ライブコマース成功の方程式ーー 視聴者の購入意欲高める秘策は

  • 2022年5月25日
  • 2022年6月24日
  • 特集1

スマートフォンやパソコンでユーザーとリアルタイムでコミュニケーションを取りながら、商品の魅力や特徴を伝える「ライブコマース」を活用する通販企業が増えている。中国ではメジャーな販促手法だが、これまで日本ではあまり浸透していなかった。ただ、コロナ禍を受けた在宅時間増加や、動画サイトなどでライブコンテンツを閲覧する習慣が一般化したことなどもあり、徐々に日本においても成果が出はじめているようだ。各社の取り組みを探った。

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事例1 P&Gジャパン

ライブの継続的な実施で「勝ちパターン」見つける

  P&Gジャパンでは、今春に行われた、楽天グループが運営する仮想モール「楽天市場」の大型セール「楽天スーパーセール」において、ライブコマースを実施した。

 同社オンラインビジネスマーケティングディレクターの野村可能子氏(写真)は「中国や韓国において、P&G現地法人のライブコマースが盛り上がっており、会社としてのライブコマースビジネスの規模感もかなり大きくなってきている。ぜひ日本でも成功事例を作りたいと考えた」と取り組みのきっかけを明かす。

「ライブ慣れ」で機運高まった

 実は同社では、数年前にも日本においてライブコマースに取り組んでいる。その際はインスタグラムやユーチューブを活用したが、あまりうまくいかなかったという。「出演するインフルエンサーに惹かれて閲覧している人が多く、商品を購入するというマインドにはなっていなかった。

 また、商品を購入するためにはワンクッション必要なので、導線にも課題があり、継続した取り組みにはつながらなかった。ただ、最近はユーチューブのコメント欄などを見ると、皆がライブコンテンツにある程度慣れ親しんでおり、土壌が整ってきたのではないかと感じた。ライブコマースをやるには機が熟しているのではないかと思った」(野村ディレクター)。

 今春の取り組みは、楽天市場内で楽天グループが運営する日用品通販サイト「楽天24」で販売する同社商品をライブコマースで紹介するというものだ。野村ディレクターは「ライブコマースは流通様のサポートもあってこそ。楽天市場はビジネス規模が大きく、これまでも多くの取り組みをご一緒していたため、パートナーとして選んだ」と同モールで実施した理由を説明する。

購入への後押しに

 ライブコマースは新たな取り組みということもあり、最初の取り組みがうまくいくかどうかで、ライブコマースに対する社内や流通の機運が変わってくる。はずみをつけるために、多くの消費者がモールに訪れるスーパーセールでの実施を選んだ。また、楽天市場は「5の倍数の日」に楽天カード保有者のポイント付与率が向上することから、購入者が増える。そこで、番組は5の倍数の日に60分間放送することにした。

 放送時間中に紹介したのは10商品前後。MCはお笑い芸人のやのぱんさんとタレントの藤本美貴さんが務めた。紙おむつや洗剤などの商品を紹介。中でも反響が大きかったのは洗剤「アリエールジェルボール4D」だという。ジェルボールは計量不要なボール状洗剤で、「4D」は4層構造で「炭酸機能」を搭載した新商品だ。

「普段液体洗剤を使っている人の場合、良く知らない商品を買うにはハードルがあるし、店頭で箱を見ただけではどんなものなのか良く分からない。ライブコマースは中身をしっかり見せることができるし、『洗剤の量を調節しなくて済むので簡単だし、時短にもつながる』といった製品のメリットを説明できる。購入への後押しができるというライブコマースの良い点が発揮できたのではないか。MCのリアルな反応にチャットで反響があり、さらにそこからやり取りも生まれるので、出演者・視聴者双方の理解が深められる点も非常に良かった」(野村ディレクター)。

 また、定番商品である「パンパース」についても、ライブにおいて360度から商品を見せ、特徴を分かりやすく説明することで、普段使っている商品よりも1ランク上の商品を買うという購買行動もみられた。

クーポンを配布した
反響の大きかった「アリエール ジェルボール4D」

 視聴者からは「ここにギャザーがついていたんだ」「本当に薄いんだね」といった共感のコメントが多く、ライブでの商品紹介がうまくいっていることを実感できたという。

 視聴者数や購入者数に関して、野村ディレクターは「想定していた以上のお客様が視聴し、購入してくれた」と満足感を示す。数年前に実施したライブコマースでも、MCに有名なインフルエンサーやタレントを起用することで視聴者数を増やすことはできたものの、購入にはあまりつながっていなかったという。「『有名人を見たい』とか『面白い動画ないかな』という人ではなく、『買い物をしたい』と思っている人をライブに連れてくることができたのではないか。そういった意味で、楽天市場でライブコマースを実施したのは正解だった」。

 セールということもあり、視聴者限定での割引やポイント付与率向上は実施したものの、大幅な値引きやポイントアップは行わなかった。これは「日用品ということもあり、安ければ安いほど売れるという感覚に陥りがちだが、商品特性をきちんと伝えられることができれば売れるという自信があった」(同)からだという。

ライブには無限の可能性

 野村ディレクターは、今回の取り組みについて「トライアルとしては大成功だし、ライブコマースには無限の可能性を感じる。これからも取り組みを継続できるのではないか。継続投資をして、勝ちパターンを見つけたい」と総括する。セールなどにあわせて、ライブコマースを定期的に実施していくことで、ライブコマースでの購入を「習慣化」していきたい考えだ。

 さらに野村ディレクターは、今後の改善点として「主婦層にとってはやや遅い時間だったので、オンエア時間はもっと早い方が良いようだ。また、番組の進行は非常に良かったと思っているが、紹介した商品は定番の主力商品が多かったので、『ライブでの製品説明で消費者の後押しをする』ことで購入率が高まりそうな、新商品や高価格帯の日用品をどんどん出していきたい」と話す。

 今後は中国のように、日本でもライブコマースが販促の主流になっていく可能性はあるのだろうか。

 野村ディレクターは「中国の場合は『ソーシャルコマース』として、SNS上にショッピング機能が付いており、そこでライブ配信がされているので、もっと生活に密着している。日本はまだそこまで機能が整っていないが、TikTokやユーチューブ、インスタグラムがEC連携を強化しているので、近い将来にはそうなるかもしれない」と予測する。

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