ゾゾを追うファッションECモールの次の一手

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独自路線で生き残りを図れ!

衣料品を中心としたファッションEC市場は長く、ECモールを運営するプラットフォーマーがけん引してきた。ただ、近年は有店舗アパレル企業が自社ECの強化に本腰を入れてネット販売チャネルでの売り上げを伸ばしており、足もとでは実店舗とECの垣根をなくしたOMOを志向して市場での存在感を高めようとしている。今後、特徴のないファッションECモールは淘汰されることが必至な中、圧倒的な知名度と取扱高を誇るゾゾタウンを追うキープレーヤー3社の戦略を見ていく

消費喚起を促す次の一手は?

【事例① マガシーク】

2サイトを軸に規模拡大へ
自社カード会員の開拓強化

ファッション好きのためのサイトとして安定成長を目指す「マガシーク」のトップページ

マガシークは、運営するファッション通販サイト「マガシーク」と「dファッション」の2サイトを軸に成長を目指す方針だ。

ファッションEC市場ではポイント合戦、値引き合戦が常態化し、消費者も何らかのインセンティブがないと購入をためらう傾向が強い中、「マガシーク」でも割引クーポンの発行など、その場でお得を感じられる施策を実施してきたという。また、配送運賃上昇に伴い、送料は2019年4月と20年3月に税別100円ずつ値上げして同400円とした。一方、「マガシーク」では顧客都合であっても返品送料が無料となる「おうちde試着」サービスが好評なため、返品無料は継続して取り組む。

ファッション商材も複数サイトで賢く買い物をする人が多いことから、「マガシーク」ではウェブ広告で新規流入を図るよりは、休眠客や購入頻度の低いユーザーがサイトを訪れた際に購入しやすくするクーポンやポイント施策に比重を置いている。

また、前期(20年3月期)は購入頻度の高いマガシークカード会員の獲得にも力を注いだ。同カードは入会金・年会費無料でいつでも全品送料無料となるほか、年4回開催の全品10%オフなどの特典が受けられる。送料が上昇傾向にある中、お得感のある同カードの会員数は前年比50%程度増えた。

同社では“送料無料”を前面にマガシークカード会員の獲得を図り、自社カード会員の割合を高めたい考え。今期はロイヤルティプログラムのテコ入れにも着手し、「ヘビーユーザーに手厚いサイトにしていく」(井上直也社長)方針で、カード会員を含めた「マガシーク」のコアなファンを育成する。

一方、新客開拓とライトユーザーの獲得は「dファッション」がメインエンジンとなる。NTTドコモが原資負担するdポイントを軸にしたキャンペーンが効果的で、「dファッション」の新規比率は引き続き高いようだ。

ファッションECはドコモとソフトバンクグループ、楽天といった携帯キャリアによるポイント経済圏の戦いになりつつあり、「dファッション」はdポイントを使ったり貯めやすいファッション専門の売り場として存在感を高めたい意向だ。

「マガシーク」は、ゾゾタウンがマス化する中、空白地帯になりつつある高単価でファッションにこだわりがある層に照準を当てることで、安定的な成長を目指しながら、「dファッション」とのすみ分けを図る。

「マガシーク」の強化カテゴリーは以前から強いフェミニン系やキャリア系ブランド、セレクトショップに加え、子どもを持つ女性顧客が増えているためキッズを強化。2月にはレディースからキッズを独立させて、レディース、メンズ、キッズという3つの商品軸で検索できるようにした。

MDのチーム体制については、4つある部署のうち、現状では3つが「dファッション」の本部に属している。「マガシーク」のMDは従来の取引先がメインで、「dファッション」のMDはメンズやスポーツ系、ウェブブランドなどを含めて新規ショップを積極的に開拓。新規ショップの8割以上が「dファッション」を中心に販売するショップだという。

成長をけん引する「d ファッション」はポイント施 策などで新客開拓を推し進める

物流コスト削減にも注力

機能やサービス面については、「dファッション」のAI画像検索機能が好評で、「マガシーク」でも4月から同じエンジンを実装した。同機能は商品ページの商品画像右下にある「似た商品を探す」ボタンを押すと、画像認識ソフトでサイト内にある似た商品が数十点表示される仕組みだ。元々はユーザーが保存したインスタの写真や雑誌内で気になった商品を写真に撮って似たアイテムを検索する使い方だったが、スマホカメラを起動する手間もあって利用率が低かったため、「似た商品を探す」ボタンを付けた結果、利用率が約10倍、同検索経由の売上高は約20倍となり、購入率でも成果があった。

今後はドコモグループの強みを生かし、ウェアラブル端末など新しいテクノロジーを活用した次世代型ECに取り組む考えで、服の新しい探し方、買い方をコンセプトに、2サイトに機能追加したり、アプリへの機能搭載などを行うようだ。

また、顧客のロイヤル化に向けてはカード会員を重視する施策に加え、洋服を買うだけでなく、いろいろな付加価値を提供できるサイトを目指す。詳細は明らかにしていないが、今期は「マガシーク」や「dファッション」の利用者に対して競合サイトにはないメリットを打ち出していく。また、アプリユーザーもロイヤルティが高い傾向にあるため、今期中にスクラッチで「マガシーク」アプリを作り直す計画だ。

一方、ブランドの自社EC構築や運営支援を手がけるECソリューション事業の受託数は21サイトまで拡大しており、利益面にも貢献する事業として強化している。これまでは小規模サイトを受託するケースが多かったが、10億円以上を売るサイトも獲得でき体制を整備。今期は同事業の拡大に向け、人員を含めて経営資源を投入する。

物流面では、神奈川県座間市の倉庫(約2万m2)に加えて18年9月に同県綾瀬市に約8000m2の倉庫を借りた。次の増床は検討中だが、家賃相場が上昇しているため、倉庫家賃が安いエリアでの拡張も考えているようだ。

物流費削減に向けては、預かる商品を減らして効率化する。現状、同社倉庫で在庫を抱えず、注文が入ってから取り寄せる商品が半分程度になってきている。ブランド側も在庫を分散させずに一カ所で管理したいというニーズがあり、取り寄せ比率が高まれば倉庫面積は減らせるため、増床はECソリューション事業の受託件数次第ということになりそう。

また、20年3月に新しいマテハン機器を導入して人件費の削減につなげる。取り寄せ商品はこれまで、倉庫に入ってきた在庫を一度、棚に入れてピッキングしていたが、入庫した商品を棚に入れることなく出荷ラインに回すようにする。同社では、19年秋にも段ボールの自動封函機を導入して梱包能力の改善につなげた。今回のマテハンと合わせて約2億5000万円の投資を行ったが、5年間で5億円以上のコスト削減を見込んでいるため、2年半でコストを吸収できる見通しだ。

なお、マガシークの前期は「dファッション」が全体をけん引し、前年比10%近い伸びで推移。ただ、暖冬の影響でアウター類が振るわなかったことや、3月は新型コロナウィルス問題で消費ムードが落ち込んでおり、商品取扱高は目標の300億円には届かず、290億円前後で着地する見込み。21年3月期の取扱高は前年比約10%増を目指す。引き続き、「dファッション」の成長率が「マガシーク」を上回り、今期は「dファッション」の売り上げが「マガシーク」を超えると見られる。

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