ファッションECとその関連サービスでAIを使った画像検索機能を導入するケースが増えてきている。とくに取り扱い点数の多いECモールなどでは、気になる商品をカテゴリーや色、素材などで絞り込んで検索しようとしても数多くの商品が表示されてしまうが、AI画像検索を使うと雰囲気が似ている商品から目的のアイテムにたどり着きやすい。AIによる類似商品の検索を利用すれば、利用者はアイテムの再検索の必要なくニーズに合う類似商材の見比べができることから、AIの精度いかんではECの商品検索やレコメンドの新しい手法として定着しそうだ。
マガシークは2サイトに導入
マガシークは、NTTドコモと共同運営する衣料品通販サイト「dファッション」にAI画像検索機能を導入しており、ユーザーから商品選択の幅が広がると好評だという。同機能は、商品詳細ページの商品画像右下にある「似た商品を探す」ボタンを押すと、画像認識ソフトでサイト内にある似た商品が数十点表示される仕組みだ。
元々はユーザーが保存したインスタグラムの写真やファッション雑誌で気になった商品を写真に撮って似たアイテムを検索する使い方だったが、スマホカメラを起動する手間もあって利用率が伸びなかったため、「似た商品を探す」ボタンを付けた結果、利用率がそれ以前の約10倍に、同検索経由の売上高は約20倍となり、購入率でも成果があった。
当初、マガシークはファッション通販サイト「マガシーク」でも別のエンジンを実装してテストしてきたが、「dファッション」に導入したエンジンの方が精度が高かったため、2020年4月1日に「マガシーク」サイトにも同じエンジンを実装し、AI画像検索サービス「MAGASEARCH(マガサーチ)」としてスタートした。
「マガサーチ」は、「dファッション」でのサービスと同様に、閲覧中のアイテムや、その場で撮影した写真やフォルダに保存してある画像を取り込むことで、「マガシーク」内で販売している当該アイテムと類似する商品を検索し、購入することができる機能だ。また、検索結果に出てきたアイテムは「似ている順」や「価格が安い順」「価格が高い順」に並び替えることもできる。
閲覧中のアイテムと類似する商品を探す場合は、商品詳細ページの商品画像右下にある「似た商品を探す」ボタンからすぐに検索可能だ。また、その場で撮影した写真やスマホに保存されている画像と類似したアイテムを検索したい場合は、「マガサーチ」のページから「写真を選択する/撮る」をクリックし、気になるアイテムを撮影したり、保存画像を選択することで、似た商品を「マガシーク」内から検索できる。
AIは選んだ画像からトップスやパンツ、靴などの商品カテゴリーを自動認識し、カテゴリーごとに似ている商品を一覧で表示するほか、同じアイテムを選択したままレディースとメンズを切り替えて表示することもできる。
ユーザーは「マガサーチ」を利用することで、例えば、ハイブランドのアイテムに似ているプチプラ商品を探したり、インスタなどのSNSで気になった商品を探すこともできるほか、似たようなアイテムで恋人とペアルックを楽しみたいときなどにも有効だ。
AIで髪型別コーデを表示
一方、ZOZO(ゾゾ)子会社のZOZOテクノロジーズは4月7日、運営するファションコーディネートサービス「WEAR(ウェア)」で、AIを活用して髪型からコーデを検索できる新機能を実装した。まずはウェブサイトで展開するが、今後はアプリへの機能追加や、髪の色を考慮した検索、髪型からファッションアイテムをお勧めするレコメンドエンジンの開発も予定しているという。
新機能の「髪型別コーデ検索」は、ロング、ミディアム、ボブ、ショート、ポニーテール、おだんごの6つのカテゴリーから髪型を選ぶことで、それぞれの髪型をした人のコーデを閲覧でき、「カジュアル」や「ワンピース」といったキーワードでの絞り込みも可能なため、より自分の好みに合ったカテゴリーのコーデを検索できる。
同社調査では、20歳~35歳の女性約75%が髪型を変えた時や変える前に、どんなコーデが似合うのかを知るためにネット上で髪型別のコーデを検索した経験があるという。ただ、ウェブ上は情報量が多く理想の画像を探しづらいことから、こうした課題を解消してスムーズに髪型別コーデを検索できるようし、髪型の変化に合わせたファッションを楽しめるようにした。新機能はZOZO研究所福岡が開発した画像解析技術を使用しており、AIが画像から顔部分を抽出して髪型を判断する。その際、さまざまな角度から見た各髪型のシルエットを登録しておくことで、画像に写っている顔の向きを考慮しながら髪型を判断して精度の高い検索を実現したという。
これまでも髪型でコーデ画像を検索することはできたが、投稿者の登録情報に頼る部分が大きく、例えば、ロングヘアーだったユーザーが髪型を変えたとしても、登録情報を編集していなかったらロングヘアーのまま検索にひっかかってしまうため、検索精度としては十分ではなかったが、AIを使用することで検索にヒットする量と質を同時に高めることができるという。