山根大三郎●フライミープロパートナーズ 代表取締役社長

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帰属意識高めるオフィス作りに尽力

 家具・インテリア通販を行うフライミーの100%子会社として2022年3月に設立されたフライミープロパートナーズ。同社では、オフィス、公共空間などコントラクト事業における家具販売、空間設計およびデザインを行っている。コロナ禍を経て人々の働き方が多様化した昨今は、社員が出社する意義を感じられるようなオフィス作りのニーズが高まっている。親会社が運営する家具インテリア通販サイトの「FLYMEe(フライミー)」とも連携した同社のオフィス家具販売戦略に迫った。

toC、toBの両面で、家具ブランドの販路拡大に寄与

コロナでBtoBオフィス家具市場に追い風

─現在のオフィス向け家具市場について。

 ここ3年間はコロナが分岐点となり、競合も含めて増収増益となっているところが多いです。今はオフィスの利用状況がリモートワークに伴って二極化しているため、(ウィズコロナとなってからは)社員を職場に呼び戻すために面積を拡張するところや、一方でコスト削減のために縮小しているところが見られています。

 オフィス家具メーカーにとって最大の販売機会となるのは「移転」や「改装」です。多くの企業がコロナ禍でここへの投資が進んでいたので、我々としては追い風の状況となり、思った以上に業績が伸びています。

 また、昨今は扱われる商品も大きく変わっています。例えば、10年前は100人のオフィスに対して100のデスクが当たり前でしたが、今は社員数に対して7掛けや8掛けの数のデスクを確保して、余ったスペースは社員のコラボレーションやコミュニケーション、リフレッシュエリアなどに投資していくケースが見られるようになっています。コロナでその動きはより加速しており、中には社員数に対して半分のデスクしかないケースもあります。

─売れ筋の商品も変わってきているということですか。

 商品というものは世にごまんとありますが、その中で当社のバイヤーがしっかりと独自の目線でよい 当然、社員がリラックスしたり集中できるような環境を考えると、従来のようなアイテムではなく、当社が強みとしているルーズファニチャーといったデザイン家具の需要が高くなります。これに伴い、家具メーカー側でも、機能性やデザイン性への発展が見られるようになったのではないでしょうか。

─リモートワークによってオフィスで働く機会が減った時に、マイナスの影響は出なかったのでしょうか。

 影響は大きいとは思っていません。働き方は変わりましたが、オフィス家具が使用される頻度とはあまりリンクしていませんでした。やはり、リモートワークの限られた時間内でコミュニケーションを図ることになると、会社側としても働く設備としてICTを絡めたアイテムが必要になってきます。例えば電話ボックスのような形状の1人用個室で、利用者が中にあるモニターを通じて集中して会話ができるようなアイテムもあります。このように今まではなかった新しいものが生まれているのです。

─オフィス家具業界全体で認識している共通課題とは。

 やはり、リモートワークが進んだことで、「なぜこの会社で働いているのか」といったことを考える機会が生まれ、働く人の中には会社に対する帰属意識が低下したケースもあると言われています。それに対して、オフィスの機能を明確化することで帰属意識の問題をどうやって担保していくのかということは考えられていると思います。もちろん、素晴らしいオフィスを作ったからと言って、すぐに会社への帰属意識が高まるという訳ではありませんし、簡単な話ではないでしょう。

業界の体質に変化を求める想いも

─改めて、会社設立の経緯について教えて下さい。

 まず、自分自身の話ですが、長年BtoBの家具業界におりまして、この業界に対してもう少し改善・発展の余地があると常に考えていました。例えばオフィス家具の「商流」について、どこで誰が何を売っているのかが分かりにくい面があります。BtoCの家具ですら、どこで買えばよいか、どこに求める家具が存在しているのか分かりせん。BtoBの場合は商流に問屋や販売店などが絡む事が多いため、さらに閉鎖的な市場になります。

 こうしたことについて、もう少し改善できないかという想いがありました。そのためには適切な情報が供給されているプラットフォームがないとできないと考え、その中で家具ECの「FLYMEe」を運営するフライミーの坂本如矢社長との出会いをきっかけに、一緒にビジネスを行うこととなりました。

 フライミー側としても、プラットフォームの強みに加えて、コロナ禍もあってECへの受動的な流入が増えていました。しかし、BtoBでのオフィス家具販売は商品の選定であったり、説明できる人が必要になるなど、属人的な事業体となるため、EC事業とは別に展開することがふさわしく、フライミーとは別組織として会社を新設することとなりました。ちょうど1年前の2022年8月に(クライアント企業などが内部を見学できるようにショールーム機能を持たせた)ライブオフィスを開設しています。

─対象となる顧客や、おおまかな販売スキームとは。

 完全にtoB領域です、納品先(クライアント)としては、基本的に法人オフィスをはじめ公共施設や教育施設、商業施設などに納めています。あと、商流としては、施主(オーナー)に直接家具を納めることもあれば、ゼネコンに販売することもあり、設計事務所を介しての販売もあります。いずれにしても、完全なオフラインでの商品提供となります。

─会社設立からこの直近1年間の成果について。

 前年比で200%の増収となり、本来掲げていた目標をクリアすることができました。人員に関しても3倍になっています。

─目標達成の一番の要因について。

 適切な人材の採用ができた部分が一番大きいと思っています。もちろん、商品に関しても1000ブランド・3万SKUを展開している通販サイトのFLYMEeの認知度も圧倒的な強みとなっているでしょう。

 ただ、BtoBであるため、属人的に商品を販売することになります。そこで、クライアントとの信頼関係ができていて仕事を任されているような人たちを戦略的に採用できたことがやはり大きな要となりました。

─どのようなスキルを持つ人たちを採用したのでしょうか。

 完全にBtoB家具の営業畑の人達です。彼らは当然、商流もすべて認識しています。この業界で新しく商いをしようとすると、やはり、ニッチな面がありますので、知見が高くて、販売力・提案力を持った人間を採用できるかが鍵になるでしょう。

EC「FLYMEe」との相乗効果も

─親会社の通販サイトであるFLYMEeと取り組んでいる連携施策は。

 繰り返しになりますが、FLYMEeはプラットフォームとしての認知が非常に進んでいることから、受動的なリードの獲得がかなり順調にできています。例えば地方公共団体や商業施設、美術館、飲食店など、そういったところのオーナーや手がけているデザイナーから、FLYMEeに掲載されている商品をこれくらいの数量で欲しいという問い合わせは、毎日何十件も受けています。

 こうした案件について、我々の営業を介して、例えば1つの問い合わせに対して10個の商品を提案するなど、FLYMEeのプラットフォームを上手く活用しながら、我々の事業拡大につなげている面はあるのかと思います。

─すると、法人のクライアントからの最初の注文としてはFLYMEeに入ってくるケースが多いのでしょうか。

 当社でBtoB向けのECサイトなどを持っているわけではなく、基本的には法人からの注文は問い合わせフォームのあるFLYMEeに来ることが多いです。そうした案件をどちらの部署で担当するかはその都度社内で検討しています。それぞれの案件によって顧客の希望や目的が異なりますので、どちらの組織が動いて対応することが顧客にとって一番良いのかを考えています。

創出を目指す強い想い

─商品はすべてFLYMEeと同じものを扱っているのでしょうか。

 それ以上の数を取り扱っています。オフィス向け用途の独自の仕入れ商品もありますので、個人の顧客が多いFLYMEeには載せていないものもあります。

─フライミーとのビジネス展開を通じて得られる相乗効果などはありますか。

 我々は家具ブランドありきで成り立っているビジネスであり、それぞれ、toC、toBの領域を主として展開してます。例えば、これまでフライミー本体のECでtoC向けをメインに商品を供給されていた家具ブランドが、当社を通じて積極的にtoBの領域にもスペックすることで彼らの売り上げが法人向けでも構成されるようになってきています。

 同様に、toB向けの家具ブランドがオフィス家具をFLYMEeに掲載するようにしたことで、これまで参入できていなかったtoCの領域にも販売することができるようにもなっています。toC、toBのそれぞれの家具ブランドが健全に事業拡大することに貢献できていることは当社グループとしての相乗効果でもあり、良いポイントなのかと思います。こうしたことができるのも、フライミーグループならではのことでしょう。

引き続き、人材の確保が鍵に

─今後の取り組みで優先順位の高いものや、目標とは。

 売り上げを伸ばしていくという大前提はありますが、それを行う上でまず人員の補充は大事です。また、新たなBtoB商品にももう少し手を付けていく必要はあります。この2つに注力することで中長期的に事業拡大を図っていきます。

あとはデザイン領域の拡大もあるでしょう。これはかなり専門的なところです。帰属意識の高いオフィス作りを行うためには、コンセプトであったり、ゾーニングの考え方など専門性を高めていく必要があると思っていますので、この部分の知見が高く、マッチする商品を拡大できることが当社としての事業成長に直結すると思います。

─今後、FLYMEeとの連携強化で考えられることについては。

 サイト内容にもう少しBtoB向けのファンクションを付け足していくことはあるかもしれません。今でも十分使いやすいというお声は頂いているのですが、もともと個人の顧客を対象としたECですので、toBを意識した設計ではまだまだ弱い面もあります。例えば納期でソートができたり、在庫数が見られるようになるなど。当然、法人向け案件は納期や予算があるプロジェクトの中でオフィスの新設・移転が動いているため、こうした情報が大事になります。

 そのほか、当社と同時期に発足したIT部門のグループ会社のフライミーイノベーションズもありますので、そちらとも連携してサイト構成を考えていくこともあるでしょう。

お客様に商品をお届けするチャネルはテレビだけではない

─これからのオフィス家具業界に対して望むことは。

 会社立ち上げの経緯で補足すると、新しい雇用の創出という観点もあります。この業界は非常に古く、かつ、トップダウンのヒエラルキーの中で典型的な年功序列をとっていたり、また残業時間が非常に長いケースもあるでしょう。華やかな業界であるにも関わらず、働く側からすると就業環境や成長機会が整っていない面が見られます。そのため、若い有能な人材が離れてしまうことも少なくありません。しかし、本来はもっと若い人たちが活躍できる明るい業界だと思います。こういった部分で当社が先頭を切って業界を再編していき、若い人たちの採用を加速していくことで、新しい雇用の創出にも関わることができればと思っています。


山根大三郎(やまね・だいさぶろう)氏

1983年生まれ、山口県出身。大学卒業後、主にBtoB領域での家具販売営業職に従事。くろがね工作所、日本スチールケースでの勤務を経て、国内外のオフィス向け家具販売を経験。2015年にボーコンセプト・ジャパンにおいて主にBtoB営業部門の新規事業立ち上げを担当。その後、2022年5月にフライミープロパートナーズの代表取締役社長に就任。



◇ 取材後メモ

1年前に開設された青山の本社オフィスは、クライアント向けのショールームを兼ねているということもあり、それぞれに個性を持った様々な種類の椅子やデスクが並んでいます。奥は神宮外苑のイチョウ並木を景色に切り取った開放的な大窓となっており、夏には花火大会も間近で見られるなど非常に贅沢な眺望となるようです。こうした空間設計の一つ一つは、働く社員のモチベーションアップにも大きく関わるもので、まさにインタビューの中でもあった“帰属意識を持てる職場”を体現した世界と言えるのではないでしょう。今はコロナ規制が緩和され、出社機会も以前の水準近くにまで戻っています。今後のさらなる市場拡大が見込まれる中、FLYMEeのECとも連携した同社の新たな挑戦が注目されます。

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