楽天、仮想モールとフリマアプリの連携強化――クロスユース率を6%から30%へ引き上げ

 楽天グループでは、仮想モール「楽天市場」とフリマアプリ「楽天ラクマ」の連携を強化する。楽天市場で購入した商品を、ラクマで簡単に出品できるようにしているほか、直近では楽天市場の大型セールイベントにおいて、期間中にラクマで買い物をすることで、ポイント付与率がアップするキャンペーンも開始。両サービスを併用する「クロスユース率」を、現在の6%から30%まで引き上げたい考えだ。

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顧客層を相互補完

 2023年9月1日に、同社本社で行われた戦略説明会では、執行役員でコマース&マーケティングカンパニーマーケットプレイス事業市場編成部ジェネラルマネージャーの髙間真里氏(左写真)が、同社の掲げる「サーキュレーション・ストラテジー」に関して説明。「商品を買って売り、また買ってもらう。こうした循環を『サーキュレーション』と呼んでいる。近年の物価高騰を受け、消費者は価格やポイントに敏感になっているほか、コロナ禍でECが成長する中で特に成長したのはC2Cだ。『より賢くお得に買い物をする消費者が増えている』ことにきちんと応えていきたい」と述べた。

 具体的には「商品購入時に新品(楽天市場)も中古(ラクマ)も一度に比較検討できる」「獲得できる楽天ポイントを増やす」「不用品を簡単に出品し、売上金としてオンライン電子マネー『楽天キャッシュ』を獲得できる」といった点を、ベネフィットとして消費者に提供する。

 昨年10月からは、楽天市場でファションやホビー商品など一部ジャンルの商品で検索した際、ラクマで出品される関連商品の情報も検索結果画面に表示されるようにした。また、楽天市場で購入後、不要になった商品を購入履歴の「持ち物リスト」から簡単に出品できる機能を、ラクマアプリは1月、楽天市場アプリは8月下旬より実装。また、楽天市場のキャンペーンにラクマが参画。8月の「お買い物マラソン」と9月4~11日に開催された「楽天スーパーセール」では、ラクマを利用することで、楽天市場とラクマで購入した商品のポイント付与率が上がる「買い回り」キャンペーンも実施した。スーパーセールの開催にあわせ、4日からはスーパーセールとラクマの合同テレビCMの放映も行った。

 ラクマ事業部の長谷川健一朗ジェネラルマネージャー(右写真)は、楽天市場内検索にラクマの商品を表示するようにした施策の成果について「ユーザーの反応は非常に良い。ある程度欲しいものが決まっているユーザーが多いので、ラクマにおける購入転換率が高い」と話す。

 同社によれば、楽天市場の顧客層は特に30~40代が多いのに対し、ラクマは10~30代が約63%を占める。クロスユースを促進することで顧客層の相互補完を狙う。髙間真里執行役員は「昨年アンケートを実施した際、楽天市場を利用しているユーザーのうち、約40%が他社も含めてC2Cアプリを利用していることが分かった。クロスユース率30%には意外と早く到達するのではないか」と述べ、競合となる「メルカリ」からシェア奪う意欲を示した。

 また、中古品を中心としたラクマとの連携を強化することに対する、楽天市場出店店舗の反応に関しては「転売を防ぐために、楽天市場で購入してから一定期間は『持ち物リスト』に表示させないといった工夫もしており、今のところ出店店舗からネガティブな反応はない。ラクマと連携を強化することで、ユーザーはまた楽天市場に戻ってくるということを店舗に理解してもらえるよう、コミュニケーションも取っている」(髙間真里執行役員)という。

拡大するリユース市場

 小売り企業にとって「若年層の取り込み」は喫緊の課題。若年層は30~40代と比較して可処分所得が少ないだけに、リユース品を活用することが多い。また、近年の物価高騰を受けて、リユース品の需要は拡大する一方だ。

 ラクマでは22年4月、中古品事業者や並行輸入事業者が出店する「ラクマ公式ショップ」を開設、法人が出品できる仕組みを導入。成果を上げる企業が出始めている。「メルカリ」においても「メルカリ」内にネットショップを開設できるプラットフォーム「メルカリShops」が出店者数を好調に伸ばしている。扱っている商材によって向き不向きはあるが、EC企業は、若年層が主体のフリマアプリに目を向ける必要がある。

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