ウェブ接客ツールの実力は?

多額の販促費を使ってせっかく消費者を通販サイトに呼び込んでも、誰が訪問したのか把握できなかったり、買い上げにつながらないなどの課題を抱えるサイト運営者は多い。そうした悩みを解決するツールとしていま注目を集めているのが“ウェブ接客サービス”だ。訪問者の属性やサイト内の動きを分析することで、新規会員にだけ割引クーポンをポップアップ表示したり、購入を悩んでいる来訪者にはチャット機能を使って背中を押したりと、顧客特性に合わせたアクション(接客)が行えるとしてネット販売実施企業を中心に導入が進みつつある。大手通販サイトも興味を示す有力サービス3社の特徴や導入効果などを探った。

注目のツール その① プレイドの「カルテ」

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サイト訪問者の属性や行動をリアルタイムで解析

多様なユーザーセグメント、シーンに合わせてウェブ接客が行える

プラットフォーム化を推進

プレイドが提供するウェブ接客プラットフォーム「KARTE(カルテ)」は、数行のコードをウェブサイトに埋め込むだけで、来訪者の特徴や行動をリアルタイムで解析し、個々のユーザーに合わせてサイト上で割引クーポンなどの特典や新着商品の情報、会員ランクのお知らせなどをポップアップ表示する。

来訪者の会員情報や閲覧情報などを瞬時に統合して解析するため、例えば、「どのサイトから訪問したのか」「新規なのか既存顧客なのか」「購入したことがあるのかないのか」などのさまざまな条件をもとに、「サイトでどのページを見ているのか」「何ページ見たのか」「どのぐらい滞在しているのか」といったサイト上でのいまの動きや状況をトリガーとして各種の接客を自動で実行するため、サイト運営者の手間はかからないという。

ウェブサイトの中央に接客内容を表示する「カードタイプ」と、サイトの上下に表示する「通知タイプ」の2種類があり、来訪者に合わせたメッセージを表示できる。

また、プレイドでは「カルテ」をウェブ接客のプラットフォームとして展開するため、外部サービスとの結びつきを強化。メールマーケティングツール「メールチンプ」やチャットツール「ライブチャット」、アンケート&フォーム作成ツール「フォームスタック」などと連携し、「カルテ」の接客として外部サービスも順次、利用できるようにする考えだ。

新客獲得率が2倍の事例も

同社では、2014年9月からベータ版として提供してきたが、15年3月12日に「カルテ」の正式版をリリースした。一般公開前から大手通販サイトを中心に旅行、人材紹介、不動産など幅広い分野に導入が進んでおり、3月11日時点で「アーバンリサーチオンラインストア」や「ミックスドットトウキョウ」「フィフス」「ポンパレモール」「漫画全巻ドットコム」など50サイト以上が導入。通販企業、通販サイトの割合が8~9割と高い。

これまでに解析したユニークユーザー(UU)数は累計4500万人、訪問者数(セッション数)では1億2000万件を突破しており、新規会員獲得率で108%増、購入率でサイト平均30%増などの実績が出ているという。

新規会員の獲得率が2倍強になったのはファッションEC「フィフス」のケースで、“場所”から“人とタイミング”にターゲティングの仕方を変えたことで成功した事例だ。具体的には、従来はスマホサイト内に「新規会員登録ですぐに使える10%オフクーポン」のバナーを埋め込み式で一律に表示していた。しかし、スマホサイトはバナーの設置場所が限られ、サイト上部は売り上げにつながりやすいコンテンツを配置するが一般的なため、新規登録を促す施策は下の方になってしまい、新規ユーザーにはなかなかクリックされなかったようだ。

そこで、「カルテ」を使って新規会員がサイトに訪問したときだけ、同様のバナーをポップアップで表示したところ、大きな成果が得られたという。ポップアップ画面は一定時間が経過すると消える設定のため、ユーザビリティーを損なわないのも特徴だ。

接客内容をテンプレート化

管理画面では目的別にさまざまな機能、テンプレートが用意されている

「カルテ」が導入企業から支持される理由のひとつが、高いITリテラシーがなくても、接客を実行する際の条件や内容、タイミングを自ら入力せずにテンプレートから選べる点だ。

通販サイトが接客のアクションを実行する場合、「新規をとりたい」や「優良顧客を大事にしたい」「リピーターを増やしたい」「来訪経路ごとにもてなしたい」などの目的を選択すると、編集画面には各施策に合わせた汎用的なバナーの案が表示される。

このテンプレートをショップのイメージなどに合わせて文章を変更したり、ボタンやタイトルのカラーを変えたり、バナーの画像を自社アイテムの写真に差し替えることで、簡単に施策が打てる。また、例えばバナーの文字を英語とカタカナで2つ作り、A / Bテストを行うこともできるため、導入企業は接客の効果を比較検証することで、サイトのパフォーマンスを高められるという。

実行した施策は良かったもの、悪かったものも含めて貯まっていくため、従来のツールのように属人的ではなく、会社全体の知識、情報として蓄積できるという。

今後については、「カルテ」を導入する企業が成功体験を共有できる“学びの場”を開設したい意向で、「事例をコンテンツ化してブログなどで発信したり、リアルの場でも講習会などが開ければいい」(倉橋健太CEO)としている。

なお、「カルテ」導入の基本料金は月額5000円で、接客した回数に応じて料金が発生する従量課金制(1接客当たり1円)が基本プラン。月間のUU数が10万人を超えるサイトは月額固定と従量課金から選択できる。

プレイドの倉橋健太CEOに聞く ”ウェブ接客”の重要性とは?

来訪者数を伸ばすためのマーケティングツールは数多くありますが、購入率や成約率、継続率を高めるツールはほとんどなく、あったとしても高価だったり、使いこなすのが難しいものがほとんどです。大半のサイトでは、いまこの瞬間にどんな人が訪れているのかが分からず、画一的な体験の提供にとどまっているため、ECサイトでは何も買わずに帰る確率が97%、初回来訪者のうちリピーターになる確率は1%以下と言われ、多くの来訪者が満足することなくサイトを去っています。

当社の「カルテ」ではリアルタイムで来訪者を知り、来訪者に合わせた接客を実行できます。導入企業は来訪者の属性やサイト内での動きが管理画面を通じて可視化されることを新鮮に思ってもらえています。従来は数字として見ていた来訪者を人として認識でき、身近に感じられるようになります。

ある導入先では、初回ログイン時のみ「会員登録していただきありがとうございます」というメッセージを表示しました。ひと声かけただけで、特典などは設けなかったのですが、購入率が20~30%上がりました。この施策を他のサイトで実施しても同じような結果が得られました。来店客への声がけはリアルの売り場では当たり前のことです。必要なときに必要なメッセージを届けることで顧客との距離が縮まり、無機質なウェブサービスにも人の温かみを感じてもらえたのではないでしょうか。

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