景表法処分取消訴訟、アマゾンジャパンが控訴か ――東京地裁が消費者庁の主張受け入れ一審敗訴

景品表示法による処分の取り消しをめぐり、アマゾンジャパンが控訴したとみられる。東京地裁は19年11月15日、消費者庁側の主張を全面的に認め、アマゾンの請求を棄却していた。すでに控訴期限は経過しているが、アマゾンは「回答を控える」として、控訴の有無を明らかにしていない。ただ、複数の関係者がアマゾンの控訴の事実を認めている。

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「指図に従い機械的に表示伝達しただけ」

アマゾンは「製造者(プラス)こそ表示主体者」と 主張

消費者庁は17年12月、不当な二重価格表示で景表法に基づく措置命令(有利誤認)を下した。事務用品大手のプラスから仕入れ、販売していた「クリアホルダー(100 枚入り)」で「参考価格9720 円(90%オフ)」など、実際の販売価格と比較して安いかのように表示。だが、「参考価格」は製造業者が社内の管理上、便宜的に定めた価格で消費者への提示を目的としていないものだった。処分を不服としたアマゾンは18年1月、処分取り消しを求め、消費者庁を提訴した。

裁判では、「表示主体者が誰か」を争点に双方が主張を戦わせた。

景表法上の表示責任を負う「表示主体者」は、①自ら、または他の者と共同で表示を決定した者、②他の者が決定した表示について、その事業者からの説明を受け入れ了承し、その表示を自己の表示とすることを了承した事業者、③他の事業者に表示の決定を委ねた者──が対象になる。

アマゾンが運営するサイトは、「ベンダーセントラル」と呼ばれる管理画面を通じて仕入先の事業者が自ら商品登録する。「メーカー希望小売価格」がある場合、仕入先が任意で入力。これが比較対照となる「参考価格」になる。

登録がプラス、販売がアマゾンであるため、「プラスが決定した表示をシステム上で伝達し、指図に従い機械的に表示したに過ぎない」というのがアマゾン側の主張。また、プラスが高い割引率の表示により売り上げ拡大を意図して入力したものだとして「製造者(プラス)こそ表示主体者」と指摘した。

一方、消費者庁は、二重価格を表示するサイトの仕組みを構築したのがアマゾンであることや、商品仕入先のプラスの供述などを背景に、アマゾンが「表示主体者」と主張した。

「全く表示しない選択肢もあった」

だが、判決は、処分を妥当とするものだった。アマゾンには、一定の要件や基準に沿って「あらかじめ二重価格が表示されるようなサイトの仕組みを構築し、機械的に表示するようにする」、「全く表示しないようにする」という選択肢があり、こうした表示の有無を自由に決定できる立場にあったところ、前者を選び、表示を行ったためだ。

アマゾンは、「商品の多さから各表示の可否を個別に判断できない」、「入力する価格は希望小売価格に限定していた」、「そのために仕入れ先や出品者に表明保証を得ていた」といった主張も展開している。ただ、いずれも二重価格が行われる仕組みを構築せざるを得なかった理由にはならないとした。管理できないのであれば、「参考価格を全く表示しない」という選択もできたはずであるのに、アマゾンはそれをしない道を選んだというのが司法の判断だ。

敗訴で余儀なくされるビジネスモデル転換

法廷でアマゾンは「店舗流通」と「EC」で異なる〝表示〟にも理解を求めている。リアル店舗は、仕入れや小売が作成した表示物が物理的に区別されるのに対し、ネットはサイト上の1枚のページに取り込んで一体となっているため、「価格入力の仕組みを提供しただけの小売による表示と評価されてしまう」というものだ。各チャネルの特性を考慮しなければ、ネット小売の責任を過重に評価することになるとの懸念を主張した。ただ、これも「最終的に表示するか否かの決定権はアマゾン側にあった」としてその主張が退けられた。

アマゾンは数億点もの商品を扱い、国内の年間流通総額も2兆円を超えるとみられる。仕入先に委ねていた入力情報の厳格な管理を求められれば、膨大な管理コストが発生することになる。その軽減を図り、利用企業に対する規約の改定など行う可能性もあるなど、ビジネスモデルの転換を余儀される。控訴の背景にもこうした事情がありそうだ。

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