ジャパネットグループが航空会社のスターフライヤー(=SF)の運航する航空機内でネット販売を開始した。ジャパネットが3月1日から制作を手がけている機内で乗客に配布する機内誌や機内モニターで放映する機内番組で食品や酒類などを紹介して訴求。機内誌内の販売ページ記載のQRコードを乗客が自身のスマートフォンやタブレットで読み込むことで簡単に注文できる機内販売システムを開発、運用を始めたもの。機内販売商品は乗客のみ限定でジャパネットが展開する通販でも同一仕様のものは販売しない。機内で受注した商品はすぐに出荷・配送をして最短翌日には顧客が指定した場所に配送する。
機内誌で食品や酒など簡単購入
ジャパネットホールディングスとSFは2022年9月に資本業務提携を結び、現状、ジャパネットホールディングスはSF株式を議決権ベースで14.2%を保有する第2位株主となっている。同提携の一環としてSF機内で配布・放映する機内誌と機内番組をジャパネットのグループ会社が請け負い、3月1日からリニューアルした。乗客が機内での時間を楽しめるよう機内誌、機内番組ともエンタテイメント性を高めたコンテンツを展開しつつ、食品力や訴求力など同社グループが強みとする通販のノウハウを活かし、機内販売の売り上げを拡大させる工夫なども盛りこんだ。
機内誌は従来、毎月発行してきた機内誌「MotherComet」(体裁・B5判、20ページ)をジャパネットグループのジャパネットコミュニケーションデザインが制作を手がけた「SmagazineJcatalog」に刷新。体裁はB5サイズと従来の機内誌と同様だが、総ページ数は40ページと倍増。なお、発行は奇数月隔月おきとした。
両面表紙として右開きからは読み物を、左開きからは機内販売カタログとして機内限定販売の商品を紹介する体裁で、読み物ページでは毎号1組ずつ地域に根差した活動を行う著名人らに自身と地域とのエピソードやよく行く店、よく買う土産、おすすめの観光コースなどに関するインタビュー記事や就航地である北九州を中心としたグルメスポットや観光地の情報を、当該テーマに精通したスペシャリストがその詳細について説明する「今月の『よりみち』マップ」などを掲載している。
機内販売ページでは九州地方産など産地にこだわった食品や酒のほか、ジャパネットたかたでも展開する通信販売で売れ筋の生活雑貨など幅広い商品を紹介。誌面上に記載のQRコードを乗客が機内ネットワークに接続したうえで、自身のスマートフォンやタブレットで読み込み、届け先などの必要情報を入力することでネット注文できるようにした。受注後に出荷・発送して最短翌日に配達する。SFでは従来から機内販売誌上で機内販売を実施してきたが、購入を希望する乗客は購入用紙に必要事項を記載して客室乗務員に渡し、機内で当該商品を受け取る形だった。今後はネット販売での注文が可能(一部商品は機内での受け取りも継続)で、商品も自宅や指定先に配送する仕組みとし、乗客の利便性を高めた。機内販売のオペレーションとしても乗務員の負担軽減や受注後に別途、商品を配送して届けることが基本となることから、積み込める商品数の制限による在庫切れの心配がなくなり、機内販売の売り上げ拡大につながるメリットもあるようだ。なお、乗客でも機内販売商品を購入できるのは搭乗時またはQRコードで購入専用ページに接続後、24時間以内という。
「SmagazineJcatalog」創刊号である3月号での機内販売商品は日本産生ハムの原木で原木台やカット用のナイフを付けた「Jamon8ehara生ハム」(税込7万円)や純米吟醸「澄川酒造場東洋美人純米大吟醸愛山」(同6750円)のほか、ダウンケット「モリリンヨーロッパ産洗えるダウンケット」(同1万990円)など。このほか、配送に加えて、機内で引き渡しにも対応する花束型チョコレート「ベルローズ5本セット」(配送は税込2970円、機内引き渡しは同2200円)やシャワーヘッド「アラミックシルキーナノバブルシャワープレミアム」(配送は同1万8570円、機内引き渡しは同1万7800円)を紹介、販売している。
機内番組でも機内販売品を紹介
機内販売品は乗客席に設置のモニターで放映する番組でも紹介、訴求する。機内誌の刷新と同じく3月1日から、SFの航空機内の乗客用モニターで放映する機内番組のほとんどをジャパネットグループのジャパネットブロードキャスティングが運営するBS放送局「BSJpapanext(ビーエスジャパネクスト)」で放送する番組に切り替えた。SFでは全機で乗客の座席にすべて機内モニターを設置し、これまでも専用番組を放映してきたが羽田―北九州、羽田―福岡、羽田―大阪、羽田―山口宇部、名古屋―福岡の全5路線で内容を一新。「BSJpapanext」では自社制作番組および購入番組を合わせて1週間に約30番組を放送しているが、その中からクイズ番組「パネルクイズアタック25Next」や「国分太一のTHECRAFTMEN」「西川貴教のバーチャル知事」など著名なタレントが出演するバラエティ番組、米国で開催中の男子プロゴルフのツアートーナメント「PGAツアー」の模様などを伝える「PGAハイライト/サキヨミPGA」、全国の名品を紹介する「名品モノづくり探訪」や日本各地の酒を紹介する「おとなの嗜呑」など11番組を選び、過去放送分を機内番組として放映。各番組は「BSJpapanext」で放送したものと同内容で、尺は約50分。「名古屋―福岡と最も距離の短い路線でも番組を最後まで視聴できる尺」(同社)という。なお、「PGAハイライト/サキヨミPGA」は週ごと、「名品モノづくり探訪」および「おとなの嗜呑」は奇数月の隔月ごと、そのほかの番組は月ごとに更新する。
機内番組、機内誌は一部、内容を連携させており、例えばPGAツアーを解説する記事や「アタック25」を冠した機内誌限定クイズなどを掲載。機内販売ページとも連携しており、例えば3~4月に放映する「名品モノづくり探訪」では生ハム「Jamon8ehara生ハム」を、「おとなの嗜呑」では日本酒「澄川酒造場東洋美人純米大吟醸愛山」をそれぞれの番組内で紹介しているが、機内誌でも機内販売ページ内で当該商品のこだわりなどを紹介する読み物を見開き2ページで掲載しており、番組を視聴した乗客を機内誌の当該ページに誘導して記載のQRコードから購入を促す狙い。「機内誌と番組を連携させることで(乗客には機内誌と機内番組を)行ったり来たりしながら、機内での時間を(機内販売を含むコンテンツで)より楽しんで頂きたい」(同社)とする。
「機内での時間を楽しく過ごして頂けるような環境を作りたい。(機内番組や機内誌を)どの程度、見て頂けるか。どの程度、(機内での)ショッピングを楽しんで頂けるかは未知の部分が多い。やりながら磨いていくというジャパネットの強みをいかして、よりよいものにしていきたい」(ジャパネットホールディングスの立石有太郎取締役)とし、機内番組や機内誌の一新や機内販売の強化により乗客の満足度を高めつつ、機内販売の売上高拡大を狙う考え。