スマホ決済、中小加盟店向け手数料で攻防―「PayPay」有料化、「楽天ペイ」は1年間無料に

 ソフトバンクのグループ会社PayPayでは、スマートフォン決済サービス「PayPay」において、10月1日から同決済を導入する店舗から決済システム利用料(決済手数料)を徴収する。2018年10月のサービス提供開始以来、無料としていたが、同日以降は決済額の1.98%(税別)を徴収する。一方で、楽天グループの「楽天ペイ」やKDDIの「auPAY」は決済手数料を無料とするキャンペーンを始めており、加盟店拡大に向けて各社の動きが表面化している。

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従来の方針を転換

 PayPayでは中小店舗への決済手数料徴収開始に合わせて、「PayPay」のアプリ上で独自クーポンを発行したり、来店促進策を行うことができる月額1980円の加盟店支援サービス「PayPayマイストアライトプラン」を開始する計画で、同サービスの契約店舗は決済手数料を優遇して1.6%とする。さらに同サービス契約者には100万円を上限に最大半年間、決済額の3%を還元するキャンペーンを展開することで決済手数料徴収による加盟店離れなどの影響を軽減したい考えだ。

 決済手数料の変更は年商10億円未満の実店舗限定。コンビニなどの大手はサービス開始当初から、年商10億円超の実店舗からも20年4月から決済手数料(料率は未公表)の徴収を開始。年商10億円未満の中小店舗のみ、サービス開始後、3年間は無料という当初の方針から決済手数料を徴収してこなかった。

 かつてPayPayでは「(中小事業者から手数料を取っていないが)決済事業でビジネスモデルを作っているわけではないので、手数料ビジネスは目指していない」(2019年10月の記者会見における中山一郎社長の発言)としていた。

 なお、「PayPay」はネット販売事業者向けにEC決済としても複数の決済代行会社などを介して展開中だが、EC決済としてのPayPayは年商規模に関わらず、有料で決済代行会社によって料率は異なるが3~4%程度の決済手数料を徴収している。

8月19日の記者会見で有料化を発表するPayPayの馬場一副社長

楽天とKDDIは無料に

 楽天グループ子会社の楽天ペイメントは10月1日から1年間、運営するスマートフォン決済「楽天ペイ」において、年商10億円以下の新規加盟店の決済手数料を無料にすると発表した。楽天では1年間無料とすることで加盟店の拡大を図る。

 「中小店舗様応援!決済手数料実質0円キャンペーン」では、10月1日以降に「楽天ペイ」に申し込んだ年商10億円以下の加盟店を対象に1年間、QR決済の手数料を上限なしで全額キャッシュバックする。

 また、通常は「楽天銀行」以外の口座を売上金の振込先に指定した場合は、振込のたびに手数料が発生するが、キャンペーンの適用事業者には毎月1回自動で入金されるため、来年9月分までは振込手数料と同額をキャッシュバックする。

 楽天ペイメント楽天ペイ事業本部の小林重信本部長は、8月25日のオンライン記者会見において、「日本全国の街の店で『楽天ペイ』が使えるという状況を作りたい」とした上で、「楽天の優良な利用者を取り込むお手伝いや、キャッシュレスによる業務効率化のお手伝いをしたい。そのためにも機能をアップデートし、楽天ならではのデータ活用や、店舗に合った多様なサービスを提供していきたい」となどと述べた。

 8月30日にはKDDIが、スマホ決済「auPAY」の加盟店向け決済手数料を無料とするキャンペーンを、来年9月30日まで1年間延長すると発表。振込事務手数料も金融機関問わず無料となる。

 中小規模の加盟店に提供している「店舗が提示したKDDI発行のQRコードを消費者が読み込む決済」、もしくは「auPAYforBIZアプリ」のいずれかを利用している加盟店が対象で、契約の新規・既存は問わず、売上規模などの条件はない。

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