前号に引き続き、青山商事のEC戦略について見ていく。同社では昨年4月に組織変更を実施し、ECやデジタル戦略を推進するため、本部的機能を担う「デジタルコミュニケーションヘッドオフィス」を開設している。傘下にはEC事業部とデジタルマーケティング部を組み込んで、オンラインだけでなく、実店舗も含めて全体のデジタルをコントロールすることを図っている。
デジタルの強化はあらゆる面で成果が見られている。同社の場合、フレッシャーズの若年層がまず最初に買いに来てくれるという強みがあり、その後また、40、50代になってからも戻ってきてくれるケースが多い。一方で、30代前後の働き盛りの層への訴求には課題を感じていたとする。「そういった層に向けて、働く人のパフォーマンスを上げるための商品もたくさん作っているので、その情報が届いていなかった」(同社)とし、そこについてデジタルで補わなければいけない必要があったと振り返る。
そのために、まずは「インスタグラム」での広告を強化。特にUGC(消費者の手によって制作されたコンテンツ)も活用して、その情報をコンテンツ化していった。同時に「ツイッター」に関しても昨年は毎月リツイートキャンペーンを行って、同社の情報を知ってもらえる人を増やして拡散し、まず、第一想起をしっかりととって来店機会につなげていったという。「ツイッター自体は拡散力とリアルタイム性がある。単なる商品紹介ではなく、今、紹介する理由が必要。雨が降りそうな日にはウォッシャブル商品を露出するなど、単なる宣伝ではなく意味付けを行う」(同社)と説明した。
インスタに関してはそれを画像で伝える作業になるが、こちらについてはトレンドを見ながら、流行りも考えてコンテンツ画像を作るように特化。
インスタのアカウントについては昨年からレディース用、メンズ用などで分けて、ターゲットを明確にしてそれぞれに最適のコンテンツ作りを行うようにしている。特に昨年からはインスタライブにも力を入れており、宣伝だけにならないように、メディアと視聴者の相性を見ながら取り組んでいる。
インスタでのライブコマースに関しては、まずはインスタそのものと利用者属性の相性を考えてレディースで開始。インスタライブにおいては一例として、昨今のトレンドとなっている「ビジカジ」も踏まえて、仕事場ではどこまでのカジュアル服を着ていけるのかなどの疑問に対して分かりやすく解説。男性と違って職場のドレスコードの定義があいまいになりがちな女性の悩みを解決する一助となっている。
実際に出演して解説や商品紹介を行うのは実店舗の現場で働いている現役の販売スタッフなど。接客に長けたスタッフの力もあって、インスタライブでの販売は想定以上の成果となっているようだ。
また、インスタライブは販売目的以外にも顧客とのコミュニケーションに重きを置いた内容のものなど2軸で展開している。前述のドレスコードのような困りごとの解決に加えて、商品企画スタッフによる「秋冬に着たい色の候補選び」など、視聴者との双方向のやりとりから一緒に商品企画に関われるような内容でも展開した。
なお、ライブ視聴者に対しては、配信期間限定で使えるクーポンも特典として付与するなど、買いやすさや番組を楽しめる演出を実施。社内には専用スタジオも設けており、作業はほぼ内製化している。1回当たり、40分程度で、月に1~2回実施しており、ライブ中継だけではなく、アーカイブでの配信も行ってコンテンツ資産として積み上げている。