主要通販・EC実施企業に聞くーー2024年の市場予測と景況感、課題は?

 本誌姉妹紙・通販新聞は2023年12月、主要通販・EC実施企業ら約600社を対象に、アンケート調査を実施し、2024年の通販市場の予想および消費動向、さらに各社が抱える現状の課題について聞いた。新型コロナウイルス感染症が5類に移行し経済活動は戻りつつあるものの、EC市場においては競争激化が続いていることに加えて、物価高などの消費の変化を受けて厳しい見方をする事業者が多いようだ。アンケート結果について、主要各社から寄せられたコメントともにみていく。

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1-〈通販・EC市場予想〉「拡大」が半数を割り「横ばい」と二分

 アンケートは「2024年以降の通販市場について、どのように予想していますか」と質問し、「拡大する」「横ばい」「縮小する」の中から当てはまるものを選んでもらった。その結果、有効回答数のうち、「拡大する」が48%となり、前年同期の調査から5ポイント縮小した。「横ばい」は43%で前年同期の調査から5ポイント拡大し、「拡大する」と二分し、合わせると9割を占めた。「縮小する」との回答は9%をとなり、前回調査から2ポイントの縮小となった。(グラフ1参照)

異業種参入で活性化

 「拡大する」と回答した各社のコメントを見ていく。「異業種による新規参入が多い」(世田谷自然食品)、「多種多様な商品展開がみられる」(てまひま堂)、「国内食品宅配市場はコロナ禍を経た消費者の生活動向の変化や、国内外のプレイヤーの新規参入がある」(オイシックス・ラ・大地)、「欧米水準までまだまだ伸びる」(ジェイドグループ)など、競争激化による市場の活性化を指摘する声が目立った。さらに、コロナ禍の外出制限を経て、自宅に商品が届く通販やECが定着したとの見方もある。「販売チャネルとして生活の一部になった」(ニッピコラーゲン化粧品)、「EC化が加速した」(アスクル)と指摘している。

 また、「外出機会が増え、ファッションへの関心がコロナ禍の反動で高まるほか、OMO推進でより相互送客の関係値となる。インフルエンサーを含めたSNSでの発信も盛り上がると予想している」(バロックジャパンリミテッド)などの声もみられた。

買い物のリアル回帰を指摘

 一方で、「横ばい」と回答した企業も、コロナ禍における通販・ECの定着を指摘する一方で、物価高の影響や消費者意識の変化からやや厳しい見方をする声がみられた。

 「外出時間が増えて、店舗での購入が増加すると予想するが、通販もECは伸びている」(ヒラキ)、「支出のウェイトについて、レジャーなど他の項目が大きくなると予想している」(白鳩)、「買い物のリアル回帰や2024年問題の懸念がある」(全日空商事)、「お客様のマインドが旅行に流れている印象。物価の上昇によって横ばいもしくは縮小傾向にある」(プラグイン)といった見方があった。

 このほか、「市場そのものの競争激化と、リアルや体験などとの競合により厳しい環境になる」(アサヒグループ食品)、「参入が増えるがコスト面での課題がある」(テレビショッピング研究所)などがあった。加えて、「円安のままだと条件面の悪化が解消されず、価格訴求や商品開発に影響する」(ロッピングライフ)、
「物価高騰や円安の影響が続き、景気の不透明さがある。通販市場でも同様な傾向が考えられる」(ハーバー研究所)とした。

 なお、「縮小する」と回答した企業からは「家庭で過ごす時間が減少。趣味の多様化」(タキイ種苗)といった声が上がった。

2-〈消費動向〉「上向き」「横ばい」が増加も、シビアな状況続く予想に

 アンケートでは「現状の消費動向についてどう捉えていますか」と質問し、「上向き」「下向き」「横ばい」の中から当てはまるものを選んでもらった。有効回答数のうち、最も多かったのは「横ばい」で54%となり、前年同期の調査から24ポイントの大幅拡大となった。「上向き」との回答は21%で、前年同期の調査から8ポイント上昇した。一方で「下向き」は25%で32ポイントの大幅縮小となった。コロナ禍からの回復を実感している事業者が多いようだが、昨今の物価高や円安の影響が続くとしてシビアな見方が根強い。(グラフ2参照)

反動で小売が回復基調に

 各社のコメントを見ていく。「上向き」と回答した企業からは「小売業の回復基調が力強い」(世田谷自然食品)、「コロナからの反動があると感じている」(ニッピコラーゲン化粧品)、「海外でもみられたようなコロナ禍からの経済再開による消費の再開は国内でも発生すると考えられる」(オイシックス・ラ・大地)など、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられたことが消費動向のプラスの要因になっていると指摘している。

 「下がっている」と回答した理由の多くは、物価高による値上げの影響を挙げている。「食品や生活用品の価格高騰が著しい」(白鳩)、「物価が高騰しているが、ほとんどの方は収入の変化がない」(プラグイン)、「節約志向が高まっている」(ヒラキ)と指摘する。また、「物価高を背景に、趣味への費用が減少する」(タキイ種苗)など厳しい見方があった。

 そうした中で「購入意欲は上昇する。一方で消費者の選択は厳しくなり、価値があるものや他にないものが求められる」(アサヒグループ食品)といった課題の指摘もあった。

物価高で節約志向が浸透

 次に、「横ばい」と回答した企業のコメントを見る。「旅行やレジャーへの消費意欲は高まっているが、通常の生活の中での自己需要品の購入意欲が高まっているとは言えない」(全日空商事)、「行動制限が解除され、レジャーやエンタメへの積極的な投資が目に見えてきている。一方で衣料品は特に今までの制限もそこまで感じられていなかったということもあり、どちらかというと横ばい」(バロックジャパンリミテッド)、「アフターコロナの生活スタイルが定着したため大幅な売り上げの落ち込みはみられないが、全体をけん引するようなヒット商品が出てこないので現状維持が続く」(ロッピングライフ)など、コロナ禍にあった外出制限の反動で消費が活発化していることを捉えつつも、通販やECで取り扱いの多い商材に対する消費意欲の低迷を予想するコメントが目立った。

 また、物価の高騰の影響も大きいよう。「経済活動の正常化が期待されたが、一方で、物価高騰および円安の影響が続くと考えられる。景気の不透明な状況が続くと予想され、通販市場でも同様だろう」(ハーバー研究所)、「物価高のダウンが大きな要因。半面コロナ禍が終わって多少財布のひもが緩んでいる面もある」(ジェイドグループ)、「家計のパイが増えない中で燃料費等の負担を警戒しつつも、少しずつ消費欲求を満たす買い物は増えるのではないかと予想する」(アプロス)とするコメントがあった。

 このほかに、消費者の節約志向を指摘する声も多くあった。「コロナが収束し外国人観光客の受け入れや、企業活動、イベントが再開された一方で、物価高による消費者の節約意識も高い」(アスクル)、「すでに消費に対する意識はシビアな状況が続いており、価値あるものみ消費される。節約志向も浸透している」(migthy)など、今後もこうした傾向が続くといった見方もある。このほか、市場環境を鑑み、「質を求める層の取り込み」(テレビショッピング研究所)など課題を指摘するコメントもあった。

3-〈現状の課題〉新規顧客の獲得と既存顧客の満足度が上位

 アンケートでは「通販・通教を展開する中で、現在の課題、今後課題になると捉えている点」についても質問し、複数の選択項目から回答企業にとって重要度が高い順に3つまで選択してもらい、選択項目を本紙が集計して独自にポイント化して順位を付けた。その結果、有効回答を得られた企業のうちで最も多かった回答は「新規顧客の開拓」だった。一方、「人材確保」は前回の5位から順位を上げており、人手不足の影響が深刻化している状況を窺わせる結果となった(グラフ3参照)。

1位は「新規顧客の開拓」

 1位は「新規顧客の開拓」(昨年8月に実施した前回調査の順位・1位)だった。企業の回答では、通販市場の競争激化を理由に挙げる声が多かった。「通販利用者の増加で参入企業も増加しているため」(白鳩)、「ファストファッション含む関連企業が台頭している中、自社のファンになっていただく新規客の開拓が重要」(バロックジャパンリミテッド)、「既存顧客の減少分以上を新規顧客で補う必要がある」(mighty)などのほか、「単なる集客ではなく、長く共感を得られるような価値ある商品・サービスを開発しなければECでは買われない」(アサヒグループ食品)などの意見もあった。

 また、「(今までは楽器経験者を対象に訴求してきたが)今後は新たに楽器を始める層を獲得する施策が必要」(プラグイン)、「顧客の若返りに重要」(てまひま堂)など、ターゲット層の拡大や潜在層の掘り起こしを重視する声も見られた。

2位は「既存顧客の満足度」

 2位は「既存顧客の満足度」(前回調査2位)。企業の回答では既存顧客に対するサービス拡充の重要性を指摘する声が目立った。「既存顧客の満足度を上げて流出を防ぐことも非常に重要。サービス拡充など、いかに長くファンでいてもらえるかを常に考える必要がある」(バロックジャパンリミテッド)、「顧客視点のサイト運営でCVRを高め、信頼感のあるサービスを提供することがリピーター獲得にも繋がる」(全日空商事)などだった。

3位は「商品の開発・育成」

 3位は「商品の開発・育成」(前回調査3位)。主な回答では、「新たな商品を開発して主力商品とする。また、新たな年代の顧客を獲得するため」
(八幡物産)、「低価格だけでなく、機能性など付加価値のある商品開発が課題」(ヒラキ)、「ヒット商品を生み出し続ける」(テレビショッピング研究所)、「他では買えない、自社ならではのオリジナル商品開発がカギ」(全日空商事)などだった。

4位は「人材確保」

 4位は「人材確保」(前回調査5位)。主な回答では「次世代の人材の確保と育成が必要だが、人口減少傾向の中で簡単ではないと感じる」(ニッピコラーゲン化粧品)、「倉庫、物流センターにおける人材不足・確保への対応」(ユナイテッドアローズ)、「事業拡大に伴う人材が集まりにくいため」(ロッピングライフ)、「人材確保が最も大きな問題」(アサヒグループ食品)などだった。

5位は「ウェブ集客」

 5位は「ウェブの集客」(前回調査4位)。主な回答では「オフラインに頼らない、ウェブでの集客拡大が目下の課題」(アプロス)、「紙からウェブへの比率が高まる中、ウェブ集客による売り上げの積み重ねが必須」(タキイ種苗)、「ウェブ顧客は客単価が低い傾向にあるため、集客だけでなく客単価の引き上げも課題」(ハーバー研究所)「弊社はショッピングサイト経由の売上がメインなので、今後は自社サイトへの集客に注力していく」(プラグイン)などだった。

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