楽天が仮想モール「楽天市場」における商品検索ロジックを変更する。同社が進めている「ユーザーレビューの質向上」への取り組みの一環で、ユーザーへの対応が良い店舗などが検索で優遇されるというもの。モール内の商品検索は店舗にとっては売り上げに直結するだけに、影響は大きそうだ。
レビュー投稿者の“質”を重視
楽天市場内の商品検索については、「広告を多く買った店舗には優遇措置があるのではないか」など、一部では無責任な噂も出ていた。同社の河野奈保執行役員は「噂が噂を呼ぶような部分もあるのは承知しているが、商品検索ロジックについては、社内でも知っているのはごく一部でECコンサルタント知らない」と、公平性を保っていることを強調。その上で「一般的なSEO対策は必要だが、今後はユーザー対応が重要になっていく」とした。
今後のカギになってくるのが「ユーザーレビューの質」だ。「レビューの件数が多いと楽天市場内で検索上位にくるのではないか」と考えている店舗は多いようだが、河野執行役員によれば、かつてはそうしたロジックがあったものの、現在重視しているのはレビューの件数ではなく中身であり、特に投稿したユーザーの“質”だという。「レビューの質重視の取り組みはすでに始まっており、『とにかくレビューの数を集める』施策には意味がない」(河野執行役員)。
では、ユーザーの“質”とは一体何なのか。重要になってくるのは「誰がレビューを投稿したのか」ということ。つまり、ヘビーユーザーによるレビューと、サクラ投稿の可能性もある誰だか分からないユーザーのレビューでは書き手の質に差があるわけだ。
さらにレビュー内容も重要になってくる。2014年末からこうしたロジックを設計しはじめ、徐々に動かしており、「楽天市場内の検索やレビューにおける総合評価(星の数)にも影響している」(河野執行役員)という。
店舗・ユーザー双方に恩恵
楽天ではさらに「良い店ほどナビゲーションが優遇される」という取り組み、名づけて「スマイルプロジェクト」も15年1月から実施している。
具体的には、「ユーザー対応について評価の高い店の商品は検索上位に来る」というもの。逆に、サポートなどで課題が見つかった店に対しては、サポートの仕方などをECコンサルタントと一緒にアドバイスしていくという。
「良い店」の判断基準については、店舗レビューやユーザーからの問い合わせ状況などを総合して判断することになるが、レビューはユーザーが真実だけを書いているとは限らないわけだ。もし間違った情報をもとに「良い店ではない」と判断されては店舗としてもたまらないだろう。
河野執行役員は「レビューの中身やどんな書き手かということはきちんと見ているし、例えば『悪天候で商品が届かなかった』というような仕方のない状況は当社も把握できるので、大きくブレないようになっている」と説明。
さらに「対応が悪い店にペナルティーを与えるということではなく、正しいアクションをしている店には恩恵がある、ユーザーとお店双方が『Win-Win』になるようなプロジェクトにしていきたい」(河野執行役員)と意欲的に語る。
「不正レビュー」の効果なくす
楽天では3月、大阪市のECマーケティング会社を相手取り、損害賠償を求める訴訟を大阪地方裁判所に起こしている。一部報道によると、この会社は、購入者を装い好意的なレビューを投稿し、店舗の評価をあげる「サクラ」を「楽天市場」内で行うサービスを手がけていたという。
楽天でもモニタリング強化を進めているが、「投稿者の質重視」「評価の高い店は検索優遇」という施策は、不正レビューの効果をなくすために一歩進んだ取り組みと言えそう。店舗が不公平感を抱かないようなシステム構築が前提となるが、新たなロジック導入で有力店舗の売り上げや売れ筋商品に違いが出てくることはあるのか、注目したい。