がつかず、越境ECでの販売は見送りたいというメーカーもあることを踏まえ、事前の商品確認を徹底することにした。

このほかに、越境ECの販売実績と国内ECの販売実績を分けてメーカー側に提供することを標ぼうしているが、これもメーカー側のマーケティングに役立ててもらうことを狙ったものだ。

爽快ドラッグがメーカーとのアライアンスを重視している理由は、「中国向けの越境ECで日本のメーカーとしっかり取り組んでいける事業者はそれほどない」(小森紀昭社長)ため。

実際、細かな参集障壁があることを考えると日本の大手流通事業者が本格的に越境ECに乗り出してくるとは考えにくく、一方で中国のネット販売事業者が日本の商品を調達しようとしても、逆にメーカー側が慎重になる。日本の事業者の中国市場参入、中国事業者の日本製品の調達双方で障壁があるなか、「その間の比較的優位なポジションにある」(同)爽快ドラッグは、メーカーとの取り組みがしやすく、今後、関係性を強化しながら中国向け越境ECの展開を拡大していく考えのようだ。

法整備など条件整い中国越境ECへ

一方、爽快ドラッグがこのタイミングで中国向け越境ECに乗り出した要因としては、現地の法制度の整備が進み越境ECを行いやすい環境が整ったことがある。

具体的には、12年3月に個人輸入物品の税率が「行便税」(しんようぜい)として明確化され、14年3月には全国6カ所の特区で越境EC向け保税倉庫を自由貿易試験区として制定。同年7月に越境ECの保税倉庫内の管理方法が明確化されたのに続き、同年12月には越境EC向け自由貿易試験区が追加制定されるなど、急速に制度整備が進んだ。

実は、爽快ドラッグでは昨年の春ごろに中国向け越境ECの展開を検討したことがある。この時には法制度の問題、日本からの受注商品の発送などで問題があり参入を見送ったが、今回、中国向け越境ECの展開に乗り出した背景について、「保税倉庫を使った個人輸入の仕組みができたことが大きい」(同)とする。

もうひとつの要因は、中国人訪日客のインバウンド消費のリピート需要。観光庁のまとめによると、14年の外国人訪日客の1人当たり旅行支出が全体で15万1000円なのに対し、中国人訪日客は23万1000円と高く、さらに1人当たりの買物代についてみると12万7000円と全体の5万3000円を大きく上回る。これは中国人訪日客の旺盛な購買意欲をうかがわせるものだが、特に、中国人訪日客の間では、日本製の化粧品や健康食品、紙おむつなど日用品の人気が高く、帰国後のリピート購入需要が越境ECに流れてくることが見込めるわけだ。

さらに現地の越境ECサービスが広がりを見せているという追い風もある。

実際、13年9月に越境ECの仮想モール「ティーモールグローバル」が開設したのに続き、現地企業や中国国有企業などが連携し上海自由貿易試験区を活用した越境ECのプラットフォーム「跨境通」(コアチントン)の展開を表明。

さらに中国大手仮想モール運営事業者の京東(ジンドン)越境EC向けの仮想モール開設を表明し、上海以外の自由貿易試験区でも越境ECの仮想モールを開設する動きが見られるなど、越境ECの売場が広がり、事業の拡大がしやすくなっている。

パートナー企業の住商電子商務が持つノウハウに加え、保税倉庫を使った個人輸入の仕組みの確立、さらにインバウンド購入商品のリピート需要、売場の拡大など様々な条件がそろい、中国向け越境ECに乗り出したわけだ。

コストコントロール力で利益を出す

爽快ドラッグでは、「爽快官方海外旗艦店」の売上高について、初年度(2016年3月期)数億円、次年度(17年3月期)20億円、3年度目(18年3月期)には40億円とする計画。年中国向け越境ECでも日本と同様、売場の拡大を進める意向で15年度中に京東および上海試験区の越境仮想モールに出店する考えだ。

一方、今後の展開で課題と見ているのは価格競争。これは現地で日用品のネット販売を行う住商電子商務でも経験したものだが、「1年程度やってみれば、何か差別化できるものが出てくると思う」(小森社長)とする。さらに価格競争が進むことも見込まれるが、「その時に、どれだけの物量を動かし、効率化が図れているかが次のステップの勝負。コストコントロール力で利益が出せると思う」(同)と、意欲を見せる。

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