効果的に商品をオススメする方法は? ニューノーマル時代のEC接客術

 コロナ禍が小売事業者の“接客”のスタイルを変えている。感染予防の観点からリアルではなく、いかにネット上で顧客に対して効果的なアプローチをして購入に結び付けられるか。通販専業はもちろん、コロナ禍でECに本腰を入れ始めた店舗小売事業者も試行錯誤を続けている。注目すべき各社の取り組みとは。

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事例1:パルコ

ライブコマースイベント開催
店頭などから中国向けに配信

渋谷パルコの特設会場に「ショップショップス」のホストが集まってファッションアイテムを提案した

事前の配信でも成果

 アパレル企業やコスメなどでライブコマースの事例が増えているが、商業施設としての取り組みも出てきた。パルコは10月20日~23日、渋谷パルコで出張型ライブコマースアプリ「Shop-shops(ショップショップス)」と組んだ大型イベント「SHIBUYAPARCO×ShopshopsSPECIAL4DAYS」を開催した。

 「ショップショップス」は、“ホスト”と呼ばれる出演者がブランドの店頭に出張し、店内から中国を中心とする海外の視聴者に向けたライブ配信を行う。視聴者は同アプリを通じてリアルタイムで紹介された商品を購入できる仕組み。

 今回のイベントは、渋谷パルコに「ショップショップス」のホストが集まり、4日間にわたってライブコマースを実施したもので、商業施設としては初となる越境ライブコマースという。新型コロナの影響で海外の消費者の来店が難しくなる中、オンラインサービスを通じて中国の消費者に向けて販売を行い、来日できるようになった際に来店してもらえるよう渋谷パルコを宣伝した。

 イベントの初日、2日目は渋谷パルコに出店する日本の人気デザイナーズブランドを中心とした選りすぐりのショップ店頭からライブ配信したほか、3~4日目は渋谷パルコ内に設営した150m2の大型特設会場で、ジュンやベイクルーズ、マークスタイラー、三陽商会、アーバンリサーチ、エイ・ネットなどが手がけるレディースブランドが参加。ブランドごとに50~100点のアイテムをそろえた。

 今回の配信は中国本土が対象で、「ショップショップス」に所属して半年以上のライブ配信経験があり、ファッション感度の高い在日中国人のホスト9人が中国語で配信した。

 パルコは、「中国ではライブコマースが消費者に根付いている。『ショップショップス』の主要顧客層は20~40代女性で渋谷パルコとも合致する」(パルコ渋谷店営業課吉井達弥氏)こや、インバウンドに強い商業施設として積極的に海外へ発信することを重視し、同アプリと組んだ。

 また、これまでに渋谷パルコの複数のショップ店頭で同アプリを通じたライブ配信を行って実績が作れたことが今回の大型イベントにつながったという。

 「ショップショップス」で売れた商品は、ライブ配信終了後にアプリ運営会社が当該商品を各ショップで代理購入して中国の消費者に届ける仕組みで、店頭に売り上げが計上されるのも利点のひとつだ。

 今回のライブコマースイベントに参加したブランドも訪日客による売り上げが見込めない中で中国向けの新たな販売チャネルとして期待しているようだ。

 同アプリ自体はライブ配信中に値引き販売も行うが、今回の取り組みではブランド各社がセール品・キャリー品を提供し、最初から割引価格で販売した。

 パルコでは事前に渋谷パルコの「ウェイボー」アカウントなどを通じた集客施策を実施。大型イベントの売上高は公表していないものの、ライブ配信のセッション数は初日が1万2700、2日目1万3500、3日目1万6900、最終日が1万4900で、一定規模の視聴があったようだ。

「ショップショップス」のライブ配信画面  
画面が切り替わることなく紹介している商品を確認 できる

全国のパルコに拡大へ

 パルコによると、今後は渋谷パルコだけでなく、全国のパルコにライブコマースの取り組みを広げる考えだ。加えて、「ショップショップス」は各ショップの売り上げにつながるため、パルコのイベントに限らず、テナントショップが直接ライブコマースを行ってもいいという。

 パルコは、11月20日に大阪で心斎橋パルコが開業したのに先がけて、越境ライブコマースのイベントを開催。同店も本来であればインバウンド需要が見込める商業施設のため、渋谷店でのイベントと同様に主に中国向けのライブコマースを、心斎橋パルコ内のコミュニティー型ワーキングスペース「スキーマ」と、アパレルのショップ店頭から実施した。

 ショップ店頭からのライブコマースは渋谷店と同じ「ショップショップ」を活用し、11月18日~19日に同アプリのホストがリアルタイムで人気ブランドの商品を紹介した。また、スキーマの特設会場からは、中国向けのビジネス支援を行うLIAN(リアン)と新たにタイアップ。中国の巨大ECモール「タオバオ」を通じ、LIANに所属するインフルエンサーがライブコマースを実施した。

出張型で世界観を演出

 越境ライブコマースイベントでパルコが組んだ「ショップショップス」は2016年に米ニューヨークで事業をスタートし、現在は米国と中国・北京、東京にオフィスを構えている。ブランドなどのリアル店舗にホストが出張して店内でライブコマースを配信するため、視聴者は各ショップの世界観を味わいながら買い物を楽しめるのが強みだ。

 「ショップショップス」の累計登録ユーザー数は約100万人。1回4時間の配信でセッション数は平均5000~1万セッションで、流通額は2019年が約26億円。20年は新型コロナの影響でライブ配信ができなかった時期があったため、ほぼ前年並みの見込みという。

 同アプリの得意ジャンルはファッションと化粧品、中古ブランド品で、ライブ配信は約13の国・地域から中国向けをメインに行うが、20年10月からは米国向けに英語による配信もスタートしている。

 また、各国からの月間配信数は合計約700本で、日本からは約160本を配信している。日本の配信は1年半ほど前にスタート。「ショップショップス」の9割が女性ユーザーのため、女性が好む商材を中心に展開し、現在、日本での取引先はアパレル約50社、中古ブランド販売企業約20社など、80社程度だ。日本で抱えるホストは東京、大阪、福岡、札幌に住む40~50人の中国人で、それぞれに得意ジャンルがある。

 「ショップショップス」の日本唯一の代理店であるWARPDOORの高田純平社長によると、「中国では、ライブコマースは日常生活で当たり前のチャネルになっていて抵抗感がない。ライブ視聴から簡単なステップで購入でき、配送までの一連の流れもストレスがない」という。

 また、「中国のすごいところは本当に“消費者第一”で物事を考えること」とし、今回のイベントでも参加するブランドの意向に沿った提案ではなく、ホストが良いと思った商品や着こなしを勧めた。

[ この記事の続き… ]
事例2 三越伊勢丹
 リモート接客アプリを始動 EC 非掲載商品も販売
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  アバター活用した非対面接客 女性の下着選びをより気軽に

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