楽天、日用品の「まとめ配送」を開始

専用サイトでは台所用品や洗濯洗剤、飲料、化粧品、ペット用品、園芸品などを扱う

【2010年11月号】 楽天は10月5日、日用品を対象に複数店舗の商品を同梱して届けるサービス「楽天24(トゥエンティーフォー)」を開始した。同日付けで開設した専用サイトに出店する店舗が対象で、楽天は同サイトを運営して受注・決済などを担うほか、専用倉庫で対象商品を一括管理し、受注した商品をまとめて送れるようにした。同社の仮想モールでは従来、複数店舗をまたがって商品を購入した場合、それぞれの店舗で決済するために送料が高くなったり、商品が別々に届くなどの煩わしさがある。これを解消して低額の商品でも買い回りしやすくするのが狙い。ただ、早くも店舗側の手間や価格競争による体力低下を懸念する声があるほか、現状では対象店舗・アイテム数ともに少ないため、消費者の支持を得られるかが最大の焦点となりそうだ。

スタート時は12店舗1000アイテムと限定的

 

 新サービスを始めるに当たり、楽天は専用サイト「楽天24」を開設。参加店舗は同サイトにも出品する必要があり、当初はケンコーコムや爽快ドラッグ、エレコムダイレクトショップ、コスメスポット、激安ディスカウントワン、飲物屋、加藤珈琲店、キラット、ビューティーキャット、ねいる屋さん、ペッツビレッジクロス、fam(ファム)の12店舗、約1000点のアイテム数でスタートした。

 現在、「楽天市場」では約3万5000店舗、6500万点以上の商品を扱っていることからすると、新サービスの対象範囲は極めて限定的ないと言わざるを得ない。

 約1000点の取り扱い商品は、台所用品や洗濯洗剤、飲料、化粧品、ペット用品、下着、ヘアアクセサリー、園芸品、電球やプリンターインクといった家電消耗品など日用品を中心とした定番商品だ。これに加えて、定期的に特売品や季節に合わせたアイテムも販売する。

 ターゲット層は、日用品の購入をネットで簡単に済ませたいという共働きの夫婦や一人暮らしの若者、子どもを持つ主婦などで、これまでスーパーやドラッグストアで買い物をしていた層を狙う。

 送料は、購入金額3900円以上で無料、それ以外は全国一律240円。配送会社はヤマト運輸がメーンで、商品はすべて翌日配送サービスの「あす楽」(※対象地域は本州と四国のみ)や日時指定に対応する。

“定番品をネット最安値で”売る戦略は吉と出るか

 楽天としては、産直品や限定スイーツに代表される“お取り寄せ商品”など、これまでは非日常的なアイテムを中心に「楽天市場」で買い物を楽しんでいた消費者にも、普段使いできるサイトとして利用してもらいたいという思いもあるようで、そのためには、「送料も含め、ネット最安値に挑戦していく」(三木谷浩史社長)方針だ。

 このため、「楽天24」のサイト内で扱う商品は、同じアイテムであれば最安値で提供できる店舗を優先することになり、新サイトに出品するためには競合店との価格競争が避けられずに、実際に出品できるのは体力面で勝る店舗に限られてきそうだ。

 また、定番品やヒット商品に重点を置くことで、例えば“水”ひとつをとっても、「どうしても、この銘柄の水が飲みたい」という少数派の要望には応えきれないことが十分に考えられ、そうなると消費者は“いつもの店舗”に戻ることになりそう。

 新サービスの受注目標は開始1カ月で1万5000~2万件。同社では、新サービスの開始で日用品などをまとめ買いするケースが増えると見ており、平均客単価の改善にもつながると期待している。

 今後、「楽天24」での受注が増えていけば、商品だけでなく“情報”もまとめて届けるなど、新たなビジネスが派生してくる可能性もある。

 ただ、店舗や商材の幅が特徴のひとつでもある「楽天市場」において、これまで決して得意ではなかった日常品、定番品に的を絞ったサービスが吉と出るかは不透明だ。

“アマゾン追撃”には配送面の改革が不可欠に

 

 今回、楽天では専用サイトの商品を佐川グローバルロジスティクスが保有する物流センター(千葉県船橋市)で一括管理することにより、専用サイトで取り扱う複数店舗の商品を同梱し、配送できる仕組みを作った。受注・決済、カスタマーサービスは楽天が担うものの、特商法上の販売事業者は従来通り各店舗側にある。

 そもそも、自社で商品を仕入れて販売するのが主体のアマゾンとは違い、楽天はあくまで仮想モールの運営者。これまで、多くの中小企業に出店してもらうことで、手数料収入を得て成長してきた。

 しかし、自社で商品をコントロールしないという身軽な事業モデルを選択したことで、物流・配送面ではアマゾンに遅れをとってきた。

 08年5月には、出店店舗をターゲットに物流代行業務を行う「楽天物流サービス」を開始したが、提携する物流事業者の選定に時間がかかったことなどもあり、同様のサービスでアマゾンに先行された。

 物流代行サービスについて、楽天では「契約する店舗数は徐々に増えている」としているが、当初、計画したほどのビジネスになっているかは疑問だ。というのも、成長が続くネット販売市場に向けては多くの物流事業者が“低価格”を売りに通販企業向けの物流代行サービスを提供してきており、「楽天市場」の出店店舗にとっても選択肢は増えている。

 そんな中、楽天が仲介する物流代行サービスは競合と比べてコスト面で割高にならざるを得ないのが現状で、パートナー契約を結ぶ物流企業の中にも「コスト面で非常に厳しい」とこぼす事業者もいる。

 今回、「まとめ配送」を開始したのを機に、新たに“有力な”出店店舗との結びつきを強めたい楽天。アマゾンの直販型ビジネスに対抗するため、決済や配送面でのモール型の“弱点”を、新たな物流の仕組みで補えるのか注目される。

 なお、楽天はこのほど、物流企業のキムラユニティーと提携して、CDやDVD、書籍の新刊といった「楽天ブックス」の商品を対象に、初めてとなる自前の物流センター(千葉県市川市)から即日配送する体制の整備に乗り出している。

 ゆくゆくは、「まとめ配送」の倉庫を自前の物流拠点に移すなどして、日用品と書籍を同梱するサービスなどにもつなげたい考えで、これまで“2番手”に甘んじてきた物流・配送サービスの改革に本腰を入れる。

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