訴求アップさせるECの仕掛け方

モノ余り時代にあって、消費者に商品購入を促すには“気持ちを動かす仕掛け”が必要だ。新しいアプローチや売り方で効果的に訴求力を高め、販売増や新顧客獲得につなげようとチャレンジしているEC実施事業者の注目すべき取り組みを見てみる。

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消費喚起を促す次の一手は?

【事例① ZOZO】

体型データで最適サイズ提案PBからブランドとの協業へマルチサイズで新客開拓も

2型合計 64 サイズで展開する「リーバイス」のジーンズは東京・青山のオフィスに全サイズを展示している

ZOZO(ゾゾ)は、体型や足のサイズデータを活用して顧客一人ひとりに合ったサイズ提案を行うことで、ファッション商材の新しいオンライン購入体験を提供していく。同社初のPB(プライベートブランド)事業は失敗したが、転んでもただでは起きないゾゾの本領発揮となるか注目を集めている。

ゾゾは、PB事業を縮小した一方で、ゾゾタウンの出店ブランドが企画する商品をマルチサイズ展開してゾゾタウン上で販売するMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業を19年秋に始動。ゾゾユーザーがお気に入りブランドの服をより自分の体型に近いサイズで購入できるようにするもので、アイテムによって20~50サイズ程度で展開する。当該事業では、採寸用ボディースーツ「ゾゾスーツ」で得た100万件以上の体型データを活用しており、ユーザーは身長と体重を選択するだけで最適なサイズのアイテムを購入することができる。

20年3月11日時点におけるMSP事業の協業ブランドは「フリークスストア」や「ジャーナルスタンダード」「アーバンリサーチ」「アースミュージック&エコロジー」「チャオパニック」など人気の25ブランド、商品型数は累計176型で、パンツやスカート、ワンピースといった丈感が重要になる商品カテゴリーが多く、試着なしでのサイズ選びが難しいアイテムのニーズが高いという。

購入者の男女比はゾゾタウン利用者の男女比(男性32%、女性68%)と大きな違いはなく、購入者からはS、M、Lではなく多くのサイズの中から自分に合ったものを選ぶことができる点や、身長と体重を入力するだけで簡単にサイズが選べ、実際にサイズが合う点などを評価されており、とくに低身長や高身長などサイズに困っていたユーザーからの反響が大きいようだ。

MSP商品の返品率については数%程度だが、同社では安心して購入してもらえるよう、サイズが合わなかった場合は返送料の負担なく無料で返品してもらい、買いなおすことができるようにしている。これまでの返品の主な理由は「特定の部位のサイズが合わなかった」というケースが多いという。

マルチサイズの対象商品は全ブランド全商品でサイズ規格を統一しているため、自分に合うサイズを見つけられれば、その後は同じサイズの商品を購入すれば“どのブランドでもサイズが合う”という利点がある。

同社によると、MSP事業を始めて改めてサイズに困っているユーザーが多いこと、マルチサイズのニーズが高いことが分かったという。また、自分の好きなブランドの服を自分に合ったサイズで買えることに対するニーズも非常に高く、ブランドと協業してマルチサイズ商品を展開することで、これまではサイズが合わないという理由で購入していなかった顧客のニーズに応えることができ、新規顧客の獲得にもつながっているという。

同社では今後も「マルチサイズ商品の品番数拡充とサービスレベルの向上を図り、より多くのニーズに応えていきたい」(木地谷真治MSP商品開発本部本部長)としている。

靴の専門モールを開設

足の 3D サイズを簡単に計測できるゾゾマット

また、ゾゾは20年3月4日、靴専門のECモール「ゾゾシューズ」をゾゾタウン内に開設した。足の3Dサイズ計測が可能な「ゾゾマット」で顧客一人ひとりに合ったサイズを提案するとともに、靴に特化した検索機能や独自の記事コンテンツなどで靴選びを手助けし、“もっともシューズが買いやすいEC”を目指すとする。ゾゾマット対象シューズは約100種類でスタートしたが、順次対象を広げて靴カテゴリーの取扱高拡大につなげる狙いだ。

「ゾゾシューズ」は、ゾゾマットで計測した足の3Dサイズデータをもとに、対象シューズの各サイズに対してサイズ感に満足できる確率を“相性度”として表示する。

マットの上に足を乗せて周囲をスマホカメラで撮影。マット全体に施されたドットマーカーを読み取って3Dサイズを計測する。計測時は音声案内に従って片足ずつ撮影を進めると、足長と足幅、足囲など複数箇所をミリ単位で計測できる。ゾゾスーツの教訓を生かし、技術検証は延べ6万回、5000時間以上を費やした結果、ゾゾマットと3Dスキャンによる計測との誤差は平均1.4mmで、高精度の計測を自宅にいながら簡単に行える。ゾゾマットで計測してサイズが合わなかった場合は返品・交換にも対応するという。

ゾゾマットの注文は3月12日時点で100万件を突破。同社は2月27日から順次、無料で配布を始めているが、発送開始からの2週間で計測者数も30万人を超えたという。また、ゾゾマット注文者の約4割が過去にゾゾタウンで一度も靴を買ったことがないユーザーのようだ。

ゾゾタウンは洋服を探すのに適したサイト設計や検索UIだが、「ゾゾシューズ」は靴に特化。ブランド名やカラーによる検索だけでなく、ビジネスやパーティーなどのシーン別、撥水、防水といった機能など靴に求めるニーズで探すことができる。今後はソールの厚みや滑りにくさでの検索機能や、靴を360度回転して閲覧できる画像表示なども計画している。

また、独自コンテンツの特別ページを通じて靴の魅力を深く伝える考えで、定番シューズブランドや、ベストセラー商品、トレンドアイテムの魅力を掘り下げて紹介する。2019年(1~12月)におけるゾゾタウンの靴カテゴリーの商品取扱高は前年比2桁増となる約400億円で、「ゾゾシューズ」の開設とゾゾマットを使った靴の新たな購入体験を提供することで、「1000億円を超える靴売り場にしていきたい」(伊藤正裕取締役兼COO)としている。

「ゾゾシューズ」の1万足プレゼントキャンペーンを告知するタレントの Matt さん

ゾゾのPB事業は縮小を余儀なくされたが、採寸用スーツという新技術と、未経験の服作りを組み合わせたことが失敗の原因と分析。「ゾゾシューズ」はゾゾマットとすでに扱っている靴とをマッチングさせ、サイズに対する不安を取り除いてEC購入を促すサービスだ。靴ブランドと連携したコラボ商品は検討してているものの、ゾゾが独自で靴のPBを展開する考えはないとする。

また、同社は19年12月中旬、「PayPayモール」にゾゾタウンを出店しているが、「ゾゾシューズ」はゾゾダウンだけのサービスとして展開する考えだ。なお、「ゾゾシューズ」のオープンを記念して1万人にゾゾマット対応商品の中から好きな靴をプレゼントするキャンペーンを4月15日まで実施中で、キャンペーンキャラクターにはタレントのMattさんを起用した。

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【事例② ゴルフダイジェスト・オンライン】

クラブのマッチング提案 利用者データの活用も図る

【事例③ ジョルダン】

商品サンプル置けるデジタル看板 で EC へ誘導、リアルから新客獲得

【事例④ ヤフー】

注文から“最短30 分”で 商品お届け 自転車で超即配ECサービス

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